べリーベスト税理士事務所がお届けする企業経理・税務に関する情報メディア

TAX&ACCOUNTING MALL経理/会計役員退職金を法人生命保険で準備するために知りたい4つのポイント
2022.10.14 / 更新日:2022.12.08

役員退職金を法人生命保険で準備するために知りたい4つのポイント

LINE
Facebook
Twitter
このエントリーをはてなブックマークに追加

役員退職金を生命保険で準備するためには、具体的に何から準備すればよいのでしょうか。
役員退職金の準備方法は複数ありますが、従業員の保険と異なり、法人の生命保険を活用することで節税しながら積み立てることも可能です。

この記事では、中小企業の経営者や役員が、退職金を準備するための保険の種類、メリット・リスクなどを、べリーベスト税理士事務所が分かりやすく解説していきます。

税理士の相談随時受付中
当サイトの記事をお読み頂いても問題が解決しない場合には
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。

お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。
営業時間:平日10:00〜17:00 / メール受付24時間
実績豊富なべリーベスト税理士事務所が監修!法人税ガイド無料配布

1、役員退職金を生命保険で準備する方法を知る前に|そもそも「役員退職金」とは

まずは、役員退職金がどのようなものなのかについてみていきましょう。

(1)役員退職金の定義

役員退職金とは、退職をした役員に対して会社が支払うお金のことで、一般従業員の退職金の場合は就業規則の退職金規程に基づいて支給します。役員退職金を支給するには定款に定めるか、株主総会の決議が必要です。

(2)役員退職金の種類

役員退職金には、「退職慰労金」と「死亡退職金」の2種類があります。「退職慰労金」とは、取締役や監査役などの役員が退任する際に支払われるもので、勤続年数や功績などに応じて金額が計算されます。

「死亡退職金」は、遺族の生活や相続税の支払いを保証するためのものです。

(3)役員退職金を準備する方法

役員退職金を準備する方法としては、以下のようなものがあります。

  • 預金
  • 有価証券
  • 不動産投資

役員に対して十分な退職金を支払うことにより、会社の財政が圧迫される事態を招いてしまうのは問題でしょう。

例えば、銀行積立などで退職金の準備をする場合、退職金支払い時に多額の損失を計上することになるため、経営状況によっては赤字になるリスクもあります。
そこで、計画的に役員退職金を準備をするための方法として「法人生命保険」を活用する会社が増えてきています。

2、 生命保険で役員退職金を積み立てるメリット・デメリット

昨今では、役員退職金を法人生命保険の解約返戻金で支払う会社が増えてきています。
法人の生命保険加入によって、役員退職金を積み立てながら節税ができ、さらに事業の資金確保などができる可能性が高いからです。

本章では、実際に法人生命保険で役員退職金を準備した場合に得られるメリットとデメリットについてご説明いたします。

(1)メリット

先々の退職金を準備しながら、不測の事態にも備えることができる点が、法人保険の大きなメリットといえます。

具体的には、以下のような点です。

  • 計画的に退職金を準備できる
  • 節税効果を期待できる
  • 緊急時の資金確保として活用できる

①計画的に退職金を準備できる

一定額を毎月継続してかけ続けることにより、将来の退職金原資を確実に貯めることができます。

②節税効果を期待できる

法人保険は、保険料の一部を損金に計上することができるので、節税効果を期待できます(どれくらいの節税効果があるかは加入する保険商品によります)。
利益の圧縮は、自社の株価を抑えることにもつながりますので、事業継承時や相続時の相続税減税に対してもメリットがあるといえるでしょう。

③緊急時の資金確保として活用できる

保険には「契約者貸し付け」という制度があり、法人保険に加入をしている間、解約返戻金の90%を限度として無担保・無審査で貸付を受けられます。

万が一、緊急で資金不足に陥った際には、緊急時の資金として利用することができます。

(2)デメリット

 生命保険で役員退職金を積み立てるデメリットとして、以下のようなリスクが挙げられます。

  • 短期解約の元本割れリスク
  • 不相応に高額な掛け金が資金繰りを悪化させるリスク
  • 税務調査で否認され損金算入できないリスク

①短期解約の元本割れリスク

法人生命保険を契約してから早期に解約すると、ほぼ確実に元本割れを招くことになります。緊急事態で止むなく解約する場合を除き、継続して積み立てていくことが重要です。

②不相応に高額な掛け金が資金繰りを悪化させるリスク

保険料が不相応に高額の場合、キャッシュフローが悪化し、財務状況が悪化するリスクがあります。
常に事業が好調であり続ける保障はないため、加入前に掛け金の額を慎重に検討することが必要です。

③税務調査で否認され損金算入できないリスク

役員退職金の支給額は、会社が自由に決めることができます。
税務署税務署が調査などにおいて、役員退職金の額が不当に高額であると判断し否認した場合は、役員退職金の額が損金に算入できなくなる可能性があります。

3、法人生命保険で役員退職金を準備するための保険の種類

では、具体的に中小企業が役員退職金を準備するのに利用しやすい保険には、どのようなものがあるのでしょうか。

代表的な保険は、以下の3つです。

  • 小規模企業共済
  • 逓増定期保険(短期間での退職金積立をしたい場合)
  • 長期平準定期保険(長期間かけての退職金積立をしたい場合)

