BCP対策とは?コロナで導入が進む対策のメリット・策定方法について解説
BCP対策を自社でも検討したいけど、具体的にどんなものなのか、よく分からない……という方は少なくないのではないでしょうか。
新型コロナウイルスなどの影響を受けて、緊急事態でも会社の事業を継続させる「BCP対策」を導入する企業が増えています。
今回の記事では、
- BCP対策とは
- BCP対策を行う3つのメリット
- BCP対策の策定手順
- BCP対策で知っておきたいツール
について解説いたします。
この記事で、BCP対策についての理解が深まり、適切な会社経営へと繋げていただければ幸いです。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。
1、BCP対策とは
BCP(Business Continuity Planning)対策とは、災害などの緊急事態が発生した際でも、事業を継続できるようにする計画を講じることです。
BCP対策は、様々な緊急事態に対して、取引先とも連携しながら「事業を継続するためにするべきこと」を検討します。
具体的には、
- 緊急時でも、重要な事業を中断させない
- 中断しても、可能な限り短時間で復旧させる
- 取引先とも連携して、事業を存続させる
などを目的として、BCP(事業継続計画)を立てるのです。
BCP対策は、有事の際の「道しるべ」となる非常に重要な機能を果たすので、近年多くの企業で導入が進んでいます。
本章では、
- BCPを構成する4つの計画
- BCP対策における緊急事態の種類
- 防災・BCM・BCMSとの違い
について、解説します。
(1)BCPを構成する4つの計画
BCPは、主に以下4つの計画から構成されます。
BCPを構成する計画 | 内容 | 具体例 |
初動対応 | 被害を最小限に抑えるための計画。 | ・警察、消防への連絡 ・従業員の安否確認 ・被害状況の把握 |
仮復旧対応 | 初動対応後、一時的に業務を行うための計画。 | ・使用不能になった設備の代替 ・バックアップしたデータの差し替え ・仕入先の変更などの対応 |
本復旧対応 | 仮復旧後、平時の業務形態に戻す計画。 | ・建物の修復 ・電気水道などのライフラインの復旧 ・稼働チェック |
保守運用 | 上記3つの計画を円滑に行うための計画。 | ・緊急連絡先の更新 ・防災備蓄用品の買い替え ・対応計画の訓練 |
(2)BCP対策における緊急事態の種類
BCP対策では、緊急事態の種類によって、策定する計画が異なります。
具体的には、主に以下4つの緊急事態に対して計画を立てることが一般的です。
緊急事態の種類 | 検討する計画の例 |
自然災害 |
・人命救助、避難の方法 ・被害状況の確認 ・代替設備での事業継続方法 |
感染症、パンデミック (インフルエンザ、新型ウイルスなど) |
・感染防止対策 ・医療機関との連携 ・リモートで事業を行うためのシステムの導入 |
外的な人為要因 (取引先の倒産、サイバー攻撃など) |
・仕入先の分散化 ・変更先リストを策定 ・情報漏えい時の顧客への通知方法 |
内的な人為要因 |
・対応窓口の増設 ・クレーム対応用スクリプトの準備 ・自社内での処分方法 |
(3)防災・BCM・BCMSとの違い
BCP対策と似た言葉に、
- 防災
- BCM
- BCMS
があります。
それぞれの意味やBCP対策との違いについて、見ていきましょう。
①防災とは
防災とは、災害を未然に防ぎ、災害が発生した場合には、その被害の拡大を防ぐことです。
BCP対策との大きな違いは、対象と目的です。
対象 | 目的 | |
防災 | 自然災害 | 発生と被害拡大の防止 |
BCP対策 | 自然災害を含めた、全ての緊急事態 | 事業の存続 |
上記のことから、防災はBCP対策の一部であると言えます。
②BCMとは
BCM (Business Continuity Management)とは、BCPを効果的に運用・マネジメントすることです。
BCPはあくまで「計画」なので、作成してから放置されてしまうと、有事の際に計画通りに進められない可能性があります。
どんなにスペックの高いPCを導入しても、誰も使わなければ、意味がありません。
BCMの具体例としては、
- 定期的なBCPの訓練
- 新入社員へのBCPの研修
などが挙げられます。
BCMによって、社内全体にBCPを定着化させることが重要です。
③BCMSとは
BCMS(Business Continuity Management System)とは、より質の高いBCMを行うために「PDCAサイクル」などを用いる経営手法のことです。
会社を取り巻く環境は、日々大きく変化しています。
作成当時は効果的であったBCP対策も、日々の変化によって、その機能が低下する可能性があります。
