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TAX&ACCOUNTING MALL税金贈与税と相続税対策としての生前贈与について
2023.8.12 / 更新日:2023.08.12

贈与税と相続税対策としての生前贈与について

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現在、日本は少子高齢化などで引退した高齢世代がより多くの資産を持っております。国としては、それらの財産を贈与・相続などで若い現役世代に譲り渡すことで経済の活性化を促進したい、といった背景のもと、2023年の税制改正で贈与税・相続税の取り扱いを大きく改正しています。

そこで本記事では、贈与税の概要、生前贈与について、贈与税・相続税の税制改正のポイントを、べリーベスト税理士事務所が分かりやすく解説していきます。

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1、贈与税とは? 

贈与税とは、個人から個人へ財産を譲り渡した際に発生する税金のことで、財産を譲り受けた人が贈与税を支払います。贈与税の計算は、1年間に譲り受けた財産の合計額を求め、そこから110万円の基礎控除を差し引いた額に税率を乗じて求めます。そのため、1年間に110万円以下の財産を贈与された場合であれば、贈与税はかかりません。

また、法人から贈与を受けた場合は、贈与税は課税されず、所得税が課税されます。

(1)贈与税と相続税の違いは?

財産を譲り受ける方法は、贈与と相続などの方法がありますが、その違いは何でしょうか?

ポイントは、財産を譲り受ける時期が相続発生前なのか、相続発生後なのか、の違いです。

財産を所有している人が生存中に財産を引き継ぐ場合が「贈与」、亡くなってから財産を引き継ぐ場合は「相続」となります。どちらの形で財産を取得したかによって、贈与である場合は贈与税を、相続である場合は、相続税を納付する必要があります。

その他、相続人以外に財産を引き継がせる方法として「遺贈」もあります。遺贈とは「遺言」によって法定相続人以外に財産全部または一部を引き継がせることをいいます。なお、法定相続人にも遺贈をすることができます。

(2)贈与税の課税・納付時期について

贈与税は、財産を譲り受けた時点で課税されます。

納付方法は、自分から税務署に申告して納付します。

申告時期は、贈与があった年の翌年2月1日から3月15日までの期間です。申告期限を過ぎてしまうと、ペナルティとして追徴課税されることがありますので、ご注意下さい。

(3)贈与税がかかる財産の範囲

贈与税の対象となる財産は、現金や預金だけでなく、不動産や株式、債券、家財、貴金属などです。計算の基準となる贈与額は「贈与時の時価」です。この時価は「相続税法財産評価基本通達※」に記載されている方法で評価します。また、生命保険金などもみなし贈与財産として贈与税の対象となります(自分で保険料を支払っていない保険金を受け取った時など)。

国税庁「財産評価基本通達」

相続や贈与で取得した財産の評価方法が示されています。

2、生前贈与について

ここからは、生前贈与について解説していきます。

(1)生前贈与とは?

生前贈与とは、財産を持っている人が、生前に自分の意思で他の個人に財産を無償で渡すことを言います。生前に贈与することから「生前贈与」と言われています。主に相続税対策を目的として行われます。生前贈与を行うと相続税の課税対象となる財産を減らすことができますが、生前贈与の際に贈与税が課税されます。

 (2)生前贈与の背景

2015年に相続税の基礎控除見直しなどの税制改正があり、相続税が課税されるケースが多くなりました。その背景としては、現金を持っている親世代が生きているうちに、現金を必要としている子や孫に現金を贈与してもらい、消費を促進し経済を活性化するためです。

生きているうちに子や孫に財産を贈与することで、相続開始後に子や孫が負担することとなる相続税の負担を減らすことも、生前贈与の目的の一つといえます。

(3)生前贈与のメリット

生前贈与で相続税の節税対策をするメリットは大きく2つあります。

相続財産を減らすことができる

暦年課税で生前贈与を行う場合、年間の贈与額が110万円以下であれば贈与税が課税されません。そのため、110万円以下に分割して贈与を行うことで贈与税が課税されず、死後の相続税の課税対象となる財産を減らすことができます。

例えば、現金資産を1,000万円持っている場合、相続発生後に取得すると1,000万円に対して相続税が課税されます。しかし、生きている間に110万円を子供に贈与すると贈与税は課税されずに現金を1,000万円から890万円に減らすことができます。よって相続税は890万円に対して課税されることになります。

