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2022.2.14 / 更新日:2022.12.08

財務指標とは?経営者が知りたい経営戦略へ繋げるため4つのこと

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財務指標は、企業の経営状況をチェックするツールとして活用されています。

しかし、財務指標を使って分析できる内容や経営戦略との関係性がよくわからない、という方もいるのではないでしょうか。

今回は、財務指標はどのような数値なのかを解説したうえで、

  • 財務指標を使って分析できる内容
  • 財務指標を活用する際の注意点

など、企業の持続的な成長に向けた経営戦略への繋げ方を解説します。
あわせて、財務指標について税理士へ相談するメリットについても紹介します。

財務諸表を見ながら、財務指標への理解を深めていきましょう。

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1、財務指標とは

本章では、財務指標の概要および必要性について解説します。

(1)財務指標の概要

①財務指標とは

「財務指標」とは、企業の業績や経営状況を分析・把握するために、財務諸表に記載された数値をもとに計算された「指標」です。

他社の財務諸表がわかると、自社の市場での立ち位置も把握できます。
取引の与信判断や銀行融資の審査にも活用されるなど、財務指標はビジネスのさまざまな場面で重要視されています。

②財務指標は客観的な分析が可能

財務指標は、金額ではなく比率(パーセンテージ)で表されるため、金額や企業の規模にとらわれずに客観的な分析が可能です。

2021年7月期の売上が1,000万円増えた場合を例に考えると、月商10億円の企業だと1%の増加です。
一方、月商5,000万円の企業では20%の増加となります。
同じ金額でも、以上のように、企業規模によって売上の増加率が大きく異なるわけです。

財務指標を使って分析すると、項目ごとに同じ条件下で企業の経営状況を把握できます。

(2)なぜ財務指標が必要?

財務指標は、企業が持続的な成長を続けるための経営戦略を立てる材料として、必要不可欠なものです。

同業他社との比較から自社の強み・弱みを客観的に把握し、経営課題も浮き彫りにすることができます。

売掛金の回収状況や、社員の生産性など自社の状態についても明確化できるため、内部統制にも活用可能です。
企業経営において財務指標が必要な理由を、もう少し詳しく確認してみましょう。

①自社の状態を客観的に理解できる

財務指標を活用することで、企業の経営状態を客観的な「数値」という形で把握できるようになります。

個人事業や小規模な企業の場合だと、経営者本人の経験則によって売上高や事業の推移を直接確認して、事業成功に繋がることもあるでしょう。

しかし、事業が拡大するにつれて、事業主1人の力では自社の状況把握が難しくなるのが実情です。
経営者は、財務指標をもとに、より経営状況を良くするための判断をすることができます。

②他社と客観的に比較する

数値化された財務指標を用いることで、同業他社との比較が簡単になるだけでなく、自社の強み・弱みも客観的に把握できるようになります。

上場企業はもちろん、中小企業でも企業信用情報という形で財務情報の概略を入手できます。

以上のような情報をもとに、収益性や労働生産性などを分析して、経営戦略の精度を上げることも可能でしょう。

自社の財務指標は、他社と取引する際の与信判断や、銀行融資を受ける際の審査項目にもなります。
自社の情報開示を通じて、企業活動を長続きさせるためにも、財務指標は大切な位置付けであるといえます。

③持続的な成長に向けて経営戦略を立てる

財務指標を用いることで、長期的な企業運営を前提とした経営戦略を立てられます。

市場の多様化が進んでおり、売上額を右肩上がりに伸ばし続けることは難しい現状ですが、商品・サービスの付加価値を高めながら、緩やかな成長を促すことは可能でしょう。

仮に、M&Aによって自社が他社に買収される局面を迎えたとしても、経営戦略が優れていれば企業価値の高さが評価され、高値の買収額を提示される可能性もあります。

したがって、企業の価値を保ち続けるためにも、財務指標を把握することは大切なのです。

2、財務指標を使って分析できる内容

財務指標は、分析できる内容の違いによって次の5つの項目に分けられます。

分析項目 主なチェックポイント
収益性 企業が利益を上げる能力
安全性 企業の支払能力
活動性 資産の活用状況
生産性 経営資源の活用状況
成長性 過去の実績や将来の成長可能性

