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TAX&ACCOUNTING MALL経理/会計粉飾決算とは?不正行為が起こる理由と罰則について解説
2022.7.20 / 更新日:2022.07.20

粉飾決算とは?不正行為が起こる理由と罰則について解説

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「粉飾決算」という言葉をご存知でしょうか?
テレビのニュースや新聞等で、見かけた方もいらっしゃるかもしれません。
最近では、着物店の「はれのひ」が、粉飾決算でニュースになっていました。

粉飾決算は、重大な不正行為であり、摘発されると厳しい罰則もあります。

「粉飾決算とはいったいなに?」
「粉飾決算ってなんで起こるの?」

今回は、上記のような疑問にお答えするために、

  • 粉飾決算とは?
  • 粉飾決算が起こる理由
  • 粉飾決算の罰則
  • 粉飾決算をしないためには?

について解説します。

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1、粉飾決算とは?

まずは、「粉飾決算」とは何なのか解説していきましょう。
今回は、粉飾決算の概要について、以下の3つを解説します。

  • 粉飾決算とは
  • 粉飾決算はどのようにして行われるのか
  • 粉飾決算を見抜く方法

(1)粉飾決算とは

粉飾決算とは、不正な会計処理を行い、事実とは異なる決算書を作成することです。
経営成績や財務状況を良好に見せるために、意図的に財務諸表を操作することがあります。
一方で、経営成績や財務状況を過小に見せるために、意図的に財務諸表を操作することも粉飾決算の1つです。これは、「逆粉飾決算」とも呼ばれます。

粉飾決算は、重大な不正行為であり、摘発されると厳しい罰則が課せられます。
大企業や中小企業に関わらず、粉飾決算が摘発されれば、多くの関係者に迷惑をかけることはもちろんのこと、会社の信用を失い、経営破綻に追い込まれることも少なくありません。

(2)粉飾決算はどのようにして行われるのか

粉飾決算は、「売上」と「経費」の2つを操作をすれば行われます。
本項では、通常の粉飾決算と、逆粉飾決算の両面からどのように行われるのか解説します。

①粉飾決算

粉飾決算の場合は、「売上を増やす」「経費を減らす」といった2つの不正操作で行われます。
子会社などのグループ企業を利用して架空の売上を計上したり、架空の在庫を意図的に計上して利益を増やしたりする操作などが多いです。

②逆粉飾決算

一方で、逆粉飾決算の場合は、「売上を計上しない又は減らす」「経費を増やす」といった操作です。

子会社から架空の売上ではなく架空の仕入れを計上する方法や、手持ちの在庫を意図的に隠して利益を減らす方法があります。

(3)粉飾決算の事例

本項では、どのような粉飾決算の事例があるのか、実際にニュースで報じられた2社を取り上げて紹介します。

①「はれのひ」事例

かつて存在していた「はれのひ」は、着物の販売やレンタル業を行う着物店で、2018年の成人式を直前にして営業を取りやめました。
そんな着物店である「はれのひ」ですが、架空の売上高を計上して、金融機関から約6億円の融資を受けていたことが判明しています。
処分として、同社の元社長が逮捕され、懲役2年6ヶ月の実刑判決が出ました。

②「オリンパス」事例

オリンパスは、日本の代表的な光学機器・電子機器メーカーであり、2011年に粉飾決算が発覚する「オリンパス事件」と呼ばれる事件がありました。
オリンパスは、大きな損失があるにも関わらず、債務を決算書に記載せず、10年間もの間損失を隠してきました。

上記の事件の影響で、会長は辞任、関係した経営陣にも厳しい処罰が与えられています。
会社としても、株価は2400円から424円と急落し、上場廃止の危機に陥りました。

2、粉飾決算が起こる理由

ここまで粉飾決算の概要について解説しましたが、「なぜそんな不正行為をするの?」と疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。
粉飾決算が起こる背景には、様々な理由があります。
本章では、粉飾決算が起こる理由を解説していきます。

(1)融資

粉飾決算を行う目的として代表されるのが、「融資」です。
金融機関が融資を実行するか判断する際に、決算書が大きな審査基準の1つになります。
粉飾決算によって、経営状態をよく見せることで、金融機関から融資を引き出すことができるのです。

また、金融機関は決算書によって融資額や利率も決定することができます。
粉飾決算を行うことにより、「融資額を上げる」「利率を下げる」ということも可能です。

(2)税金

税金面の目的で行うのは、「逆粉飾決算」です。
実際の利益より意図的に過小に操作する目的には、「納税額を減らしたい」という背景があります。

法人税であれば、利益に必ず税金が課されます。経営者としては、生み出した利益に税金をかけられたくないと言うのが本音でしょう。
粉飾決算によって、赤字決算にすることで、利益に課される法人税を支払う必要がなくなります。

