株式譲渡とは、自ら保有する株式を第三者に譲渡することを言います。
非公開会社のオーナー経営者が保有する自社株を、後継者に対して譲渡するケースが、株式譲渡の典型例です。
株式譲渡は、売り手と買い手の間で「株式譲渡契約」を締結し、相対取引で株式の受け渡しを行います。
契約書の締結のみで主たる手続きが完了するため、事業承継(M&A)の手法としては、株式譲渡はもっともシンプルな部類と言えるでしょう。
なお、M&A手法としては、他にもたとえば以下のパターンが挙げられますが、いずれも株式譲渡とは全く異なるものです。
不特定多数の株主から、市場取引外で、株式を買い集める手法です。
取引の相手方が不特定多数となる点で、株式譲渡とは大きく異なります。
不特定多数の株主から、市場取引によって、株式を買い集める手法です。
市場買付けも公開買付けと同様に、取引の相手方は不特定多数となります。
他社の事業の全部または一部を、そのまま譲り受ける手法です。
株式取得によって他社の支配権を得るのではなく、他社の事業を自社に吸収する取引になります。
売り手(譲渡人)・買い手(譲受人)それぞれの視点で見た場合、株式譲渡の主なメリット・デメリットは、以下のとおりです。
売り手にとっては、シンプルな手続きによってイグジットを実現できるため、株式譲渡はメリットの多い手続きと言えます。
買い手にとっても、完成した会社組織・市場シェア・ノウハウをそのまま引き継げる点は大きな魅力です。
その一方で、対象会社を丸ごと引き継ぐことになるので、簿外債務等のリスクに注意しなければなりません。
簿外債務等のリスクを最小化するためには、株式譲渡の実行前に丁寧なデューデリジェンスを行い、対象会社に問題がないか調べておくことが大切です。
株式譲渡を実行するに当たっては、以下の手続きを踏む必要があります。
非公開会社の株式を第三者に譲渡するには、会社の承認を取得する必要があります。 したがって、株式譲渡による事業承継を行う場合、譲渡人は会社に対して、株式譲渡承認請求を行います(会社法第136条、137条)。
株式譲渡承認請求を受けて、会社は株式譲渡を承認する旨の決議を行います。
承認を行うべき機関は、定款の規定に従います。
もし定款に規定がない場合には、取締役会設置会社の場合は取締役会、取締役会非設置会社の場合は株主総会が、それぞれ株式譲渡承認決議を行います(会社法第139条第1項)。
譲渡対価・譲渡の実行前提条件・対象会社に関する表明保証などを盛り込んだ株式譲渡契約を締結します。
実行前提条件がそろっていれば、契約上の決済期日において、株式譲渡が実行されます。
株式譲渡の実行後、譲受人が株主としての権利を会社に主張するためには、株主名簿への記録(書き換え)が必要になります(会社法第130条第1項)。
株主名簿の書き換えは、原則として譲渡人・譲受人が共同で行うことが必要です(会社法第133条第2項)。
株式譲渡を実行した場合、譲渡人には以下の譲渡所得が発生します。
株式の譲渡所得に対しては、所得税(復興特別所得税を含む)が15.315%、住民税が5%、トータルで20.315%の税金が課されます。
所得税:153万1500円
住民税:50万円
トータル:203万1500円
株式等の譲渡所得は申告分離課税とされているため、確定申告時に譲渡所得の金額を申告することが必要です。
また、分離課税なので、他の所得と通算して累進課税が適用されることはありません。あくまでも譲渡所得に対して、20.315%の一律の税率で課税が行われます。
これに対して、譲受人には、株式譲渡の時点で課税が行われることは、原則としてありません。譲受人に対する課税は、譲受人が第三者に対して株式を譲渡した際、譲渡所得が発生した段階で行われます。
ただし、株式譲渡の対価が、客観的な株式価値に比べて低い場合には、譲受人に対して贈与税が課される場合があるので注意が必要です。
株式譲渡に関する課税についてわからないことがあれば、税理士にご相談ください。
事業承継について、詳しくはこちらのページもご覧ください。
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