株主名簿を作成する企業が知っておきたい3つのポイント
「株主名簿」とは、どのような内容を記載すべきなのだろう……。
初めて株式会社を設立した場合、株主名簿をどのように作成すべきかわからない……という企業も少なくないのではないでしょうか。
今回は、
- 株主名簿の目的
- 株主名簿に記載する内容
- 株主名簿の管理方法
などについて、べリーベスト税理士事務所が紹介していきます。
本記事が、これから株主名簿を作成する方々の参考になれば幸いです。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。
1、株主名簿とは
「株主名簿」とは、株式の発行会社が、株式会社設立時に必ず作成する書類の1つです。
株主を把握するための書類で、会社法では、全ての株式会社が設立時に作成し会社で常時保管することを義務づけています。
(1)株主名簿作成の目的
「株主名簿」作成の目的は、株主情報の管理と株主権利の保護です。名簿を作成することで、会社は株主が誰であるかを把握することができ、株主は自分の権利を主張できます。
①株主名簿の作成・管理義務
「株主名簿」の作成・管理は、会社法に定められた義務であり、違反すれば罰則対象です。
例えば、「株主名簿」に記録すべき事項を記載しなかった場合、100万円以下の罰則があります。
②株主の把握と紛争リスク予防
会社の株式を保有する株主を正確に把握し、管理することは、株主の権利について、株主から誤った主張をされるリスクを減らすためにも有効です。
株主を正しく把握していなかったり、名簿の更新をせず放置したりした場合、株主でない第三者から「株主の変更があった」などと主張され、トラブルになるようなケースもあります。
(2)「株主リスト」との違い
株主の情報管理と株主の権利を保護するものとして、「株主名簿」の他に「株主リスト」があります。
「株主名簿」と「株主リスト」は似て非なるものですが、記載内容が重複するため、「株主名簿」が正しく作成されていれば「株主リスト」の作成は容易です。
株主リストは、会社の株主の情報が記載された登記用の書類で、必要に応じて作成することになります。
具体的には、商業・法人登記を悪用した犯罪や、違法行為を未然に防ぐために、作成を義務付けられています。
登記申請する際に、法務局に提出する書類です。株主リストは、以下の場合に提出が必要となります。
- 登記すべき事項につき株主総会の決議(種類株主総会の決議)を要する場合
- 登記すべき事項につき株主全員の同意(種類株主全員の同意)を要する場合
(3)「株主名簿記載事項証明書」とは
株式を譲渡する際に株券を発行している会社は、株券の引渡しを行うことで、株式の所有を証明できます。
一方、株券を発行しない会社は、株券自体の引渡しが行えません。
譲渡する側が株券の所有者であることを証明するためには、「株主記載事項証明書」を発行する必要があります。
「株主記載事項証明書」は、「株主名簿」の記載事項が記入されたもので、代表取締役の署名や記名押印が必要です。
株主から「株主名簿記載事項証明書」の発行を請求された場合には、会社は速やかに作成し発行する義務があります。
2、株主名簿の記載項目
株主名簿には、以下の項目を記載します。
- 株主の氏名または名称
- 株主の住所
- 株主が所有する株式数・金額
- 株主が所有する株式の種類とその数
- 各株主が株式を取得した日付
- 株券の番号
- 役職名及び当該法人の役員または他の株主などとの関係
(1)株主の氏名または名称
株主が個人の場合には、氏名を記載します。法人の場合には、法人名を記載します。
(2)株主の住所
法人の場合には、法人の本社所在地を記載します。
(3)株主が所有する株式数・金額
株主ごとに所有している株式の数と、その金額について記載します。
株式の数は、その後の配当金の分配や議決権の行使などに関わってきますので、非常に重要です。
(4)株主が所有する株式の種類とその数
株式の種類が複数ある会社では、株式の数だけでなく、株式の種類も明記しなければなりません。
主な株式の種類は、
- 普通株式
- 優先株
- 劣後株
となります。
スタートアップ時の資金調達では、事業の成長フェーズによって、優先株式の内容が、
- シード
- シリーズA
- シリーズB
- シリーズC
などの種類に分けられます。
(5)各株主が株式を取得した日付
株主からの代金の払い込みが完了した日を取得日とするのが、一般的です。
会社設立時に作成する「株主名簿」には、会社設立日を記載します。
設立以降は、増資などを繰り返すことで取得日が異なる株主が増えるため、正確に明記する必要があります。
(6)株券の番号
株券を発行している場合には、株券の番号も記載が必要です。
近年では、株券の電子化により、株券(紙に印刷されている株券)を発行しない株券不発行会社が多くなりました。
株券を発行していない場合には、備考欄に「株券不発行」と記載します。
(7)役職名及び当該法人の役員または他の株主などとの関係
「代表取締役」や「取締役」といった役職名を記載します。親族が株主の場合には、間柄を記載します。
(8)その他
株主の住所以外にも、実務上は連絡先としてメールアドレスなども記載しておくと便利です。
3、株主名簿の管理におけるポイント
株主名簿の管理において知っておきたい4つのポイントを解説します。
(1)作成・管理は株主名簿管理人に委託することも可能
「株主名簿」の作成・管理は、自社で行うことも可能ですが、株主名簿管理人へ委託することもできます。
株主名簿管理人は、「株主名簿の作成」や「株主名簿の保管」などの株式事務の全般を行います。
(2)株主名簿は原則本店で保管
会社法に基づき、「株主名簿」は会社の本店で保管しなければなりません。
しかし、株主名簿管理人(会社が信託銀行や証券代行会社)に株式管理を委託している場合には、その管理人および管理会社の営業所に保管することも可能です。
(3)株主や債権者は株主名簿の閲覧が可能
株主および債権者は、会社の営業時間内ならいつでも、請求の理由を明らかにして「株主名簿」の閲覧やコピーの請求をすることができます。
請求があった場合は、会社側には速やかに対応する義務があります。
(4)株主名簿に変更があったら更新する必要あり
以下の場合は、会社は「株主名簿」の記載内容を速やかに変更しなければなりません。
- 株主から、住所変更の連絡があった場合
- 株主から、相続や譲渡などでの名義書換の請求があった場合
まとめ
今回は、「株主名簿」について解説しました。
株主名簿は、株式会社の設立時に作成し、その後も保管義務がある重要な書類です。
一度作成した後も、事業年度末や株主総会前など、定期的に「株式名簿」の見直しを行い、更新漏れがないかチェックするようにしましょう。
「株主名簿」をきちんと管理し、株主の状況を適宜把握することが、「健全な経営」と「株主との信頼関係の構築」につながります。
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