円安が資産運用に与える影響は?円安時の投資のポイントも解説
円安は資産運用にどのような影響があるのだろう?
円安でも資産運用をしてもいいの?
2022年3月以降、円安ドル高の傾向が続いています。2022年10月には1ドル150円台まで円安が進行し、1990年8月以来およそ32年ぶりの円安水準となりました。
円安になった場合、資産運用にはどのような影響があるのかと気になっている方も少なくないでしょう。
今回は、円安と資産運用への影響について、べリーベスト税理士事務所が分かりやすく解説していきます。
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1、円安と資産運用の関係を知る前に~そもそも円安とは
円安と資産運用の関係を知る前に、まずは円安の要因と円安のメリット・デメリットについてみていきましょう。
(1)円安の要因
円安とは、円の価値が相対的に下がることです。
外国通貨の換金レートに影響を与える要因は非常にたくさんありますが、最近の円安の大きな原因としては、米国と日本の金融政策の違いからくる金利差と、原油価格の急騰などを背景とした外貨需要の増加(貿易赤字)の2つがあげられます。
①日本と米国の金利差
円安とは、円のドルに対する相対的価値が低い状態のことをいいます。これを米国と日本の金利差から考えてみます。
円安は次のような流れで進んでいきます。
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米国では5月以降、複数回の利上げ(政策金利の引き上げ)を行っています。
一方、日本は2022年10月現在、金融緩和政策の継続を打ち出し続けており、米国との金利差が大きくなってきたことにより、急激な米ドル高・円安を招いたと考えられます。
以上のように、日本の金利が横ばいで米国の金利が上昇すると、金利差は拡大していきます。この現象が2021年以降に発生しています。
②貿易赤字の拡大
もう1つの円安の背景には、貿易赤字の拡大があります。
貿易赤字の拡大による円安は、次のような流れで進んでいきます。
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以上のように、日本が海外に売っている金額よりも、海外から日本が買っている金額の方が大きければ、円を売ってドルを準備しなければならず、結果円安が進行することになるのです。
(2)円安のメリット・デメリット
円安のメリット・デメリットについてそれぞれみていきましょう。
①メリット
円安のメリットは、日本の製品を海外へ輸出しやすくなるため、輸出企業の利益が増える傾向が見られることです。
海外からみると日本のモノ・サービスが安く買えるようになるため、外国人観光客のインバウンド消費が活発化し、観光関連企業などにおいて業績が向上することもメリットの1つでしょう。
②デメリット
円安のデメリットは、輸入製品のコストが高くなるため、輸入企業は販売価格を上げざるを得なくなることです。生活必需品やエネルギー資源などさまざまなモノの価格が上がり、現在のような物価上昇を招くことになるでしょう。
日本は多くの食料やエネルギーを輸入に頼っていることは、円安による値上げのリスクです。結果として、賃金は変わらないのに出費が増えることになり家計が圧迫され、企業にとっては輸入企業の利益が減少する傾向が見られます。
2、円安が資産運用に与える影響
円安になると、資産運用にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
本章では、代表的な金融商品を例に、円安になった際の影響について解説します。
(1) 外貨預金
外貨預金にとっての円安のメリットには、金利収入(インカムゲイン)と為替差益(キャピタルゲイン)の2種類があります。
①金利収入(インカムゲイン)
インカムゲインとは、資産を保有していることによって得られる収益(利息や配当等)のことです。
昨今、米国を中心に各国の金利は上昇しています。日本の銀行に預金しても、金利が低く利子が少額であるため預金残高は増えませんが、外貨預金であれば国ごとの利率で利子が付くため、預金残高が増える可能性があります。
②為替差益(キャピタルゲイン)
キャピタルゲインとは、株式や債券など、保有している資産を売却することによって得られる売買差益のことです。売却することによって損失が出た場合はキャピタルロスといいます。
円安になるほど、円に換金した時の為替差益が大きくなりますが、外貨預金のキャピタルゲインには税金がかかります。
また、外貨預金のデメリットとして、為替が円高になると為替差損が出ることが挙げられます。今は大幅な円安が続いていますが、マーケット次第では円高に転じることもあるでしょう。
(2) 外国債券
外国債券とは、米国国債や企業が発行している外貨建ての債券です。債権を発行した団体に問題が発生しない限り、満期まで保有することにより、投資した金額が保証されます。金利は、満期までの期間が長ければ長いほど高いのが一般的です。