(3)株価

上場企業には、株価や上場維持の目的で粉飾決算を行うケースがあります。
粉飾決算を行うことで、業績が良好であると見せかけることで、株価の上昇が期待できるでしょう。

また、債務超過は、上場廃止になる危険性があり、上場を維持するために粉飾決算に手を染めてしまう企業もあります。

3、粉飾決算の罰則

粉飾決算は、重大な不正行為であり、摘発されると厳しい罰則が課されます。
今回は、粉飾決算をした場合どんな罰則があるのか詳しく解説します。

(1)懲役・罰金

粉飾決算を行うと、懲役刑や罰金刑などの刑事責任に問われます。
実際に問われる刑事責任は、以下のようなものが挙げられます。

①違法配当罪(会社法第963条)

粉飾決算によって違法配当を行った取締役等は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金又は両方が科されます。

②特別背任罪(会社法第960条)

粉飾決算によって取締役等が、自己又は役員や株主の利益を図り、会社に損害を与えた場合は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金又は両方が科されます。

③有価証券報告書虚偽記載罪(金融商品取引法第197条)

企業の実態を開示する有価証券報告書の重要事項について、虚偽の記載があった場合、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金又は両方が科されます。

④銀行に対する詐欺罪(刑法246条2項)

粉飾決算によって虚偽の決算書を提出し、銀行から融資を受けた場合、詐欺罪に問われる可能性が生じます。

(2)損害賠償

粉飾決算をした場合、民事責任に問われて、損害賠償を被ることがあります。
実際に問われる民事責任は、以下のようなものが挙げられます。

  • 会社法第462条
  • 会社法第429条
  • 金融商品取引法第24条の4
  • 債権者からの損害賠償請求

①会社法第462条

取締役等が、粉飾決算によって違法に利益を受け取った場合は、違法に受け取った利益に相当する金銭を支払う賠償責任を負います。

②会社法第429条

取締役等が、決算書に虚偽の記載をし、粉飾決算によって第三者に損害が生じた場合、その人物は第三者に対して損害賠償責任を負います。

③金融商品取引法第24条の4

取締役等が、有価証券報告書の重要事項について虚偽の記載を行い、その事実を知らずに有価証券を取得した者に損害が生じた場合、損害を被った者に対して損害賠償責を負います。

④債権者からの損害賠償請求

粉飾決算を行っていた会社が倒産し、債券の回収が困難となった場合、銀行や債権者から取締役等に対して損害賠償請求をされることもあります。

粉飾決算は、懲役刑や罰金刑、損害賠償などに加えて、加算税や上場廃止など影響は多岐にわたります。
株主などのプレッシャーに追われても、粉飾決算には手を染めないようにしましょう。
次章では、粉飾決算をしないためのポイントを紹介します。

4、粉飾決算をしないためには?

粉飾決算は、重大な不正行為であり、摘発されれば厳しい罰則があります。
しかし、経営者や取締役等の一存だけで、粉飾決算に手を染めるケースも少なくありません。
そこで、会社として粉飾決算に手を出さないためにはどのような対策を取ればいいのか、3つのポイントを紹介します。

(1)社内で監視体制を強化

経営者や取締役または担当者のみが、さまざまなことができるような状態になれば、不正会計が行われる可能性は高くなります。

そのため、他部署の社員や管理部門など周りの方がチェックする仕組みが必要です。
監視体制を強化すれば、一存で不正会計に手を染めるケースは少なくなるでしょう。

(2)ツールを使う

突然、資金調達が必要になり、金融機関から融資のために粉飾決算をしてしまうケースも考えられるでしょう。
会計ソフトを使って、事前に粉飾決算をしないための対策をとることも重要です。

会計ソフトは、日々の資金繰りが可視化できるので、突然お金が必要になって慌てることがなくなるでしょう。

会計ソフトを使って、資金調達の適切なタイミングを図ることによって、事前に粉飾決算を防ぐことができるでしょう。

(3)税理士を使う

会計ソフトを利用しても、会計に基づく適切な経営判断ができるのかどうか不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そのような場合には、税務のスペシャリストである税理士に依頼してみましょう。
税理士に依頼すれば、会計に基づく経営判断の助言を受けられるので、早い段階で対策を提案してもらうことができます。

また、税理士を利用することにより、社外の監視体制も強化することができます。
いつでも相談できる税務のスペシャリストがいれば、追い詰められて粉飾決算に手を染めることも少なくなるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は、粉飾決算について解説しました。

会社経営においては、銀行や株主、取引先など、事業に携わる利害関係者が存在します。
粉飾決算は、利害関係者を裏切る行為ですので、絶対に手を出してはいけません。

健全な経営を行っていくためにも、「4、粉飾決算をしないためには?」で紹介した3つのポイントを実践してみてください。

 

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この記事の監修者

荒井悠輔
荒井 悠輔

税理士法人ベリーベスト 経営企画室シニアマネージャー
株式会社ベリーベストサポートオフィス 代表取締役
資格の大原税理士講座簿記論講師、
文化服装学院ファッション流通高度専門士課タックスアカウンティング講師を務める。
筑波大学大学院において、法人税法及び国際税務を研究し、修了。
現在は経営企画、セミナー、講師、論文・記事の執筆を中心に活動を行っている。