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TAX&ACCOUNTING MALL経理/会計インボイス制度がいよいよ始動!事前に準備すべきポイントを解説
2022.12.13 / 更新日:2022.12.13

インボイス制度がいよいよ始動!事前に準備すべきポイントを解説

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インボイス制度とは結局どういうものなの?
インボイス制度が導入されると何が起こるの?

2023年10月1日より、消費税の仕入税額控除の方式として「インボイス制度」が導入されます。聞きなれない言葉ですが、免税事業者や課税事業者問わず全ての事業者に影響のある新しい税制度です。

本記事では、インボイス制度の

  • 概要
  • 背景と目的
  • 導入による影響
  • 制度導入までに準備すべきこと

について、べリーベスト税理士事務所が分かりやすく解説していきます。

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1、インボイス制度とは

まずは、インボイス制度の概要についてみていきましょう。インボイス制度の「インボイス」の意味と、「インボイス制度」自体の意味について解説していきます。

(1)「インボイス」とは

海外と取引を行っている会社で「インボイス」という書類のやり取りが行われていることがありますが、「インボイス」とは輸出入時の関税に関わる書類のことです。

一方で、今回導入される「インボイス制度」で使われている「インボイス」とは、「適格請求書」のことです。日本国内の消費税に関わる書類を指し、適用税率や消費税額の記載を義務づけた請求書を意味します。

具体的には、下記の要件を満たした請求書のことを指します。

  • 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

※出典:適格請求書等保存方式の概要 ― 国税庁

(2)インボイス制度とは

「インボイス制度」とは、「インボイス(適格請求書)」の交付や保存に関する制度のことです。正式には「適格請求書保存方式」といい、2023年10月に導入されます。

買い手は、消費税の仕入税額控除を行うとき、売り手が交付した「インボイス(適格請求書)」の保存をしなければなりません。
売り手は、買い手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、「インボイス(適格請求書)」を交付し、また交付した「インボイス(適格請求書)」の写しを保存しておく必要があります。

① 何のための保存義務でしょうか?

「インボイス制度」導入後は、「適格請求書」が発行された取引のみ仕入税額控除の対象となります。
よって、仕入税額控除を認めてもらうために一定の記載項目を満たした「適格請求書」を保存する義務があります。

②「適格請求書」は誰でも発行できますか?

請求書を発行するすべての人が「適格請求書」を発行できるわけではありません。「適格請求書」の発行は課税事業者であるインボイス発行事業者に限られます。
よって、「免税事業者」は消費税の課税事業者ではないため「適格請求書」を発行することが出来ません。

2、インボイス制度の背景・目的

国は、厳しい税制状況を背景とした税収の増加を図るため、消費税の仕組みを変更した「インボイス制度」を導入することとしました。
具体的には、インボイス制度には「益税の排除」「複数税率(軽減税率)対応」の2つがあります。そこで、現行のルールがどうなっているのかについてもあわせて解説していきます。

(1)益税の排除

「益税」とは「脱税」ではなく、制度で許容される事業者の利益です。以下の2つの制度により、本来納付すべき消費税額との差額(=益税)が合法的に生じるため、以前から問題視されていました。

①免税事業者制度

前提として、消費税の納付の計算式は「受け取った消費税-支払った消費税」です。

まず消費者が物やサービスを購入する際に事業者に消費税を支払います。事業者はその消費税を一旦預かります。
一方、事業者も仕入や事業運営するために消費税を支払っているので、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて、その差額を国に納税します。

ただし、売上高が1千万円以下など一定の要件を満たす売り手側の事業者の場合、免税事業者となり消費税の納税義務は生じませんが、現行制度では消費税込みの請求書を買い手側の事業者に発行することができます。
消費税の免税事業者は、消費税の納付が免除されていますが、自らは消費税相当額を受け取ることができるため、その受け取った消費税分が「益税」となるわけです。

もっとも、消費税は預り金ではなく対価の一部であるとの考え方もあることから、消費税込みで対価の額を決定しているケースもあり、形式的に益税を受け取っている形になっているにすぎない場合もあります。

②簡易課税制度

消費税の計算の事務的負担を軽減するために、中小企業者に配慮して設けられた特例制度で、仕入額を売上額の一定割合とみなして、受け取った消費税から控除できる仕組みです。以下の計算で求められます。

受け取った消費税-(受け取った消費税×仕入率)

課税売上が5千万円以下で、前課税期間末までに「消費税簡易課税制度選択届出書」が提出されていることを条件として適用されます。

簡易課税制度では、業種ごとに決められた一定の割合で「みなし仕入率」を使用しますが、実際の仕入率とは異なっているため、消費税の一部が納税されずに事業者の利益となってしまう「益税」が発生しています。

(2)軽減税率(複数税率)の対応

2019年10月の軽減税率(複数税率)導入前は申告実務上すべての品目が同じ消費税率だったため、「従来の請求書」でも割戻し計算を使えば、申告税額は比較的簡単に計算できました。
しかし、軽減税率導入後は事業者が正確に消費税額と仕入税額控除税率の計算をするために、合計金額ではなく取引ごとに税率が記載された「区分記載請求書」を使用することになりました。

2023年10月の「インボイス制度」が導入された後は、「区分記載請求書」は「適格請求書」に変更し保存する義務が発生します。

これまでは、「請求書等保存方式」と軽減税率導入後の「区分記載請求書等保存方式」が取られており、取引先が発行した請求書があれば仕入税額控除ができました。
しかし、インボイス制度導入後は、適格請求書を発行できる事業者は「適格請求書発行事業者」に限られることとなります。