定期的なBCPの社内訓練によって、見直すべきポイントが見つかるかもしれません。
上記のようなBCPやBCMの問題点を見つけ、現状に合わせて改善していく手法が、BCMSです。
2、BCP対策を行う3つのメリット
BCP対策を行うメリットには、主に以下3つがあります。
- 緊急時の倒産リスクを減らせる
- CSRに繋がり、企業価値を高められる
- 会社経営の見直しに利用できる
それぞれのメリットについて、見ていきましょう。
(1)緊急時の倒産リスクを減らせる
地震や感染症などの不測の事態が発生した場合、多くの企業では、通常の操業が困難になります。
緊急事態に対して、何も備えが無ければ、
事業の復旧が大きく遅れる
事業の縮小を余儀なくされる
などにより、倒産するリスクが大きく高まってしまうのです。
BCP対策を導入することで、緊急時でも中核事業の維持や早期復旧を図ることができます。
BCP対策は、事業を守り、従業員に安心して働いてもらうためにも、企業にとって重要な対策です。
(引用:中小企業庁 企業の事業復旧に対するBCP導入効果のイメージ)
(2)CSRに繋がり、企業価値を高められる
BCP対策を行うことでCSRに繋がり、外部からの信用を獲得し、企業価値を高めることが可能です。
CSRとは、企業の社会的責任のことです。
企業が自社の利益を追求するのみならず、自社の活動が社会へ与える影響に責任を持つことになります。
結果として、あらゆる利害関係者(※)からの要求に対して、適切な意思決定をすることを指しています。
(※消費者や取引関係先、投資家など)
BCP対策では、自社内だけでなく、取引先や自治体とも協力して計画を策定します。
外部と事前に調整をしておくことで、緊急時でもモラルのあるビジネスを行えるようになるのです。
CSRを果たすようなBCP対策を行うことで、
- 取引先
- 株主
- 消費者
などから「緊急時でも事業が継続できる、災害に強い企業」といった評価が得られます。
(3)会社経営の見直しに利用できる
BCP対策を行う上では、事業の見直しが必須になります。
事業を見直す過程で、
- 緊急時に、いち早く復旧すべき中核事業は何か?
- 関係する取引先は適切なのか?
- 事業が停止してしまった場合には、どれほどのリスクがあるか?
などを改めて検討することで、会社経営の見直しにも繋がるのです。
3、BCP対策の策定手順
BCP対策は、主に以下の手順で進めていきます。
- (1)中核事業を洗い出す
- (2)具体的なBCPの内容を決める
- (3)BCPのテストをする
- (4)BCPの維持・更新のサイクルを回す
各ステップの具体的な内容について、見ていきましょう。
(1)中核事業を洗い出す
まずは、「緊急時に継続し、早期復旧させたい、中核事業」を特定しましょう。
企業によって、重要の基準は異なりますが、
- 一番売上げを出している事業
- 業務が遅延した際に、損害が最も大きい事業
- 市場や会社の評価の維持に欠かせない事業
- などが中核事業になってきます。
一般的に、事業を評価する際には「ビジネスインパクト分析」を利用します。
ビジネスインパクト分析とは、個々の業務が災害などによって停止した場合に、事業へ与える影響度を分析する手法です。
ビジネスインパクト分析では、
- 最大許容停止時間:対象事業の中断について経営陣が最大譲歩することができる停止時間
- 目標復旧時間:対象事業をいつまでに復旧させるかの目安
- 目標復旧レベル:対象事業を復旧させたいレベル
- 目標復旧地点:対象事業についていつの時点のデータを復旧させるかの目安
を数値化し、事業に優先順位を付けます。
(2)具体的なBCPの内容を決める
中核事業を洗い出した後は、その事業の維持・復旧に必要な具体的な計画を決めましょう。
緊急時に、中核事業を維持・復旧させるには、
- 人的リソース
- 設備、施設
- 資金
- 指示系統
- 情報、セキュリティ
の5つの視点について、詳細な計画を立てることが効果的です。
(3)BCPのテストをする
具体的な計画を決めたら、
- 実際に計画が実行できるのか
- 事業の継続・復旧に効果的か
をテストしましょう。
一度で完璧な計画を作ることは難しいため、随時問題点の改善が必要になってきます。
テスト後は、策定したBCP対策について社員へアナウンスし、
- BCP対策の意義の説明
- BCP対策の訓練
- BCP対策の定着化
を行いましょう。
(4)策定したBCPの維持・更新のサイクルを回す
BCP策定後は、いつ緊急事態が発生しても、策定した計画を実行できるように、対策の維持・更新が重要になってきます。
BCP対策の維持・更新では、
- 必要な備品を点検、入れ替えの検討
- 定期的に従業員への教育を行う
- 取引先に大きな変更が生じるか確認する
