グレーゾーン解消制度とは?会社経営において知りたい4つのこと
グレーゾーン解消制度とは、経営にどのように関わってくるのだろう……。
新規事業に参入したいけど、どんな法令の規制を受けるかわからないので、決断できない……。
そうお悩みの方は、少なくないでしょう。
「グレーゾーン解消制度」を利用すると、「新規事業の内容が法令の規制を受けるかどうか」を所轄の省庁が回答してくれるので、安心して新規事業を始めやすくなります。
グレーゾーン解消制度を利用するには、所定の照会書を作成して提出しなければならないので、作成するポイントも知りたいところですね。
今回は、新規事業が法令の規制を受けるかを知りたい方に向けて、
- グレーゾーン解消制度の概要
- グレーゾーン解消制度の照会書を作成するポイント
について解説します。
あわせて、「グレーゾーン解消制度の活用事例」も紹介します。
この記事が、会社経営にあたって疑問があり、グレーゾーン解消制度を利用したいという方の参考になれば幸いです。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。
1、グレーゾーン解消制度とは
本章では、グレーゾーン解消制度の概要や、制度の流れについて解説します。
(1)グレーゾーン解消制度の概要
グレーゾーン解消制度とは、事業者が新規事業を安心して実施するためのサポートをする制度です。
新しいサービスを展開したり、新商品を販売したりする新規事業は、事業者にとっては業務を拡大するための大きなビジネスチャンスになり得るものです。
一方、せっかく新規事業を始めたものの、事業の内容がある法令に違反することが後になって判明した場合は、下記のような措置が必要となります。
- 事業の修正
- 最悪の場合は事業撤退
新規事業について、法規制が適用されるかどうかを、規制を所轄する省庁(規制所管省庁)にあらかじめ確認できるのが、グレーゾーン解消制度です。
新規事業がどのような法令の適用を受けるか、どのような規制の対象になるかなどを、あらかじめ確認できるので、新しいサービスや新商品を安心して提供できることがメリットといえます。
(2)グレーゾーン解消制度の流れ
グレーゾーン解消制度の流れは以下のとおりです。
- ①照会書を作成する(新規事業の概要や、照会によって確認したいことなどを記載)
- ②事業を管轄する省庁(事業所管省庁)に照会書を提出する
- ③事業所管省庁から規制所管省庁に照会書が送付される
- ④規制所管省庁は照会書の内容に基づいて、新規事業がどのような規制の対象になるかなどを回答する
- ⑤事業所管省庁を通じて、回答結果が事業者に送付される
①照会書を作成する
照会書には、新規事業の概要や、照会によって確認したいことなどを記載します。
②照会書を提出する
照会書が完成したら、照会書を提出します。
照会書の提出先は、事業を管轄する省庁(事業所管省庁)です。
③事業所管省庁から規制所管省庁に照会書が送付される
提出した照会書は、事業所管省庁から規制所管省庁へ送付されます。
④規制所管省庁が回答する
規制所管省庁は、照会書の内容に基づいて、新規事業がどのような規制の対象になるかなどを回答します。
⑤回答結果が事業者に送付される
規制所管省庁が回答した回答結果は、事業所管省庁を通じて事業者へ送付されます。
2、グレーゾーン解消制度の照会書作成のポイント
グレーゾーン解消制度を利用するには、必ず照会書を作成しなければなりません。
いかに適切な照会書を作成できるかが、ポイントです。
そこで、本章では、照会書を作成するにあたっての以下のポイントを、項目ごとに解説します。
- 事業の概要と達成したい目標
- 事業により生産性の向上や新しい需要が見込まれる理由
- 事業の内容
- 事業の時期・場所
- 規制対象となる可能性がある法令の記載
- 「何を確認したいか」という自分の見解を記載
(1)事業の概要と達成したい目標
新規事業の概要と、事業によって達成したい目標について記載します。
①記載のポイント
記載にあたってのポイントは以下の2点です。
新規事業を行おうとする背景となる事業を記載する
それによって目指す事業の方向性を記載する
上記を記載することで、新事業活動の要件に含まれている事業の新規性や、新規事業が公序良俗を害するおそれがないことなどを、照会書から判断しやすくなります。
②記載例
・当社は現在A産業への新規参入を目指しており、今回Bサービスを新規事業として検討している ・従来のBサービスにおいては、役務だけを提供するものが少なくないが、当社の新サービスの特徴は、役務提供だけでなくコンサルも実施することである ・役務提供サービスにコンサルティングサービスを加味することで、従来型のサービスとの差別化を図りたいと考えている ・コンサルティングサービスの結果に基づいて、顧客に対して関連する商品の案内を実施することで、収益力の向上を目指す |
