試算表の見方とは?試算表を経営に活かすための3ステップ!
試算表は、毎月何のために作るのだろう……。
見ただけで「ちんぷんかんぷん」と、デスクに投げ出したままにしていませんか?
試算表は、経営判断に欠かせない重要な資料です。
試算表をしっかりと活用できると、会社の経営状況を具体的に把握でき、今後の経営方針の決定に役立てることができます。
経営者にとって、試算表はなくてはならない資料なのです。
今回は、
- そもそも試算表とは
- 試算表を読むために必要な会計の前提知識
- 試算表を活用するために知っておくと便利な経営指標
について解説していきます。
本記事を読めば、試算表の見方を知ることができるだけでなく、試算表を経営に活かすための経営指標についても知ることができます。ぜひ、最後までご覧ください。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
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1、試算表の見方の前に|試算表とは
(1)試算表とは
決算確定前に作成する各勘定の集計表のことです。
1つ1つの取引の仕訳から総勘定元帳へ、正しく転記がされているかを検証することを目的として作られます。
他にも試算表は、経営状況の把握によって経営改善に役立てたり、金融機関から融資を受ける際の資料として提出したりと、様々な目的に利用されます。
(2)試算表の種類
試算表と一口に言っても、正確には3つ種類があります。
簡単にまとめましたので、順番に見ていきましょう。
①合計試算表
1つ目は、「合計試算表」です。
合計試算表は、一定期間における各勘定科目の借方合計と貸方合計を集計した一覧表です。
合計試算表の借方の合計と貸方の合計は、等しくなります。
仕訳転記の検証機能は優れていますが、一見して各勘定の残高が把握できない難点があります。
②残高試算表
2つ目は、「残高試算表」です。
残高試算表は、一定期間における各勘定科目の残高を集計した一覧表です。
合計試算表と同様に、借方残高合計と貸方残高合計は等しくなります。
仕訳の検証というよりは、決算前に業績の全体像を把握するのに役立ちます。
③合計残高試算表
3つ目は、「合計残高試算表」です。
これは、文字通り合計試算表と残高試算表を組合わせて作成した集計表です。
それぞれの借方合計・残高合計・貸方合計・残高合計は等しくなります。
①と②の良いところを1つにしたものなので、合計残高試算表なら仕訳の検証と業績把握が一緒にできます。
2、試算表の見方
試算表も決算書も、ある一時点で各勘定科目を締め切った残高を表しているのは同じです。
表示の仕方に差があるだけで、見方にもそう違いがある訳ではありません。
大事なのは、以下の「会計の基本5要素」の理解です。
- 資産
- 負債
- 純資産
- 収益
- 費用
会計の基本5要素と性質の異なった勘定の基本ルールを押さえることで、試算表が示す情報を正しく知ることができます。
(1)残高勘定(資産・負債・純資産)
決算書の貸借対照表に記載される「資産」「負債」「純資産」について、解説していきます。
資産・負債・純資産は、「残高勘定」と呼ばれます。
①資産とは
資産は、簡単に言うと、調達した資金の運用形態で将来的に会社に利益などのプラスの影響をもたらすものです。
資産は、大きく以下のものに分類されます。
- 流動資産
- 固定資産
- 繰延資産
決算書や試算表上では、「流動資産」「固定資産」「繰延資産」の順で表示されます。
各分類における勘定科目の例は、以下のとおりです。
流動資産に分類される主な勘定科目
現金、預金、受取手形、売掛金、有価証券など
固定資産に分類される主な勘定科目
土地、建物、機械など
繰延資産に分類される主な勘定科目
創立費、開業費、開発費など
繰延資産だけは特殊で、実質支出です。
その支出効果が1年以上に及ぶ資産で、後に長期間収益を生む可能性があるため、資産計上するものとなります。
資産に属する勘定科目は、借方に計上されるときは増加、貸方に計上されるときは減少を表します。
例1)
借方 現金100円/貸方 売上高100円の仕訳
→現金(資産)が100円増加
例2)
借方 仕入高50円/貸方 現金 50円の仕訳
→現金(資産)50円の減少
②負債とは
負債は簡単に言うと、株主以外から調達した資金で将来資金流出などマイナスの影響をもたらすものです。
