休眠会社のメリット・デメリットとは?手続きの流れと気を付けるポイントを解説
「会社の事業がうまくいっていないから、事業再生のための時間が欲しい…」
「廃業も考えたが、やはり自分で創った会社を存続させたい!」
とお考えの方も多くいらっしゃるのではではないでしょうか。
2020年時点で、日本国内における休眠会社は、31,516社に及びます。
今回は、休眠会社の概要について説明したうえで、
- 休眠会社のメリット・デメリット
- 休眠会社にする手続き
- 休眠会社にする前に気を付けるポイントとは
について解説していきます。
休眠会社にするかどうか頭を悩ませている方にとって、少しでも本記事が参考になれば幸いです。
休眠会社にすることで、企業を立て直しましょう。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。
1、休眠会社とは
休眠会社とは、長期間にわたり、会社等の事業自体が停止している状態のことです。
法的には、株式会社が最後に登記してから12年の月日が経っていれば、休眠会社となります。
本章では、休眠会社の目的について解説したうえで、以下の項目について詳しく説明していきます。
- 休眠会社とみなし解散の違い
- 休眠と廃業の違い
(1)休眠する目的
会社等が休眠する目的は、それぞれ異なります。
一般的に、想定される休業目的は、以下のとおりです。
- 社長の高齢化や病気による会社等の衰退
- 事業再生のための時間確保
- 廃業するための資金確保
企業の緊急事態に対する対応から、長期的に捉えた対応まで、休業理由は多岐にわたります。
(2)休眠会社とみなし解散
会社法に規定される休眠会社は、上記で説明したとおり、最後に行った登記から12年が経過した株式会社のことをいいます。
休眠会社のなかにも、廃業の費用がかかるため事業を休止したまま放置していたり、登記費用がかかるため故意に登記を行っていなかったりする企業もあります。
上記のような会社等が多数存在していることから、法務局による「休眠会社・休眠一般法人の整理作業」による「みなし解散」(会社法472条1項)が実施されるようになり、平成26年度以降は毎年行われています。
最後の登記から12年が経過している株式会社に対しては、法務大臣による官報公告が行われ、本店所在地を管轄する登記所から当該株式会社に対して、法務大臣による公告が行われた旨の通知がされています。
公告の日から2ヵ月以内に「事業を廃止していない旨」の届け出や登記を行わなければ、会社等は解散されたものとみなされます。
(3)休眠と廃業の違い
会社の休眠とよく似た言葉として「廃業」があります。
両者の違いは、会社自体を存続させているかどうかになります。
休眠は、会社自体は存続しているが、事業活動は停止している状態のことです。
一方、廃業は、会社自体が存続しておらず、社会から消滅している状態のことをいいます。
つまり、株式会社として存続しているとはいえません。
2、休眠会社のメリット
前章までは、休眠会社の概要や、みなし解散や廃業との違いについて説明してきました。
本章では、休眠会社にする以下のようなメリットについて解説していきます。
- 手続きが簡単
- いつでも事業復帰ができる
- 法人住民税の均等割が免除される場合がある
- 許認可の再取得の必要がない
それぞれの項目について、詳しくみていきましょう。
(1)手続きが簡単
会社を休眠状態にする手続きは、廃業に比べて簡単です。
廃業させる場合、解散登記や清算手続きが必要になり、手間や費用がかかります。
一方、休眠会社の手続きは、休業申請を提出するだけで、費用もかかりません。
(2)いつでも事業復帰ができる
会社が休眠状態でも、いつでも事業復帰ができるメリットがあります。
事業を再開したい場合は、管轄機関に申請手続きを行うだけで、事業を再スタートできます。
経営計画の練り直しや、事業再生のための時間が必要な会社にとって、一時的に休眠会社にすることは理想な選択といえるでしょう。
(3)法人住民税の均等割が免除される場合がある
会社を休眠させることのメリットとして、「法人住民税の均等割の免除」があります。
会社が休眠状態であれば、所得が発生しないため、法人税を納税する必要はありません。
また、法人住民税に関しても、自治体によっては、休眠会社の法人住民税の均等割が免除されることがあります。
休眠の手続きをせずに会社を放置していて、数万円の税金を支払い続けている場合は、休業申請を検討してみることをおすすめします。
(4)許認可の再取得の必要がない
休眠会社は、新たに許認可を再取得する必要がありません。
本来、許認可を取得するとなると特別な手続きが必要だったりと、何かと面倒です。
ただし、休眠会社にしておけば、経営者のタイミングで、いつでも事業を再開できます。
3、休眠会社のデメリット
前章では、休眠会社にするメリットについて説明してきました。
本章では、休眠会社にする次のようなデメリットについて解説していきます。
- 不動産などによる会社維持コスト
- 毎年の税務申告などの事務処理が面倒
- みなし解散のリスク
- 役員の変更登記が面倒
それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
(1)不動産などによる会社維持コスト
休眠会社でも、不動産を所有していたり借りていたりする場合は、会社維持のために費用を支払う必要があります。
オフィスなどで利用するために所有している不動産については、毎年固定資産税を納める必要があります。
オフィスなどで利用するために不動産を借りている場合、賃料を支払う必要があります。
会社が休眠状態では、オフィスとして利用する従業員がいないため、固定資産税や賃料が無駄なコストといえます。