①請求書等保存方式(~2019年9月30日)

帳簿を保存し、売り手が発行した請求書等の客観的証拠書類を保存することが仕入税額控除の要件です。

「請求書」の記載項目は、1、インボイス制度とは ― (1)「インボイス」とはで前述したとおりです。

②区分記載請求書等保存方式(2019年10月1日~2023年9月30日)

帳簿及び区分記載請求書等を保存することが仕入税額控除の要件です。

「区分記載請求書」の記載項目は以下のとおりです。

  • 発行者の氏名または名称
  • 取引年月日
  • 取引内容
  • 取引金額
  • 交付を受ける者の氏名または名称
  • 軽減税率の対象品目である旨
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税込)

③適格請求書保存方式(2023年10月1日~)

帳簿や適格請求書を保存することが仕入税額控除の要件です。
「適格請求書」を交付できるのは税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」に限られ、登録後に発番された登録番号を記載します。

その他「適格請求書」の記載項目は以下のとおりです。

  • 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

※出典:適格請求書等保存方式の概要 ― 国税庁

3、インボイス制度導入による影響

2023年10月1日から「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」の導入により、以下のような影響が生じます。

  • 売り手(個人事業主やフリーランスなどの免税事業者)の売上減少
  • 買い手の業務負荷によるコスト増加

(1)売り手(個人事業主やフリーランスなどの免税事業者)の売上減少

「インボイス制度」導入により大きな影響を受けると考えられるのが、売上1千万円以下の免税事業者です。フリーランスや個人事業主の方の多くが免税事業者に該当します。
免税事業者は「インボイス制度」から除外され、「適格請求書」を発行することができません。しかし、買い手にとっては受け取る請求書が「適格請求書」でなければ仕入税額控除が認められません。

買い手からすると、仕入から経費の支払いまで「適格請求書」を発行できる事業者を取引先とするといった判断をすることも考えられ、個人事業主やフリーランスなどの免税事業者は、取引を中止されるなどの懸念があります。

もし買い手である取引先から取引継続条件として「適格請求書」を求められ、自らも取引継続を希望する場合は、「適格請求書」を発行できる課税事業者になるしかありません。

なお、課税事業者になるということは、今まで消費税の納税義務がなかった免税事業者の方も納税義務が生じることを意識しておきましょう。

(2)買い手の業務負荷によるコスト増加

「インボイス制度」導入後は、売り手が発行した請求書が「適格請求書」の要件を満たしているかを確認し、要件を満たしていなかった場合は取引先に「適格請求書」の発行を求めなければなりません。

また、「適格請求書」発行事業者から仕入れた場合と、「適格請求書」発行事業者以外から仕入れた場合では、分けて管理する必要があり、買い手にとっては、さまざまな事務作業があらたに追加されることが予想されます。

4、インボイス制度導入までに準備すべきこと

ここからは、インボイス制度導入までに準備すべきことを、事業者の種類に分けてご紹介します。

(1)課税事業者の場合

①「適格請求書発行事業者」の登録

インボイス制度導入以降は、課税事業者は「適格請求書」の発行が義務付けられます。「適格請求書」を発行できるよう、適格請求書発行事業者の登録を行いましょう。

登録方法は、納税地を所轄する税務署長に対して登録申請書を提出します。税務署における審査を経て、適格請求書発行事業者として登録された場合、「登録通知書」(登録番号や公表情報等が記載されているもの)が送付されます。

インボイス制度が始まる2023年10月1日から事業者の登録を受けるためには、原則として2023年3月31日までに提出する必要があり、既に受付は始まっています。

②「適格請求書」のフォーマット変更

適格請求書発行事業者の登録が完了したら、適格請求書を発行するためにフォーマットを変更しましょう。

③システム対応確認

自社の経理システムを資料している会社は、導入される「適格請求書」に対応可能かを確認し、対応できない場合はシステムの改修が必要となります(市販の請求書発行サービスや経理システムを利用している場合は「適格請求書」に対応されることが予想されます)。

④ 今後の方針決定

取引先が免税業者だった場合の仕入金額控除への影響を把握し、今後の対応方針を決めていきます。

(2)現状は免税事業者で今後も免税事業者を継続する場合

免税事業者は「適格請求書」が発行できないため、特に準備することはありません。

(3)現状は免税事業者で今後は課税事業者に変更する場合

①「適格請求書発行事業者」の登録

「適格請求書発行事業者」としての登録手続きをしましょう。令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中に登録を受けることとなった場合には、「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要はありません。
ただし、免税事業者のままでいくか課税事業者に切り替えるかどうかは、取引先との関係を踏まえて慎重に検討しましょう。

②「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出

課税事業者に変更したことで申告業務の手間が増えることが懸念される場合には、「簡易課税制度」の導入を検討し、税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しましょう。

まとめ

「インボイス制度」は、課税事業者・免税事業者に関わらず全事業者に関係のある新たな制度です。
2023年10月1日には導入されますので、課税事業者も免税事業者も事前にその内容を理解し、登録申請や経理業務の見直し、システム対応など余裕をもって準備を進めていきましょう。

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この記事の監修者

荒井悠輔
荒井 悠輔

べリーベスト税理士事務所 経営企画室シニアマネージャー
株式会社ベリーベストサポートオフィス 代表取締役
資格の大原税理士講座簿記論講師、
文化服装学院ファッション流通高度専門士課タックスアカウンティング講師を務める。
筑波大学大学院において、法人税法及び国際税務を研究し、修了。
現在は経営企画、セミナー、講師、論文・記事の執筆を中心に活動を行っている。