負債は、大きく流動負債と固定負債に分類されます。
決算書や試算表上では流動負債、固定負債の順で表示されます。
流動負債に分類される主な勘定科目
支払手形、買掛金、未払金、短期借入金など
固定負債に分類される主な勘定科目
社債、長期借入金、預り保証金など
負債は、借方に計上されるときは減少、貸方に計上されるときは増加を表します。
例1)
借方 仕入高100円/貸方 買掛金100円の仕訳
→買掛金(負債)100円の増加
例2)
借方 買掛金50円/貸方 現金50円の仕訳
→買掛金(負債)50円の減少
③純資産とは
純資産は簡単に言うと、株主から調達した資金と過去から蓄積された利益のうち、社内に留保されているものです。
純資産は、大きく分けて株主資本と株主資本以外に分類されます。
株主資本に分類される主な勘定科目
資本金、資本準備金、利益準備金、繰越利益剰余金など
株主資本以外に分類される主な勘定科目
新株予約権など
決算書や試算表では、純資産は負債の下に表示されます。
純資産、負債と同じく借方に計上されるときは減少、貸方に計上されるときは増加を表します。
例1)
借方 現金500万円/貸方 資本金500万円
→資本金(純資産)の増加
例2)
借方 繰越利益剰余金100万円/貸方 現金100万円
→配当金(繰越利益剰余金(純資産))の減少
(2)損益勘定(収益・費用)
決算書の損益計算書に記載される「収益」「費用」について、解説していきます。
収益と費用は、「損益勘定」と呼ばれます。
①収益とは
収益とは、ざっくりと言えば、会社が事業活動を通して得た収益です。
収益は、大きく営業収益と営業外収益に分類されます。
営業収益に分類される主な勘定科目
売上など
営業外収益に分類される主な勘定科目
受取利息、受取配当金など
収益は基本的に、発生したときに貸方に計上されます。
例1)
借方 現金100円/貸方 売上100円の仕訳
→売上(収益)の発生
②費用とは
費用は、収益を得るために費やしたコストのことです。
費用は、大きく営業費用と営業外費用に分類されます。
営業費に分類される主な勘定科目
仕入、給与、交通費、広告宣伝費、減価償却費、水道光熱費など
営業外費用に分類される勘定科目
支払利息など
費用は基本的に、発生した時に借方に計上されます。
例1)
借方 仕入100円/貸方 現金100円の仕訳
→仕入(費用)の発生
3、試算表を経営に活かすために知っておくべき経営指標
(1)経営の安全性を測る
①自己資本比率
自己資本比率の計算式は、以下の通りです。
自己資本比率(%)=自己資本/(自己資本+他人資本)×100 |
会社の元手となる資金は、自己資本と他人資本で成り立っています。
自己資本比率とは、その元手となる資金のうちどれだけ自己資本でまかなっているかを表したものです。
自己資本比率の数字が大きいほど、財務安全性が高い会社と見ることができます。
しかし、業種や会社の置かれた状況によっては、自己資本比率の数字のみで判断できないことに注意が必要です。
他の指標や材料と一緒に総合的に考えましょう。
②固定長期適合率
固定長期適合率の計算式は、以下の通りです。
固定資産長期適合率(%)=固定資産/(固定負債+自己資本)×100 |
会社は事業活動において、建物や機械などの収益を生む資産に投資することがあります。
この建物などを総称して、固定資産と呼びます。
固定長期適合率とは、固定資産の購入資金が、返済におけるリスクの低い長期借入と返済の必要のない自己資本でどれだけまかなわれているかを見るための指標です。
固定資産長期適合率を見ることで、会社の財務の健全性がわかります。
100%を上回る場合、購入に短期借入などのすぐに返済が必要な資金が使われている状態が示されているため、資金繰りに不安があると判断ができます。
③流動比率
流動比率の計算式は、以下の通りです。
流動比率(%)=(流動資産÷流動負債)×100 |
流動比率とは、流動負債(短期的に返済する義務のある債務)に対する、流動資産(短期的(1年以内)に現金化できる資産)の割合のことです。
流動比率によって、短期的な債務の返済に耐えられるだけの短期的な資産を持っているかどうかを見ることができます。
計算式をご覧のとおり、あまり複雑ではありません。
貸借対照表があればすぐ求めることができるので、比較的使いやすい指標ではないかと思います。