 

財務指標を使って分析できる内容を詳しく紹介します。

(1)収益性

収益性の分析では、売上高に対してどれだけの利益が出ているかの比率を分析します。

収益性の指標はいくつかありますが、「売上高経常利益率」と「自己資本利益率(ROE)」の2つの指標により、企業の収益性の高さを把握できます。

①売上高経常利益率

売上高経常利益率は、以下の計算式で求められます。

売上高経常利益率(%)=(経常利益÷売上高)×100

売上高経常利益率は、売上高に対する経常利益の割合を示した指標です。
企業の収益源である営業活動による収益だけでなく、増資や金融機関からの借入といった財務活動で得た収益も含まれます。

企業活動の結果が現れるため、企業の業績を分析する上で重要な指標です。

②自己資本利益率(ROE)

自己資本利益率(ROE)は、企業の自己資本に対する当期純利益の割合を示した指標で、出資額に対する経営効率を確認できます。
以下の計算式で、自己資本利益率を求められます。

ROE(%)=(当期純利益÷株主総資本)×100

自己資本利益率は、出資額に対して得られたリターンを示す数値なので、株主や投資家にも注目される指標です。

自己資本には、株主から調達した資金だけでなく、企業の代表者や発起人が出資した資金も含まれます。

(2)安全性

財務指標による安全性の分析では、金融機関や社債を購入した人に対する返済能力を判断します。

「流動比率」と「自己資本比率」が高ければ、少なくても短期的な返済能力に問題がないとされます。

①流動比率

流動比率とは、1年以内に現金化できる流動資産に対する、返済・支払期日が1年以内の流動負債の割合を示す比率です。以下の計算式で求められます。

流動比率(%)=(流動資産÷流動負債)×100

買掛金・支払手形や短期借入金などが、流動負債に分類されます。

流動比率が200%を超えていれば、返済能力が高いといえるでしょう。
一方、100%を切ると資金繰りが厳しい状態だと判断されます。

②自己資本比率

自己資本と他人資本とのバランスから、企業の財務状態の安定性を判断するための比率です。他人資本とは、銀行からの借入や社債の発行によって外部から調達した資本です。
自己資本比率は、以下の計算式で求められます。

自己資本比率(%)=自己資本÷(自己資本+他人資本)×100

自己資本比率が30%以上なら、経営が安定している企業だと判断される傾向にあります。

(3)活動性

活動性の分析では主に売上高に着目して、企業の資本・資産を効果的に活用して収益を上げているかを数値化します。
商品・製品の適正な在庫量や回転率の確認も可能となります。

