エンジェル税制について知りたいこと4つ【投資が大きな節税に!?】
エンジェル税制とは、いったいどのような制度なのだろう……。
「税金が大きな負担になっているから、節税したいな……。」
そう思っている方も、多くいらっしゃるのではないでしょうか。
エンジェル税制という言葉を聞いたことはありますか?
エンジェル税制とは、簡単にいうと「投資をしながら節税できる」制度です。
そもそもエンジェル税制って何?という方もいらっしゃるともいます。
今回は、
- エンジェル税制とは
- エンジェル税制の優遇措置を受けるまでの流れ
について解説します。
あわせて、
- エンジェル税制のメリットデメリット
- エンジェル税制が適用される企業の探し方
についても解説します。
本記事で、エンジェル税制について詳しく知っていただければ幸いです。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。
1、エンジェル税制とは
本章では、
- そもそもエンジェル税制とは何か
- エンジェル税制の仕組み
- エンジェル税制の適用要件
以上の3つを詳しく解説します。
(1)そもそも「エンジェル税制」とは
エンジェル税制とは、一定の条件を満たすベンチャー企業に対して、個人が投資を行うと、その個人投資家が税制上の優遇措置を受けられる制度です。
ベンチャー企業への投資を促進するために設けられた制度になります。
「租税特別措置法」および「中小企業等経営強化法」の2つが、エンジェル税制の根拠を記載している法律になります。
詳細は、以下のとおりです。
①租税特別措置法
租税特別措置法第41条の19では、「特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例」について、記載されています。
後ほど解説するエンジェル税制「優遇措置A」の根拠となる条文です。
同法第37条の13では、「特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等」の記載があります。
上記条文も、後ほど解説するエンジェル税制「優遇措置B」の根拠となる条文です。
同法第37条の13の2においては、さらに「特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等」について記載されています。
以上については、それぞれ後ほど詳しく解説しますが、すべてエンジェル税制に関わる条文となります。
②中小企業等経営強化法
中小企業等経営強化法第7条にて、特定中小企業が発行した株式に関して、譲渡損失等が発生した場合に繰越控除等の課税の特例が適用される記載があります。
(2)エンジェル税制の仕組み
エンジェル税制における優遇措置は、「優遇措置A」と「優遇措置B」の2種類があります。
それぞれの要件を解説します。
①優遇措置A
優遇措置Aが適用されるための投資対象となる企業の要件は、以下のとおりです。
- 設立5年未満の中小企業であること
- 各経過年数の規定を満たしている
各経過年数の規定については、下図のとおりです。
経過年数 | 要件 |
1年未満 (最初の事業年度未経過) |
研究者または新事業活動従事者が 2人以上かつ常勤社員の10%以上 |
1年未満 (最初の事業年度を経過) |
研究者、新事業活動従事者が2人以上かつ常勤社員の10%以上で、 直近の営業までのキャッシュフローが赤字 |
1年以上〜2年未満 | 研究者、新事業活動従事者が2人以上かつ常勤社員の10%以上で、 直近の営業でキャッシュフローが赤字もしくは、 試験研究費等が収入金額の5%を超えていて、 |
2年以上〜3年未満 | 試験研究費等が収入金額の5%を超えていて、 直近の営業までのキャッシュフローが赤字もしくは、 売上高成長率が25%を超えていて、 |
以上の要件を満たす企業にエンジェル投資を行った場合、優遇措置Aを受けられます。
優遇措置Aの内容は、次のとおりです。
エンジェル税制対象企業への投資額からマイナス2,000円を、その年の総所得金額から控除できる |
控除の対象となる投資上限額は、次のいずれかのうち、低い方になります。
- 総所得金額×40%
- 800万円
上限内で投資額のほとんどが控除の対象になるので、非常に優遇が大きい措置であると言えます。
②優遇措置B
優遇措置Bが適用されるための投資対象となる企業の要件は、以下のとおりです。
- 設立10年未満の中小企業であること
- 各経過年数の規定を満たしている