(2)事業により生産性の向上や新しい需要が見込まれる理由
新規事業を実施することで、生産性が向上したり、新しい需要が見込まれたりする理由などを記載します。
①記載のポイント
記載にあたっては、新規事業が以下の5つのいずれに該当するかを、明確にする必要があります。
- 新商品の開発または生産
- 新たな役務の開発または提供
- 商品の新たな生産または販売の方式の導入
- 役務の新たな提供方法の導入
- その他の新たな事業活動
例えば、新商品を開発した場合は、「新商品の開発または生産」に該当します。
新サービスを提供する場合に該当するのは、「新たな役務の開発または提供」です。
次に、以下の2点について明確に記載するのがポイントです。
- 生産性の向上または新たな需要の獲得が見込まれる理由
- 事業が実現した場合の新たな需要の獲得見込み(売上やシェアなど)
②記載例
・当社が実施予定の新サービスは、「新たな役務の開発又は提供」に該当する ・従来のサービスは、役務提供程度で留まることが業界における慣習である ・しかし、顧客ニーズとしては業務改善のためのコンサルティングも求めている ・そこで、役務提供にコンサルティングサービスを付与した新サービスを提供する ・それによって通常の売り上げの3割程度の向上や、関連商品の販売機会を得ることを見込むものである |
(3)事業の内容
新しい事業活動の具体的な内容を記載する項目です。
特に、以下の2点について、具体的に記載する必要があります。
- 事業実施主体
- 事業概要
①事業実施主体とは
「新規事業に関わるのは誰か」ということについて、記載します。
事業を実施するのは、基本的に申請者です。
しかし、申請者だけでなく、新規事業に関係する全ての者(法人など)について、名称や役割を記載することが必要です。
申請者以外の者について記載する場合、申請者との関係も分かるように記載しましょう。
ただし、事業を実施する場所の用地保有者など、事業自体との関係が希薄な事業者については、記載は不要です。
②事業概要とは
事業全体の概要について、記載する項目です。
事業の具体的な流れや、新商品の仕様などを記載します。
記載のポイントは以下のとおりです。
- 新規事業が特定の業に該当するかどうかを問う場合は、事業の流れを具体的に記載する
- 新商品が一定の基準を満たしているかを確認する場合は、商品の仕様を記載する
いずれにせよ、主観的な評価を記載するのではなく、具体的な事実に基づいて客観的な記載をすることが大切です。
(4)事業の時期・場所
新しい事業活動を実施する時期や、場所について記載する項目です。
①記載すべき具体的な項目
具体的には、以下のような項目などについて記載します。
- 新しいサービスを実施する時期
- 新しいサービスを提供する場所
- 新しいサービスの対象となるエリア
- 新しい製品を製造する場所
省庁が、対応するためのスケジュールを把握しやすいように、新サービスをいつ頃から実施する予定なのかを記載するのが、ポイントです。
既に実施している事業は、グレーゾーン解消制度の対象外である点に注意しましょう。
対象となる場所は、当初のエリアに限定される必要はありません。
対象エリアを拡大する予定がある場合は、その旨を記載することができます。
例えば、「当社の本社の所在地周辺にて新規事業を開始します。以後、エリアを順次拡大する予定です」などです。
②記載例
【新しいサービスを提供する場所】 ・保健所に届出済みの、当社ブランドの所定の検体測定室(300箇所) ・サービスはクラウドサービスにて提供しており、当社本社および支社より全国へ案内予定 ・クラウド型署名機能、要素認証機能を提供【新規事業活動の実施時期】 ・準備期間として2021年3月~(1ヶ月程度)、実施期間として2021年4月1日~ ・本照会の回答を頂き次第、実施予定2021年6月 ・2021年5月予定(追加機能の開発は随時行っており、今後も順次拡張していきます) |
(5)規制対象となる可能性がある法令の記載
規制の対象となる可能性がある法律や、法律に基づく命令などについて、記載します。
規制の根拠になると考えられる法令などには、法令や命令だけでなく、規制に関連する告示・通達なども含まれます。
照会書に法令などを記載する場合は、法令の名称や関係する条文を、そのまま引用するのがポイントです。
「具体的な条文」に、「どのように記載されているか」が、照会書で分かるようにしましょう。
(6)「何を確認したいか」という自分の見解を記載
新事業活動に関して、どのようなことを確認したいのかと、それについての自分の見解を記載する項目です。
①記載のポイント
具体的には、まず規制の根拠となる(可能性がある)法令について、どの部分の解釈が明らかでないかを記載します。
続いて、それに関する自分の見解を示します。
