ビジネスデューデリジェンスとは?企業担当者が知りたい3つのこと
ビジネスデューデリジェンスとはどのような目的があるのだろう……。
ビジネスデューデリジェンスの仕組みについて知りたい……。
デューデリジェンスのなかには、ビジネスデューデリジェンス(事業デューデリジェンス)といった、対象企業の事業実態を把握するための調査があります。
今回は、
- ビジネスデューデリジェンスの目的
- ビジネスデューデリジェンスの分析手法
- ビジネスデューデリジェンスの流れ
について、ベリーベスト税理士事務所が分かりやすく解説します。
この記事が、ビジネスデューデリジェンスをご検討されている企業担当者様の参考になれば幸いです。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。
1、ビジネスデューデリジェンスとは
まずは、ビジネスデューデリジェンスとはどういうものなのかについてみていきましょう。
(1)ビジネスデューデリジェンスの概要
ビジネスデューデリジェンスは、M&Aにおいて、買い手(譲受企業)が、企業価値算出のために対象企業の収益力や事業戦略を調査・分析し、将来性を見極めることです。
(2)ビジネスデューデリジェンスの目的
ビジネスデューデリジェンスの目的は、次の2つです。
- ビジネスモデルの把握
- 経営統合(PMI)後のシナジー効果の把握
①ビジネスモデルの把握
まず、対象の買収・譲渡企業が、
- どのような事業環境の中でビジネスをしているか
- 業界の中や競合他社との関係においてどのようなポジションなのか
などを理解することで、ビジネスモデルとその収益構造を把握します。
そのうえで、対象企業を取り巻く外部・内部環境を分析し、
- それらがどのように収益に影響を与えるか
- どの程度の相関があるか
などを知ることが重要です。
具体的に、外部環境と内部環境をどのように分析するのかについては、次章「2、ビジネスデューデリジェンスでの分析手法」で解説します。
②経営統合(PMI)後のシナジー効果の把握
M&Aの目的は、買収または合併によって企業間のシナジー効果を引き出すことにあります。
ビジネスデューデリジェンスでは、統合する事業同士の相性などを分析し、
- M&Aによってどれくらいのシナジーが生じるのか
- リスク程度はどのくらいか
- 企業価値は向上するのか
などの統合効果の見積もりが必要です。
ビジネスデューデリジェンスを行うことで、統合後に取り組む課題やポイントを事前に明確にできるため、M&A実施後の事業シナジーを効率よく生み出すことも可能となります。
2、ビジネスデューデリジェンスでの分析手法
では、ビジネスデューデリジェンス実施にあたって、具体的にはどのように分析を進めればよいのでしょうか?
ビジネスを取り巻く経営環境を知るためには、「外部環境」と「内部環境」の分析を行っていきます。
本章では、ビジネスデューデリジェンスの具体的な分析手法について解説します。
(1)外部環境分析
外部環境とは、買収・譲受対象となる企業や事業を取り巻くさまざまな環境のことで、自社でコントロールできない外部要因の分析です。
外部環境を分析することにより、その業界の将来性や競合他社について理解できるようになります。
分析は、「PEST分析」と「5フォース分析」という代表的なフレームワークを使って整理することで、マクロ視点で対象企業に影響を与える要因を整理することができます。
① PEST分析
PEST分析とは、事業を取り巻くマクロ環境を分析するもので、さまざまな事業分析の大前提となります。
- Politics(政治的要因)
- Economy(経済的要因)
- Society(社会的要因)
- Technology(技術的要因)
の頭文字を取って、「PEST」と名付けられています。
政治的要因 | 法律や条例、規制緩和など政府的な動き全般を指します。
政治的な変化は、国内外を問わず、市場ルールそのものを変えてしまうことがあるため、ビジネスへの影響が大きくなります。 |
経済的要因 | 景気動向や雇用、物価、金利、為替などの経済的な動き全般を指します。
グローバル社会においては、各国の成長率や金利の変化、諸外国との需要と供給のバランスなど、国際社会にも目を配ることが重要です。 |
社会的要因 | 少子高齢化などの人口動態や社会的流行などを指します。
社会的要因は、消費者の価値観を変化させ、働き方や生き方、消費の仕方などライフスタイル全般に影響を与えます。 |
技術的要因 | 新技術の開発や普及、進歩などは、新たなニーズを生みだし、新たな市場が生まれます。
既存の市場にも大きな影響を与え、チャンスであると同時にリスクになることもあります。 |
②5フォース分析
5フォース分析(Five Forces Analysis)とは、アメリカの経済学者マイケル・ポーターが提唱したフレームワークで、業界構造と競争要因を知るための分析手法です。
競争要因には以下の5つがあり、それぞれの力関係から、どの程度対象企業の収益性に脅威を与えるものかを見ていきます。
- 業界への新規参入の脅威
- 競合の脅威
- 代替品の脅威
- 売り手(供給者)の交渉力
- 買い手(顧客)の交渉力
それぞれの競争要因の詳細は、以下のとおりです。
業界への新規参入 の脅威 |
新規参入者の脅威の度合いは、新規参入コストの高さによって決まります。 コストが高いということは参入障壁となり、将来競合となりうる新たな企業の参入抑制につながります。それにより、対象企業へのマイナス影響も小さくなります。 参入障壁になりうるのは、以下の特徴がある業界や市場です。・規模の経済が効く業界は大規模な投資が必要 ・規模に無関係なコスト優位性がある(ノウハウ、特許、技術など) ・製品差別化ができている=購入者のスイッチングコストが高い ・ブランドが浸透している ・業界内の流通チャネルが限定的・閉鎖的である ・設備投資が巨額である ・政府による参入規制などが設けられている など |