①総資本回転率

総資本回転率とは、企業に投資した資産の活用率を把握する指標で、1.0回を超えていれば、収益を上げられていると判断できます。

一方、総資本回転率が低ければ収益を上げるために多くの営業費用がかかっていると判断されるため、資金繰りの悪化に注意が必要です。

総資本回転率は以下の計算式で求められます。

総資本回転率(回)=売上高÷総資本

②棚卸資産回転率

棚卸資産回転率とは、在庫回転率とも呼ばれることもあり、商品や製品を効率的に販売できているかどうかを示す指標です。

回転率が低い場合は、在庫を多く抱えていると判断されます。

棚卸資産回転率は、以下の計算式で求められます。

棚卸資産回転率(%)=売上高÷棚卸資産

(4)生産性

生産性の分析では、企業が売上以外の付加価値を生み出すために、社員を効率的に活用できているかどうかをチェックします。

具体的には、次のようなものを分析します。

  • 労働生産性
  • 労働分配率

生産性の分析によって、社員に支払っている人件費(給与)が適正な金額かどうかも、判断可能です。

①労働生産性

労働生産性とは、商品の売上以外に創出した、社員1人あたりの付加価値を示す指標です。以下の計算式で求められます。

労働生産性(円)=付加価値額÷社員の数

労働生産性が高いほど、社員を効率よく活用できていると判断されます。

付加価値は、以下の2種類の方法で計算可能です。

  • 控除法
  • 加算法

控除法は、主に中小企業で使用され、以下の計算式で求められます。

付加価値=売上高ー売上原価

加算法は、主に大企業で使用で使用され、以下の計算式で求められます。

付加価値=人件費+地代家賃+租税公課+減価償却費+金融関連費用+経常利益

②労働分配率

労働分配率とは、企業の利益を人件費に反映させた度合いを示す指標です。
以下の計算式で求められます。

労働分配率(%)=人件費÷売上総利益(粗利益)×100

労働分配率が高すぎると、人件費が経営を圧迫する懸念が生じます。
一方、労働分配率が低すぎると、社員への待遇が良くないのではという印象にも繋がるでしょう。

労働分配率は、50%前後が妥当だといえます。

(5)成長性

成長性の分析では、売上額自体と経常利益の変化から、企業の過去の成長実績と将来的な成長見込みの両面を確認します。

具体的には、次のようなものを分析します。

  • 売上高成長率(増収率)
  • 経常利益成長率(増益率)

①売上高成長率(増収率)

売上高成長率(増収率)は、以下の計算式で求められます。

計算式:売上高成長率(%)=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100

数値がプラスであれば、前期よりも売上が伸びていることがわかりますが、市場環境や経済情勢の変化を受けやすいため3〜5年分の推移も確認するとよいでしょう。

②経常利益成長率(増益率)

経常利益成長率(増益率)は、以下の計算式で求められます。

経常利益成長率(%)=(当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益×100

企業として稼ぐ力がどのくらい増えたかを示す指標で、売上高成長率と同じ割合で増加するのが理想的です。

一方、増益率が下がっている場合は労働生産性などの低下も懸念されるため、早急に企業活動の状態や経営戦略の妥当性をチェックする必要があるでしょう。

3、財務指標を活用する際の注意点

財務指標を活用することで企業の経営状況を客観的に把握できますが、経営状況を把握しただけでは、企業の成長にはつながりません。

平均値や他社の指標も気になるところですが、自社の事業規模や商品力なども考慮しながら財務指標を活用することが大切です。

財務指標を活用する際の注意点も、しっかり確認しておきましょう。

(1)できるだけ多くの指標を活用する

企業の経営状況をより細かく把握するには、できる限り多くの財務指標を活用することが大切です。

経営状況の確認では、収益性に着目しがちですが、商品の回転状況や売掛金の回収日数など、収益以外のデータも財務状況に影響します。

社員1人あたりの労働生産性も人件費の精査に活用でき、将来の収益性を高める戦略にも繋がるでしょう。

顧客の評判など、会計データには現れない指標も活用しながら、幅広い視点で財務分析を行いましょう。

(2)平均値や他社の状況に一喜一憂しない

他社の財務指標を参考にしながら、自社の経営状況を把握することも大切ですが、取り扱う商品・サービスや社員の生産性などは企業それぞれで異なります。

業種ごとの平均値や他社の財務状況にとらわれず、目的を持って財務指標を活用することが、企業の方向性を考えるうえでは大切です。

企業によって、実現したいテーマはさまざまでしょう。
例えば、

  • 事業拡大に向けた銀行融資にあたって自己資本比率を改善したい
  • あるいは部門の人件費を見直すために労働分配率や労働生産性を把握したい など

自社の経営理念や価値観に忠実な形で、財務分析を進めましょう。

(3)経営上の課題解決にもつなげる

財務指標を分析した後は、分析結果を経営上の課題解決や経営戦略の見直しに繋げましょう。
前年度の売上高が、財務指標で設定していた目標に未達だった場合を例にすると、分析結果を以下のような視点で見て課題解決につなげていきます。