記載する際のポイントは、以下のとおりです。
- 確認事項は「何を確認したいのか」を一目で把握できるように簡潔に記載する
- 自分の見解の記載については「論理的」に説明する
- 法令の文言や規制所管省庁が示している逐条解説での見解などを参考にする
②記載例
本照会書に記載した当社の新事業活動が、A業法第2条に規定されている「B業」に該当しないことを確認したい。 <当社の考え> ・A業法第2条においては、「B業」とはBを業として行うものと規定されており、BとはCを行なうことをいう。 ・当社は新事業活動においてCを行っていないので、当社の新事業活動はBに該当しない。 ・よって、当社の行う新事業活動はA業法第2条が規定する「B業」には該当しないものと考える。 |
3、グレーゾーン解消制度の活用事例
前章までで、グレーゾーン解消制度の照会書の作成ポイントなどについて解説しました。
本章では、グレーゾーン解消制度の実際の活用事例を紹介します。
(1)活用事例①|Web上の登記手続き書類自動作成サービスが司法書士法に違反しているか否か
Web上で登記手続書類を自動で作成するサービスについて、司法書士法に違反していないか、法務省に照会された事例です。
なお、同法では、登記手続書類の作成は司法書士の独占業務と規定されています。
法務省は、以下を理由として、「同サービスが司法書士法に違反するものではない」と回答しました。
・登記申請書や印鑑届出書などを、利用者の判断において作成する場合に限定されている(作成方法が限定されている) ・個別の事案について、利用者の依頼に基づいて個別具体的なアドバイスをするものではない(個別具体的なアドバイスではない) |
(2)活用事例②|自己採血の健康チェックサービスが医師法に違反しているか否か
自己採血によるセルフ健康チェックサービスが、医師法が規定する医業に該当するかが照会された事例です。
同法は、医師以外による医業を禁止しています。
厚生労働省の回答により、以下の2点が回答されました。
・利用者が自己採血をすることは、医師法が規定する医業に該当しない ・事業者が自己採血による検査結果を通知することや、より詳しい検診を受けるように勧めることなどは、医業に該当しない |
4、グレーゾーン解消制度など会社経営に関する不安は税理士へ相談しよう
グレーゾーン解消制度を始めとして、「会社経営」に関する不安について税理士に相談すると、以下のようなメリットがあります。
- 照会書作成のサポートが受けられる
- 事業計画の支援を受けられる
- 正確な確定申告書を作成してもらえる
(1)照会書作成のサポートが受けられる
グレーゾーン解消制度を効率よく利用するには、照会書をどれだけ正確に作成できるかが重要なポイントになります。
特に、新規事業の流れや収益率の見込みなどについて、税理士であれば説得力のある正確な数字を導き出すことが可能です。
照会書を作成する前に税理士に相談すると、照会書に関するアドバイスを得られるだけでなく、専門家としての知識と経験に基づいた意見を得ることが期待できます。
(2)事業計画の支援を受けられる
新規事業を成功させるには、綿密な事業計画の策定が重要です。
税理士に依頼すると、事業計画の策定にあたって専門家としてのサポートを受けることができるでしょう。
具体的には、事業計画にあたって検討すべき項目を整理したり、数値計画について専門家としての意見を述べたりなどが可能です。
税理士のアドバイスに基づいて、事業計画の精度を上げれば、事業の成功率が高くなったり円滑な資金調達などにつながったりする可能性があります。
(3)正確な確定申告書を作成してもらえる
新規事業によって新たな収益が生じた場合、それを確定申告書に反映する必要がありますが、税理士に依頼すると正確な確定申告書が可能です。
確定申告書の内容に不備がある場合、加算税などのペナルティの対象になるだけでなく、税務調査の可能性も考慮しなければなりません。
税理士に依頼すれば、正確な確定申告書の作成によってペナルティなどのリスクの軽減につながります。
また、納税者に有利な税制度を熟知しているので、節税対策も期待できます。
まとめ
グレーゾーン解消制度は、新規事業が法令の規制を受けるかどうかを所轄の省庁が回答してくれる制度です。
グレーゾーン解消制度を利用すると、新規事業が法令の規制対象になるかを事前に把握できるので、新規事業を無理なく始めることができます。
グレーゾーン解消制度を利用するには照会書を作成する必要がありますが、税理士などの専門家に相談することにより、照会書を効率よく作成することができるのでおすすめです。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
初回のご相談は無料ですので
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。