②財産を自由に贈与することができる

相続発生後に財産を相続させる場合、民法では遺言書がない限り法定相続人に相続されます。しかし生前贈与であれば、親族以外の者に対してでも、財産を渡すことが可能となります。

3、贈与税の課税の仕組み

生前贈与を行うと相続税の課税対象となる財産を減らすことができますが、生前贈与の際に贈与税が課税されます。

贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの課税の仕組みがあり、その贈与を受ける人は、生前贈与を受ける際に「暦年課税」か「相続時精算課税」のいずれかを選択することができます。

通常は「暦年課税」ですが、一定の要件を満たし、届出をした場合は「相続時精算課税」を選ぶこともできます。

では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

(1)暦年課税

贈与税の基本となるのは暦年課税で、1年間(1月1日~12月31日まで)に受け取った財産の合計額が、110万円を超えた部分に対して贈与税が課税される制度です。つまり、譲り受けた財産の合計が、110万円以下の場合は贈与税はかからず、申告する義務も発生しません。

※注意点

贈与を受けた「合計額」に対して控除されるのが110万円なので、例えば、祖父母から同じ年にそれぞれ100万円ずつ贈与された場合は、合計額の200万円から110万円を控除した額の90万円に贈与税がかかってくる、ということになります。

(2)相続時精算課税

相続時精算課税制度とは、特別控除額の2,500万円までは贈与税が課税されず、相続が発生した場合に相続財産に加算して、相続税を計算する制度のことです。贈与を受けた財産が累計2,500万円を超えた場合には、その部分に対して一律20%の贈与税が課されます。

①適用対象者

相続時精算課税制度はすべての人が選択できる制度ではありません。

この制度が適用されるケースは「60歳以上の父母又は祖父母などが贈与者で、贈与者の推定相続人である18歳以上(2022年3月31日以前の贈与により財産を取得した場合は20歳以上)の子又は孫などが受贈者である場合」に限られます。

②届出書の提出が必要

相続時精算課税を選択する場合は、受贈者が、最初に贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日(贈与税の申告書の提出期間)に、相続時精算課税選択届出書と、戸籍の謄本などの必要書類を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

③注意点

  • 110万円以下の少額贈与でも贈与税の申告をしなければなりません。
  • いったん相続時精算課税制度を選んだら二度と暦年課税制度を使えません。

(3)「相続時精算課税制度」の主な特徴と2023年度の税制改正内容について

ここでは、「相続時精算課税制度」の3つの特徴と、2023年度の税制改正でどのような改正があったのか見ていきましょう。施行は2024年1月1日以降の贈与で適用されます。

相続時精算課税制度の主な特徴 2023年度の税制改正内容
①   合計2,500万円まで贈与をしても贈与税はかからない。但し、相続する際には、相続財産に足し戻すため、この2,500万円を含めて相続税がかかる。 今回の改正で相続時精算課税制度に新たに「年110万円の基礎控除」の枠が加わった。
②   110万円以下の少額贈与でも贈与税の申告をしなければならない。

相続時精算課税制度は特別控除額2,500万円まで贈与税はかからないが、少額であっても贈与があった場合は期限内に贈与税申告の提出が必要。

110万円以下の少額贈与であれば贈与税も相続税もかからず、申告も不要。

 

③   いったん相続時精算課税制度を選んだら二度と暦年課税制度を使えない。

相続時精算課税制度は、相続時精算課税制度を適用する贈与者ごとに選ぶことができる。例えば、母からの贈与は相続時精算課税制度を使い、父からの贈与は暦年贈与(一般の贈与)にする、など。

変更なし。

但し、2024年1月1日以降、相続時精算課税制度を選択した人への贈与でも、年110万円までなら贈与税も相続税もかからない。

 4、生前贈与で活用できる贈与税の非課税枠

財産を譲り受けた場合は原則贈与税がかかりますが、財産の性質や贈与の目的などにより、下記のものには非課税措置などが講じられています。

(1) 暦年贈与の基礎控除

110万円の基礎控除までは贈与税が課税されない。 

※詳細は「3. 贈与税の課税の仕組み」をご確認下さい

(2)相続時精算課税制度

特別控除額2,500万円までは贈与税が課税されない。 

※詳細は「3. 贈与税の課税の仕組み」をご確認下さい

(3)住宅取得等資金の贈与税の非課税措置

父母や祖父母などから住宅の新築、購入(中古を含む)、増改築費用の資金の贈与を受ける場合、

一定の耐震性、省エネルギー性またはバリアフリー性などを有する良質な住宅用家屋は1,000万円、それ以外は500万円まで贈与税が非課税となります。この制度は2023年12月末までです。