小規模企業共済は、国の機関が運営している制度で、逓増定期保険と長期平準定期保険は、役員退職金に使うことができる法人保険です。

(1)小規模企業共済

小規模企業共済は、個人事業主や会社等の役員(※)が個人として加入し、会社が掛け金相当分を役員報酬に上乗せして支給するものです。
掛け金分を所得から控除することができるため、実質的には会社の損金とすることが可能となります。

ただし、変更した役員報酬を損金に算入するためには、事業年度開始から3か月以内に株主総会などで決定し、議事録を作成・保管しておく必要があります。

(※)「会社等の役員」とは、株式会社・有限会社の取締役または監査役の方、合名会社・合資会社・合同会社の業務執行社員の方を指します(ただし外国法人の役員は除く)。

①小規模企業共済のメリット

小規模企業共済では掛け金が運用されるため、長期間掛け金を支払うことで、共済金が増える可能性があります。役員等が掛け金を支払うと、その全額がその年の所得から控除され、掛け金の分には所得税が課税されません。

また、契約者貸付制度が利用でき、借入限度額は掛け金の7~9割程度です。これにより急な出費に対応可能です。

③小規模企業共済のデメリット

加入後約20年経たずに解約した場合に受け取れる共済金は、掛け金合計額を下回ります。掛け金を減額した場合は、減額以前に積み立てた掛け金との差額は運用がストップすることになるため、最初から無理のない掛け金を設定する必要があります。

(2)逓増(ていぞう)定期保険

逓増定期保険とは、保険期間の経過により保険金額が5倍までの範囲で増加する定期保険です。

支払保険料は、期間の経過に応じて、

  • 1/3損金算入
  • 1/2損金算入
  • 全額損金算入

と定められており、短い期間での退職金を積立てることができます。

①逓増定期保険のメリット

逓増定期保険のメリットとしては、保険料の一部を損金に算入しながら退職金を準備できたり、退職金支給時に大きな赤字を計上するのを避けられたりすることが挙げられます。

また、契約者貸付を利用できるため急な出費に対応できることも特徴です。

②逓増定期保険のデメリット

一方、逓増定期保険のデメリットとしては、保険料が比較的高額の場合に会社のキャッシュフローを圧迫するおそれがある点が挙げられます。

解約の時期によっては、解約返戻金が掛け金相当額を下回ったり、解約の時期と退職の時期がずれると益金が増えたりすることもあるので注意が必要です。

(3)長期平準定期保険

長期平準定期保険は、他の法人保険と比較して保障を受けられる期間が長い保険をいいます。

貯蓄型保険と比較すると保険料は割安に抑えられており、高額な死亡・高度障害保険金額を設定することも可能です。また、支払保険料の1/2を損金に算入することができます。

①長期平準定期保険のメリット

長期保険なので、20~30年かけて保険料の1/2を損金に算入し続けながら退職金を準備でき、退職金支給時には大きな赤字を計上するリスクが小さくなります。

契約者貸付も利用でき、逓増定期保険と同様、満期前に契約者貸付を活用して急な出費に対応することも可能です。

②長期平準定期保険のデメリット

デメリットとしては、逓増定期保険と同様に継続して一定の保険料を払い込み続ける資金の余裕がないと、キャッシュフローを悪化させることになります。

解約の時期によっては、解約返戻金が少なくなることがあります。長期平準定期保険の場合は解約返戻金のピークが長めなので、解約返戻金のピークと経営者への退職金の支払時期を合わせることがポイントです。

4、法人生命保険に加入する際には社内で「役員退職金慰労金規定」を作成する

役員退職金を法人生命保険で準備する際には、保険に加入すると同時に役員退職金慰労金規定を作成しておく必要があります。役員退職金慰労金規定とは、退職金の支給基準などを明確に示した規定です。

役員退職金は、損金算入できるのが税務処理上の原則です。

しかし、税務署から「退職金が高すぎる」と指摘された場合、過大部分が損金不算入となり、結果的に法人税が増加してしまいます。
退職金が適正金額である根拠を示すためにも、「役員退職金慰労金規定」を作成しておくようにしましょう。

まとめ

今回は、役員退職金を生命保険で準備する方法について解説しました。

法人税の節税ができたり、支給される役員の税負担も軽減することができたりするなど、多くのメリットがあります。
一方で、保険の種類や退職金支給手続き・支給額など正しく理解していないと、税務調査で否認されるリスクもあります。

さらに、役員退職金は税制面で大きく優遇されていますが、税制改正で今後状況が一変する可能性も考えられます。
最適な保険の積み立て方は、各会社の状況や、その時における日本の税制によって変わってきます。常に最新の税制や保険の制度などに目を通し、慎重に計画を立てていきましょう。

LINE
Facebook
Twitter
このエントリーをはてなブックマークに追加
ホワイトペーパー各種無料プレゼント!
税理士の相談随時受付中
当サイトの記事をお読み頂いても問題が解決しない場合には
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
初回のご相談は無料ですので
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。
営業時間:平日10:00〜17:00 / メール受付24時間

最近の投稿

この記事の監修者

荒井悠輔
荒井 悠輔

べリーベスト税理士事務所 経営企画室シニアマネージャー
株式会社ベリーベストサポートオフィス 代表取締役
資格の大原税理士講座簿記論講師、
文化服装学院ファッション流通高度専門士課タックスアカウンティング講師を務める。
筑波大学大学院において、法人税法及び国際税務を研究し、修了。
現在は経営企画、セミナー、講師、論文・記事の執筆を中心に活動を行っている。