競合の脅威 | その市場において、企業間の競争が激しいかどうかで、脅威の程度をみていきます。競争が熾烈化する業界の特徴として挙げられるのは、以下の通りです。
・競合企業が多数存在する |
代替品の脅威 | 競合の代替品の発売によって、対象企業の収益性が下がる要因となるものが「代替品の脅威」です。 もし競合が、消費者ニーズを満たすことができるような対象企業の製品・サービスを発売した場合、顧客を奪われる脅威があります。 さらに、価格が安価であれば脅威は高まり、対象企業の既存製品の収益を下げる要因になります。 |
売り手(供給者) の交渉力 |
供給者が以下に該当する場合は、供給者が優位な立場に立てることから、仕入価格が高くなる可能性が高く、対象企業の収益性が悪化する要因になります。
・供給が少数の企業で支配あるいは独占されている(寡占状態) 対象企業が、供給者にとって重要な顧客でない場合も当てはまります。 |
買い手(顧客) の交渉力 |
顧客が以下に該当する場合も、その業界における企業の収益は悪化します。
・購入者が少なく、ニーズも少ない さらに購入者が法人で購買力が大きい場合、対象企業に対しボリュームディスカウントなどの圧力がかけやすいため、対象企業の価格交渉力が弱くなります。 |
(2)内部環境分析
内部環境とは、買収・譲受対象となる企業や事業の内部環境のことで、対象企業でコントロール可能な内部要因の分析です。
具体的には、
- 事業の市場規模
- 市場占有率
- ノウハウ
- 営業力
などを分析することで、その企業や事業における強みや弱みを把握し対策を立てることができます。
① VRIOフレームワーク
VRIOフレームワークは、対象企業の経営資源(資源や情報など)が、市場でどのくらいの価値があるかを分析する際に用いられます。
VRIOとは、以下の頭文字からきているものです。
- Value(経済価値)
- Rarity(希少性)
- Inimitability(模倣困難性)
- organization(組織)
企業が従事する活動に関して、以下4つの問いに答えることで、対象企業の強みや弱みを把握できます。
- 経済価値(value)はあるか
- 希少性(rarity)はあるか
- 模倣困難性(inimitability)はあるか
- 組織(organization)はどうか
具体的には、それぞれ以下のような点を確認します。
経済価値(value) はあるか |
その企業の保有する経営資源には、経済的価値があるかどうかを確認します。 |
希少性(rarity) はあるか |
その企業の保有する経営資源は、他社にはない(あるいはごく少数の競合企業しか保有していない)価値であるかどうかを確認します。 |
模倣困難性(inimitability) はあるか |
他社が模倣できない(あるいは模倣するには莫大なコストがかかるような)価値かどうかを確認します。 模倣を困難とする要因は、主に以下の4点です。
|
組織(organization) はどうか |
経営資源を最大限に活かせる組織になっているかどうかを確認します。具体的には、業務フローや指示命令系統、報酬体系などが適切かどうか等です。 |
②バリューチェーンモデル
バリューチェーンモデルとは、競争優位を生じさせる可能性がある経営資源を特定する方法です。
「バリュー(価値)」と「チェーン(連鎖)」という意味で、「価値連鎖」とも呼ばれています。
顧客の手に商品が届くまでに、どのように価値やコストが加わるのかを表すものです。
まず、企業の活動を「主要活動(仕入れから生産)」と「支援活動(生産から消費者に渡るまで)」の2つに分類します。
次に、それぞれにかかるコスト・価値・つながりを分析し、価値を評価します。
以上のようなフレームワークを活用することで、どの活動が重要なのか、どこに競争優位が見られるのかがわかるのです。
<主要活動>
- 購買・資材・物流
- 製造
- 製品の出荷・保管・物流
- 営業・販売・マーケティング
- 顧客へのサービス
<支援活動>
- 全般管理(経営・財務・経理・企画など)
- 技術開発(研究・開発・デザイン)
- 人的資源管理・開発(人事・労務)
3、ビジネスデューデリジェンスの流れ
次に、実際にビジネスデューデリジェンスはどのような流れで行われるのかについて解説します。
ビジネスデューデリジェンスでは他の調査とは異なり、対象企業から開示された資料などの調査だけでなく、以下のような調査についても行う必要があります。
- 対象企業の現地調査やインタビュー
- 取引先や競合他社へのインタビュー
以上のことからも、限られた日数とコストの中で最大限の効果を発揮するため、あらかじめ次のように調査の流れをしっかりと決めておきましょう。
- 社内の調査チームを編成し、専門業者への依頼も検討する
- 調査範囲を決める
- 対象企業への資料請求リストの作成・提出依頼
- 開示資料の調査(確認・分析)
- インタビュー、質疑応答、現地調査などの実施
- 分析結果をまとめ、企業/事業価値と、統合後のシナジー効果を算出
まとめ
今回は、数あるデューデリジェンスの中でも、事業に特化した「ビジネスデューデリジェンス」について解説しました。
ビジネスデューデリジェンスによって、今後のビジネスチャンスと統合後のシナジー効果を見積り、自社の戦略との整合性などを総合的に判断しましょう。
正しいビジネスデューデリジェンスが行われることで、自社にとって正しい企業価値を算出することが可能になります。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
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