(4)贈与税の配偶者控除

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、受贈者である配偶者が居住用の不動産もしくは購入資金の贈与を受けた場合、贈与税の課税価格から2,000万円が控除されます。この贈与は贈与者が亡くなっても、相続財産に加算せずに相続税を計算することができます。

(5)教育資金の贈与税の非課税措置

30歳未満の者が、直系尊属から、教育資金に充てるため、一定の手続きにより金銭等の贈与を受けた場合において、1,500万円までの金額に相当する部分の価額について、贈与税が非課税となります。

この制度は2023年の税制改正で3年間の延長が決まり、2026年3月末までとなりました。

(6) 結婚・子育て資金の贈与税の非課税措置

18歳以上50歳未満の子や孫が、直系尊属から、結婚・子育ての資金に充てるため、一定の手続きにより金銭等の贈与を受けた場合において、1,000万円までの金額に相当する部分の価額について、贈与税が非課税となります。

この制度も2023年の税制改正で延長が決まり、2年間延長で2025年3月末までとなりました。

5、生前贈与のデメリット・留意点

最後に、生前贈与にはデメリットや留意すべき点もあります。

①税務署が生前贈与と認めない場合がある

生前贈与は、贈与する人と贈与を受ける人の双方が合意していなければ成り立ちません。

贈与する人は「生前贈与をした」と考えていても、贈与を受けた人は「生前贈与を受けてはいない」と認識の違いがあるような場合は、双方の合意がないことから生前贈与であるとは認められないことになります。

そこで、贈与の事実を確実に証明するために「贈与契約書」を作成しておくと安心です。

②定期贈与とみなされるリスクがある

年間の贈与額が110万円以下であれば贈与税が課税されません。しかし、毎年同じ金額を贈与し続けると定期贈与とみなされ、年間の贈与額が110万円以下であっても贈与税が課税されてしまう場合があります。定期贈与の場合、定期贈与の取り決めをした年に「定期金に関する権利」の贈与を受けたとして、贈与額の合計金額に対して贈与税が課税されてしまいます。

③不動産の贈与は贈与税以外の税金がかかる

土地や建物といった不動産も生前贈与することができますが、贈与を受ける人は、贈与税に加え、不動産取得税、登録免許税といった税金が別途課税される場合があります。また、不動産の維持管理費、固定資産税が新たにかかってくる点にも注意が必要です。

④相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算される

相続開始前3年以内に被相続人から相続人に対して行われた贈与については、相続税の課税価格の計算上、相続財産に加算されます。相続開始前3年以内にされた贈与財産を加算することを「生前贈与加算※」といいます。

※生前贈与加算とは

相続開始以前の一定の期間に行われた贈与財産を相続税の課税財産に加算することをいいます。相続開始直前の贈与で不当に相続税の課税を回避することを防ぐための措置です。

これが2023年度の税制改正で3年から7年に延長され、2024年1月1日以降の贈与から適用されます。

  • それまでの贈与については、今までどおり、相続開始前3年以内の贈与のみ生前贈与加算の対象です。
  • 延長した4年分については、総額100万円まで相続財産に加算しません。
  • この改正は2024年1月1日以降の贈与により取得する財産にかかる相続税について適用され、段階的に生前贈与加算の期間が延び、最終的には2031年1月1日以降に発生する相続税から生前贈与加算の期間は7年になります。

尚、生前贈与加算の対象になるかどうか、に関しては、

  • 暦年課税制度は、年間110万円以下の贈与であっても相続開始前7年以内の贈与は生前贈与加算の対象になり相続税の課税財産に加算します。
  • 相続時精算課税制度は、年間110万円以下の贈与は期間に関係なく生前贈与加算の対象にはなりません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

本記事では、贈与税の概要、生前贈与について、税制改正のポイントについて解説してきました。

生前贈与は、年間110万円の基礎控除額を超える部分に対して贈与税がかかります。年間110万円以内でおこなう暦年贈与は、計画的かつ早めに贈与を開始することで、相続財産を減らす効果が期待できます。贈与税の非課税の特例も複数ありますので、それぞれの要件をよく確認し、相続税対策をしていきましょう。

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