外国債券における円安のメリットは、外貨預金と同じく、円に換金した際に為替差益を享受できることです。ただし、円高になれば損失が発生するリスクがあります。
(3) 日本株式
国内株式における円安のメリットは、輸出を行う企業で業績が上昇することにより、株価が上昇する可能性があることです。一方、輸入を行う企業では円安で業績が悪化するリスクがあり、それに伴い株価が下落する可能性があります。
(4)米国株式
米国株式における円安のメリットは、米ドルなどの外貨を購入することにより評価額が上昇する可能性があることです。
また、米国で輸入を行う企業にとっての円安は、業績が上がり株価が上昇する可能性があります。
一方で、米国で輸出を行う企業にとっての円安は、業績が悪化するリスクがあり、マイナス要因となります。
(5)投資信託
投資信託は、ファンドが投資する資産の構成や組入銘柄によって異なります。
海外の株式や債券などに投資している投資信託や、国内株式でも輸出を行う企業やインバウンド関連企業が多く組み込まれているものであれば、株価が上昇する可能性が高いといえるでしょう。
また、「為替ヘッジなし」の投資信託であれば、円安になると為替差益を享受できます。
3、円安時に資産運用する際の注意点
急激な円安で慌ててしまい、リスクの高い行動をとらないよう、下記の2点に注意しましょう。
(1)すべての資産をドルに変える
現在円安のため、外貨預金や米国株に投資されている方は、為替差益が出ていると思います。そのような方の中には、これから先もドル高円安が続くと予想して、全ての資産をドルに変えてしまおうか、とお考えの方がいるかもしれません。
しかし、もし予想が外れて円高に転じた場合は、資産が目減りすることがありますので、やめておいた方がいいでしょう。
(2)米国株の長期積立投資をやめる
ここ数年の米国株式の好調を背景に、投資信託に投資する方が増えています。さらに、2022年に入って米国株式市場は20%を超える下落、さらに円安ということもあって、株式がもっと下落して円高になったタイミングで投資しようか、と考えている方もいると思います。
しかし、株安と円高の絶好のタイミングを素人が見極めるのはほとんど不可能です。為替変動は気になるところですが、積立投資は長期間、継続して投資することが重要です。長い目で見れば、右肩上がりになる可能性も高くなるでしょう。
4、分散投資のすすめ
「分散投資」とは、投資対象や投資のタイミングなどを1つに偏らせることなく、いくつかに分ける投資手法を指します。「長期投資」「積立投資」「分散投資」というのが、投資の基本的な考え方です。
分散投資の大きなメリットは「リスクを抑えやすい」という点にあります。投資の世界には「卵を1つのカゴに入れるな」という格言があります。
仮に、ある投資先の価値が下落しても、きちんと分散投資ができていれば資産は手元に残り、他の投資先で失敗を挽回できる可能性があります。分散投資でリスクを抑え、失敗したとしても余裕を持った状態をキープしておくことが大切なのです。
本章では、具体的に「何を分散するのか」を見ていきましょう。
(1) 投資対象の分散投資
資産の分散や銘柄の分散で、リスクを分散する方法です。
同じような特性を持つ資産のグループとしては、「預金」「国内株式」「国内債券」「外国株式」「外国債券」「不動産」「商品(金など)」があります。「外国株式」「外国債券」については、投資対象国が先進国か新興国かで大きく特性が異なります。
(2) 国内外への地域分散投資
さまざまな国や地域の株式、債券、通貨へ分散投資することで、リスクを分散する方法です。
日本の景気が良くないときでも、世界には景気の良い国もあります。為替相場の動きも通貨によってさまざまで、為替相場の動向次第で、為替差益が出たり、為替差損が出たりします。
(3) 時間の分散投資
投資するタイミング(時間)を分散することで、高値で投資するリスクを低減する方法です。投資する資本を、安値で買って高値で売れば収益を上げることができます。
ただし、株式相場や為替相場などの動きを確実に読むことはほぼ不可能なので、高値で買ってしまうことも考えられます。もし一度にまとめて高値で買ってしまえば、投資で収益を上げることが難しくなります。
そこで、「長期間」において「定期的」に「継続」して投資を行うことで、高値で投資するリスクを抑えることができるようになります。
まとめ
今回は、円安が与える資産運用への影響について解説してきました。
円安や円高などの為替変動は、投資商品に大きな影響を与えます。対策としては、運用資産を日本国内だけに偏ることなく、国内外の地域にバランスよく分散投資をしましょう。
これから資産運用を考えている方は、投資配分の見直しをしてみてはいかがでしょうか。
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