- より効果的なツールを探す
などを行い、PDCAサイクルを回しながら、緊急事態に備えることが望ましいです。
4、BCP対策を効果的に進めるポイント
BCP対策を行う際には、以下のツールを活用することで、効果的な導入を図ることができます。
- 政府のBCP対策のガイドライン
- BCP対策をサポートするITシステム
(1)政府のBCP対策のガイドライン
政府では、企業のBCP対策を促進するため、以下のような様々なガイドラインを公開しています。
- 経済産業省「事業継続計画策定ガイドライン」
- 中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」
- 内閣府「事業継続ガイドライン」
厚生労働省が提供する「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」では、BCP対策についての解説動画を視聴できます。
初めてBCP対策を行う場合や、より詳しくBCP対策について知りたい方は、上記の資料を参考にしてみましょう。
(2)BCP対策をサポートするITシステム
BCP対策を行う上では、関係者への連絡体制や社内データの管理が非常に重要です。
緊急時でも利用できる、
- クラウドPBX
- オンラインストレージ
などのITシステムサービスを活用することで、スムーズな事業継続や復旧が期待できます。
①クラウドPBX
クラウドPBXとは、電話回線ではなく、インターネット回線によって電話機能(内線・外線・転送など)を利用できるサービスです。
クラウドPBXには、
- 場所を選ばずに電話環境を構築できる
- Webブラウザやアプリケーション上で簡単に設定できる
- インターネット回線があれば、災害時でも電話を利用できる
といった特徴があります。
②オンラインストレージ
オンラインストレージとは、インターネット上にデータを保管するサービスです。
クラウドストレージとも呼ばれます。
オンプレミス型サーバーでの情報管理は、情報漏えいを防ぎやすいですが、災害によって利用できなくなる可能性が高いです。
そのため最低限、事業継続に必要な情報はオンラインストレージを利用し、クラウド上にバックアップを保存することをおすすめします。
通常営業でも便利な、自動同期機能のあるサービスもあるので、BCP策定に合わせて、導入を検討してみましょう。
5、BCP対策など会社経営のお悩みは税理士に相談!
「緊急時に備えて、BCP対策を行いたいが、ゼロから始めるのは手間がかかる……」という方もいらっしゃるかもしれません。
安心して効率的なBCP対策を実現したい場合には、税理士へ相談することをおすすめします。
BCP対策などを行う際に、税理士に依頼することによって、以下のようなメリットが得られます。
- 中核事業の特定についてアドバイスしてもらえる
- 会社経営に関するアドバイスをもらえる
(1)中核事業の特定についてアドバイスしてもらえる
BCP対策では、中核事業の特定が非常に重要になってきます。
中核事業の特定を誤ってしまうと、その後に立てる計画の効果も薄くなり、会社の存続に大きく影響してしまいます。
会社にとって本当に重要な事業を見極めるためには、社内の視点だけでなく、外部の視点を取り入れることが効果的です。
外部の情報にも精通している税理士に相談することで、効果的な中核事業の特定が期待できます。
(2)会社経営に関するアドバイスをもらえる
会社経営は、「適切な資金繰りを行えるかどうか」によって、大きく左右されます。
しかし、会社の資金に関する法律や法令は複雑であり、誤った手続きをしてしまうことによって、無駄なコストが掛かってしまった……なんてこともあるかもしれません。
自社にとって一番無駄なく、最適な会社経営を検討されているなら、会計と税金のプロである税理士に相談することをおすすめします。
まとめ
今回は「BCP対策」について、解説しました。
BCP対策は、緊急時にいち早く中核事業を復旧させることで、倒産リスクを大幅に減らす重要な計画です。
BCP対策を行うことは、緊急時への対応スピードだけでなく、会社の信用を高め、会社経営の改善にも繋がります。
政府が公開しているガイドラインや、さまざまな情報ツールを活用し、効果的なBCP対策を検討してみることをおすすめします。
また、税理士に相談することで、緊急時にも動じない経営状態の構築を図ることができます。
より質の高い会社経営を検討している方は、気軽に税理士へ相談してみましょう。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
初回のご相談は無料ですので
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。