各経過年数の規定については、下図のとおりです。
経過年数 | 要件 |
1年以上 | 研究者または新事業活動従事者が2人以上かつ常勤社員の10%以上 |
1年以上〜2年未満 | 研究者または新事業活動従事者が2人以上かつ常勤社員の10%以上
もしくは、 試験研究費等が収入金額の3%を超えている |
2年以上〜5年未満 | 試験研究費等が収入金額の3%を超えている
もしくは、 売上高成長率が25%を超えていて、直近の営業でキャッシュフローが赤字 |
5年以上〜10年未満 | 試験研究費等が収入金額の5%を超えている |
以上の要件を満たす企業にエンジェル投資を行った場合、優遇措置Bを受けられます。
優遇措置Bの内容は、次のとおりです。
エンジェル税制対象企業への投資額全額を、その他の他の株式譲渡益から控除できる |
なお、優遇措置Bには、控除の対象となる投資額に上限はありません。
優遇措置Bは、投資額が大きければ大きいほど、税制上の優遇も大きくなります。
(3)エンジェル税制のその他の適用要件
エンジェル税制を受けられる企業には、(2)で説明した「優遇措置A」や「優遇措置B」の要件のほかにも、次のような3つの株主要件があります。
- 1、「特定の株主グループ」の保有株数の合計が6分の5を超えない
- 2、「大規模法人グループ」の所に属さないこと
- 3、未公開・未上場企業であり、風俗営業等を行わない
以上の3つの要件全てを満たすことが、エンジェル税制を受けられる企業の絶対条件です。
エンジェル投資をする前に、その企業がエンジェル税制の対象かどうか、中小企業庁のホームページから事前確認制度を利用することができます。
(4)エンジェル投資家の要件
エンジェル投資を行う場合、投資をする側にも、以下のような条件があります。
- 金銭の振り込みによって企業の株式を取得していること(譲渡株式や現物投資は対象外)
- 対象企業が同族会社(※)の場合、親族や関係者などの株式グループに属していないこと
(※)同族会社とは、その会社の3人以下の株主グループが、株式や議決権を50%を超えて保有している会社のこと
以上の条件全てを満たす投資家のみが、エンジェル投資を行うことができます。
2、エンジェル税制の優遇措置を受けるまでの流れ
エンジェル税制による優遇措置を受けるには、企業と投資家の双方の手続きとして、次のような手続きが必要になります。
- (1)投資先の企業がエンジェル税制の対象かどうか確認する
- (2)ベンチャー企業が都道府県に申請
- (3)投資家の書類受け取り
- (4)投資家が確定申告にて提出
(1)投資先の企業がエンジェル税制の対象かどうか確認する
中小企業のホームページの事前確認制度を利用して、投資しようとしている企業がエンジェル税制の対象かどうか確認します。
(2)ベンチャー企業が都道府県に申請
申請を受けた都道府県は、エンジェル税制の対象企業が確認後、都道府県知事名の確認書を投資先企業に交付します。
(3)投資家の書類受け取り
投資先の企業は、投資家の確定申告の際に必要な書類を投資家に向けて送付します。
(4)投資家が確定申告にて提出
投資家は、確定申告の際に受け取った書類を提出します。
エンジェル税制を受けるための確定申告で必ず必要な書類は、以下の通りです。
- 都道府県知事の確認書
- 一定の株主に該当しない旨の確認書
- 投資契約書の写し
- 株式異動状況明細書
また、優遇措置Aと優遇措置Bにおいて、それぞれ準備すべき書類は以下のとおりです。
①優遇措置Aの場合
- 特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除の明細書
- 特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額の寄附金控除額の計算明細書
②優遇措置Bの場合
- 株式等に係る譲渡所得税の金額計算明細書
- 特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除の明細書
以上の書類を確定申告の際に提出して、不備なく通ればエンジェル税制を受けることができます。
3、エンジェル税制を利用するメリット・デメリット
エンジェル税制を利用することで、大きなメリットを得られます。
しかしながら、メリットだけということではありません。
本章では、エンジェル税制を利用するメリットとデメリットを紹介します。
エンジェル税制を、利用するかどうか迷っている人のお役立てになれば幸いです。
(1)メリット