しかし、流動比率は、現実には容易に換金できない資産も含んでいるため、実態を正確に表しているとは言い難い一面があります。
あくまで、簡易把握できるだけという点に注意が必要です。
(2)事業の収益性を測る
①営業利益率
営業利益は、会社の本業によって得た利益のことです。
営業利益は、以下の計算式で求めることができます。
営業利益=売上高-売上原価-販売費一般管理費 |
営業利益の計算式は、以下のとおりです。
営業利益率(%)=営業利益/売上高×100 |
営業利益率とは、本業でどれだけ収益を上げる力があるかを測る指標です。
営業利益率は高いほどよいとされます。
目安としては、11%~20%が優良、10%が標準、0~9%が要改善と言われています。
②経常利益率
経常利益とは、会社の本業と本業以外の活動を通じて得た利益のことです。
経常利益は、以下の計算式で求めることができます。
経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用 |
経営利益率とは、会社の収益力を測る指標の一つです。
以下の計算式から求めることができます。
経常利益率(%)=経常利益/売上高×100 |
経常利益率が高いほど、優良会社であるとされています。
過去の自社の経常利益率推移と現状を把握しておくと、経営判断に有効に働くのではないでしょうか。
業種によっても、平均値が違います。
業種平均値は、10%以上の業種があったり、2%程度の業種もあったりと、さまざまです。
経常利益率については、同業他社との比較を頭に入れておくことも、経営判断には有効でしょう。
③ROE(自己資本当期純利益率)
ROEの計算式は、以下のとおりです。
ROE(自己資本当期純利益率)(%)=当期純利益/自己資本×100 |
ROEは会社の収益性を測る指標です。
会社が自己資本でどれだけ利益を生み出したかを見ることができます。
業種によってばらつきがありますが、10~20%あれば優良とされています。
(3)事業の生産性を測る
①労働生産性
労働生産性 = 付加価値(※)/社員数(総労働時間) ※付加価値 = 総人件費 + 営業利益 付加価値の代わりに収益でも良い |
労働に対する収益性を測る経営指標です。
社員一人当たりまたは社員一人一時間当たりで、どれだけ付加価値もしくは収益をあげているのかを測ることができます。
見方として、労働生産性の数値が増加傾向にあれば適正と判断されます。
②資本生産性
資本生産性 = 付加価値/総資本(※) × 100% ※総資本 = 負債 + 純資産 |
投下された資本がどれほど効率的に価値を生み出すかを測る指標です。
投下資本一単位あたり、どれくらい付加価値が生み出されたかを割合で表しています。
4、試算表と貸借対照表、損益計算書の関係
期末試算表に、決算整理仕訳の分を追加して決算整理後試算表が作成されます。
決算整理後試算表から、残高勘定である資産、負債、純資産が貸借対照表に、損益勘定である収益と費用が損益計算書に記載されます。
5、試算表の見方に不安があるなら税理士に相談しよう!
(1)試算表の作成支援
税理士は毎月の月次試算表の作成方法を丁寧に説明し、作成代行まで幅広く経営者の方の支援をすることができます。
(2)試算表に基づいた経営アドバイス
税理士は試算表を作成して終わりではなく、経営者の方を支え、より良い経営を行っていただくための助言、提案をすることができます。
事業のパートナーとして頼れる存在です。
まとめ
今回は、
- 試算表の種類
- 試算表の見方
- 試算表の各種経営指標
- 試算表と財務諸表の関係性
など、盛りだくさんに紹介してきました。
初めのうちは混乱したり、理解するのが面倒になることもあるでしょう。
しかし、根気強く月次試算表と向き合ううちに、会社の状態や経営が分かるようになってきます。
経営指標を経営に活かせるようになってくると、会社の月次決算や財務諸表を見るのが楽しくなり、前向きな会社運営が行えるように変わってきます。
試算表の見方を勉強することをきっかけに、会社の具体的な業績と向き合い、会社の未来を明るいものにしていきましょう。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
初回のご相談は無料ですので
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。