不動産を所有していたり借りてたりする場合には、あらかじめ不動産売却や賃貸の解約も視野に入れておくといいでしょう。
(2)毎年の税務申告などの事務処理が面倒
休眠会社でも、毎年の税務申告などの事務作業は、継続して行わなければなりません。
会社が休業しているときは、事業活動が停止しているだけで、会社自体は存在していることになります。
ゆえに、毎年欠かさず、申告・納付をする必要があります。
法人税と消費税はかかりませんが、法人住民税は自治体によって支払いの可能性があるため、確認しておきましょう。
(3)みなし解散のリスク
休眠会社にすることは、みなし解散のリスクがあることを認識しておきましょう。
「1、(2)休眠会社とみなし解散」でも解説したとおり、最後の登記から12年が経過すると、みなし解散の旨の通知が届きます。
通知から2ヵ月以内に手続きを完了させないと、登記官が職権でみなし解散の登記を行うので注意が必要です。
さらに、みなし解散の状態から3年が経過すれば、清算するしかなくなります。
清算となると、事業を再開できなくなるため、注意しましょう。
(4)役員の登記変更が面倒
休眠会社にしても、定期的に役員の変更登記が必要になります。
例えば、役員の任期が満了した場合などがあります。
もし仮に、役員の変更登記を行わなかった場合、経営者に100万円以下の過料が発生することがあるため、気をつけましょう。
4、休業会社にする手続き
ここまで、休眠会社にするメリット・デメリットについて紹介してきました。
本章では、休業会社にする手続きについて紹介していきます。
「手続き」と聞くと、手間がかかる印象がありますが、休眠会社の場合はそれほど面倒では有りません。
休眠会社にするために必要な手続きに関する情報は、以下のとおりです。
- 申請場所
- 提出書類
- 費用
- 確定申告
それぞれの項目について、詳しくみていきましょう。
(1)申請場所
休眠会社にするためには、以下の機関に、それぞれ休業申請する必要があります。
- 税務署
- 年金事務所
- 都道府県税事務所
- 市区町村役場
- 労働基準監督署
- ハローワーク
上記の機関は、会社によって異なるため、会社の所在地における管轄機関に提出しましょう。
(2)提出書類
休眠会社にするために必要な書類は、以下のとおりです。
- 異動届出書
- 労働保険確定保険料申告書
- 雇用保険適用事業所廃止届
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
- 健康保険・厚生年金保険適用事務所全喪届
上記の書類を提出すれば、休眠会社への申請が完了となります。
(3)費用
休眠会社にするためには、休業に必要な書類を各行政機関に提出するだけで、手数料などの費用がかかることはありません。
休眠にするしかない会社にとって、費用がかからないことは少なからず助けになります。
(4)確定申告
会社が休業中でも、法人として成り立っているため、確定申告は行わなければなりません。
法人税や消費税に関しては、所得がないため納税する必要がありませんが、地方法人税の均等割に関しては納税の必要があります。
ただし、自治体によっては免除される場合があるため、前もって確認しておきましょう。
2年連続で期限内に申告しなかった場合は、青色申告承認申請が取り消されるため、注意が必要です。
5、休眠会社にする前に気を付けるポイントとは
前章では、休眠会社に関する手続きについて、解説してきました。
本章では、休眠会社にする前に気を付けておきたい以下のポイントについて説明していきます。
- 休業中でも業務は発生する
- 諸手続きに関する依頼費用が発生する
- 変更登記未了による休業は罰金がかかる
それぞれの項目について詳しくみていきましょう。
(1)休業中でも業務は発生する
休眠会社は、事業は停止していても会社自体は存続しているため、休業中でも業務は発生します。
具体的な業務内容には、確定申告と役員の変更登記があります。
上記の作業を行わなかった場合、追加で過料を支払わなければならないため、注意しておきましょう。
(2)諸手続きに関する依頼費用が発生する
休業会社にするための手続き自体に費用は発生しませんが、専門家への依頼費用は発生します。
行政書士や司法書士、税理士などの専門家に依頼する場合は、費用が発生します。
金額に関しては、各事務所のサービス内容などによって異なりますが、無料で相談に応じてくれる事務所もあるので、一度、話を聞いてみるとよいでしょう。
(3)変更登記未了による休業は過料がかかる
休眠会社でも役員の変更登記を放置していた場合、経営者に100万円以下の過料が発生することがあるため、気をつけましょう。
費用を抑えるために休眠会社にしたにも関わらず、変更登記未了による過料は無駄な費用ですので、しっかりと管理することが大切です。
まとめ
今回は休眠会社のメリット・デメリットや気を付けるポイントについて解説してきました。
休眠会社にする前に、みなし解散のリスクがあることを確認する必要があります。
この記事を参考に、企業を立て直す時間を作りましょう。
なお、休眠会社に限らず、会社経営について不安や疑問がある場合には、税理士への相談がおすすめです。
休眠会社を含む会社経営に関することについて、税理士へ相談・依頼することで、
- 休眠会社の手続きに関するアドバイス
- 確定申告の代理等
- 事務作業軽減のための対応等
などのサポートが可能です。
他にも、経理・会計や税金の面でのサポートも可能となります。
不安があったら、気軽に税理士へ相談しましょう。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
初回のご相談は無料ですので
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