  • 営業利益は出ているのか
  • 社員の生産性が下がる要因はなかったのか
  • 市場環境や経済情勢の急変はなかったのか
  • 目標設定に無理はなかったのか など

決算前や四半期ごとのタイミングで、財務指標を使って経営の成果を振り返り、課題を確認する流れを構築しておきましょう。

財務指標の分析結果を経営に反映させる方法を詳しく知りたい場合は、税理士に相談するのも1つの方法です。

4、自社の財務指標を知るなら税理士への相談がおすすめ

会計ソフトがあれば、財務指標をその場で計算できますが、財務指標の正確さや経営戦略に活かす方法を知りたい方も多いのではないでしょうか。

税理士に相談することにより、経営状況の分析結果に基づいたアドバイスが受けられ、企業の持続的な成長につながる経営戦略の作成が可能となります。

経費の計上方法や仕訳に関する指導も受けられるので、財務指標の正確さも高まるでしょう。

本章では、税理士に相談することで得られる、次の3つのメリットを紹介します。

  • さまざまな角度から企業の経営状況を分析
  • 月次の記帳指導を受けられる
  • 企業の成長につながるアドバイスも受けられる

(1)さまざまな角度から企業の経営状況を分析

税理士は税金だけでなく、財務会計のプロフェッショナルです。

決算書や毎月の試算表などの分析結果に基づき、企業の課題や将来の方向性などを経営者にアドバイスします。
経営者と話し合いながら経営戦略を作り上げ、一緒に企業の成長を目指すパートナーとしての一面を持つのも税理士の特徴といえます。

(2)月次の記帳指導を受けられる

税理士から月々の記帳指導を受けることで、月次の試算表の正確性が高まるだけでなく、スムーズな決算対応の実現も可能となります。

記帳指導を通じて、売掛金の入金状況や人件費の変動なども把握できるため、財務指標の信頼性が高まるのもメリットの1つです。
経費の計上方法についてもアドバイスを受けられるため、節税効果も生まれるでしょう。

(3)企業の成長につながるアドバイスも受けられる

税理士を通じて同業他社の情報を得ることにより、自社ならではの経営戦略づくりにも繋げられます。

市場や経済情勢の変化などに応じて、必要な時に相談できるのも経営者にとっては心強いでしょう。

税理士事務所によっては資金繰りや銀行融資に関するアドバイスをするなど、企業の成長をサポートをしてくれるところもあります。
経理戦略の推進に向けて、経営幹部向けの財務に関する講習会を開いている税理士事務所もありますので、探してみましょう。

まとめ

財務指標を活用することで、企業の規模や金額の大小にかかわらず、経営状況を的確に把握できます。

  • 収益性
  • 安全性
  • 活動性
  • 生産性
  • 成長性

以上の項目を分析したうえで、自社の経営課題を把握し、改善につなげる姿勢が大切です。

同業他社の状況も参考にしながら、自社ならではの優位性や収益を高めるための経営戦略に繋げましょう。

財務指標が正確なら、取引先や金融機関などからの信頼性も高まります。
税理士からの記帳指導やアドバイスを受けて、適正な会計処理を行い、こまめに財務指標を確認しながら、企業の持続的な成長を目指しましょう。

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この記事の監修者

荒井悠輔
荒井 悠輔

べリーベスト税理士事務所 経営企画室シニアマネージャー
株式会社ベリーベストサポートオフィス 代表取締役
資格の大原税理士講座簿記論講師、
文化服装学院ファッション流通高度専門士課タックスアカウンティング講師を務める。
筑波大学大学院において、法人税法及び国際税務を研究し、修了。
現在は経営企画、セミナー、講師、論文・記事の執筆を中心に活動を行っている。