エンジェル税制のメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 投資しながら節税できる
- 投資したベンチャー企業が利益を出したときにのリターンが大きい可能性がある
①投資しながら節税できる
エンジェル税制の優遇措置を受けられる機会は、以下の2回あります。
- 株式を投資した時点
- 株式を売却した時点
投資した時点では、優遇措置Aと優遇措置Bの2種類の優遇措置があることは「1、エンジェル税制とは」で紹介しました。
実は、エンジェル税制は、株式投資だけではなく株式を売却した時点でも、優遇措置を受けられます。
株式を売却して受けられる優遇措置の内容は、株式売却を行った際に損失が出た場合に、その年の他の株式譲渡益と相殺することができるということです。
その年に相殺しきれない場合は、翌年以降3年間にわたって、順次株式譲渡益から相殺できます。
②投資したベンチャー企業が利益を出したときにリターンが大きい可能性がある
投資したベンチャー企業が成長して、株の価値が高まればハイリターンの期待ができます。
少額の投資でも、投資したベンチャー企業の成長具合によっては、他の投資方法では実現できないほどのハイリターンになることもあるでしょう。
(2)デメリット
一方、エンジェル税制のデメリットとしては、以下のようなものがあります。
- 投資したベンチャー企業が必ず利益を出すわけではない
- 確定申告の書類の準備が煩雑
①投資したベンチャー企業が必ず利益を出すわけではない
投資したベンチャー企業は、必ず利益を出すわけではありません。
具体的には、次のようなことが起こり得るため、エンジェル税制はハイリスクを伴う投資方法です。
- 必ずしも企業として成長するわけではない
- 必ずしも上場するわけではない
- 倒産の可能性もある
- 投資した全額を失うリスクさえある
ただし、投資したベンチャー企業が、破産または解散して株式が無価値になってしまった場合も、控除しきれない譲渡損失の金額は翌年3年間は繰越・相殺することが可能です。
②確定申告の書類の準備が煩雑
エンジェル税制を利用するための確定申告をを行う際、提出する書類が多くあり、準備が煩雑になります。
確定申告は、エンジェル税制以外にも、税金に関する申告をしなければなりません。
期限も決まっており、ただでさえ手続きが面倒なものです。
エンジェル税制をはじめ、確定申告の手続きは煩雑なため、少しでも不安がある方は税理士に相談すると良いでしょう。
4、エンジェル税制対象企業の探し方
エンジェル税制を受けたいけど、対象企業の探し方がわからないという方に向けて、探し方をいくつか紹介します。
(1)中小企業庁
エンジェル税制の対象企業を探すのに最も一般的なのは、中小企業庁のホームページです。事前にエンジェル税制の対象かどうか確認されている企業が、一覧として掲載してあります。
(2)株式投資型クラウドファンディング
ベンチャー企業が何をやっているのか、プロジェクトの内容を知ってから投資をしたい方には、株式投資型のクラウドファンディングで探すと良いでしょう。
「株式投資型クラウドファンディング」というのは、お金と引き換えに株を得られるクラウドファンディングのことです。
投資家が、実際に対象企業のプロジェクト内容を確認して、株式投資をします。
クラウドファンディングは、自分たちが何をやっているのかインターネットで広く発信し、その活動を支援しようとする人から資金を集めます。
クラウドファンディングについて、詳しくは「クラウドファンディングのやり方まとめ~成功するコツを4つ添えて~」で解説しておりますので、ご確認ください。
まとめ
今回は、エンジェル税制について詳しく紹介しました。
将来的に成長できると思ったベンチャー企業に投資をすれば、税制で優遇措置を受けることができ、さらに大きな利益を生み出すかもしれません。
エンジェル税制の利用に迷っている方や、確定申告についての不安がある方は一度税理士に相談してみてはいかがでしょうか。
エンジェル税制について、税理士に相談するメリットをいくつか紹介します。
- エンジェル税制についてのお悩み解決
- 節税への適切なアドバイス
- 各種煩雑な手続きの代行
1人で悩んでいるなら、まず、税理士に相談してみましょう。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
初回のご相談は無料ですので
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。