電子帳簿保存で業務効率化!ペーパーレス化に向けて知りたいこと5つ
電子帳簿保存を導入したいけれど、電子帳簿保存法の改正で何が変わったのだろう……。
電子帳簿保存やそれに伴う電子帳簿保存法について詳しく知りたい方は、多くいらっしゃると思います。
近年、電子帳簿保存を導入する企業が増加しています。
経営者や経理担当者のなかに、以下のような悩みを抱えている方はいらっしゃいませんか?
- 書類を探すのが大変
- 保管スペースが圧迫している
- 書類のファイリングが多い
- 紙ベースの書類による業務が必要で完全にテレワークができない
こんな悩みを抱えていたら、電子帳簿保存がおすすめです。
電子帳簿保存を導入することで、業務効率化やコスト削減に繋がります。
今回は、電子帳簿保存について詳しく知りたい方のために、
- 電子帳簿保存とは
- 2020年の電子帳簿保存法改正で何が変わったのか
- 電子帳簿保存の適用要件
- 電子帳簿保存の適用書類
- 電子帳簿保存を利用するメリットデメリット
- 電子帳簿保存の注意点
以上、導入前に知っておくべき6つのことについて、紹介します。
この記事が、電子帳簿保存についてしっかり知りたいと考えている方の手助けとなれば幸いです。
電子帳簿保存法改正について、税理士法人ベリーベストの公式YouTubeチャンネルにて動画にまとめております。
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【2022年1月1日よりスタート】≪電子帳簿保存法の改正≫について解説しました
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1、電子帳簿保存とは
そもそも、「電子帳簿保存」とはどういうものなのでしょうか。
本章では、電子帳簿保存の概要を説明したうえで、気になる電子帳簿保存法について、わかりやすく解説します。
(1)電子帳簿保存の概要
電子帳簿保存とは、国税関係の決算関係書類や各種帳簿書類を電子データに保存することです。
従来、帳簿書類等は紙ベースで作成し、その書類の保存が必要でした。
帳簿書類は、紙ベースの書類やデータに関係なく7年間の保存が義務付けられています。
紙ベースでの帳簿保存は、書類の紛失リスクや保管スペースの圧迫などの問題点が挙げられています。
以上のことから、近年、電子帳簿保存が普及してきました。
(2)電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、「(1)電子帳簿保存の概要」で解説した電子帳簿保存を認めた法律になります。1998年に制定されました。
電子帳簿保存法の正式名称は、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」です。
電子帳簿保存法が制定された目的は、次のようなものです。
- 時代ごとに変化する高度情報・ペーパーレス化社会への対応
- 適正公平な課税を確保しつつ納税者等の帳簿保存の負担軽減
より詳細な目的の内容としては、以下のとおりとなります。
- 紙ベースの書類における手間の削減による業務効率向上
- 書類保管場所を開放させる
- 各種コスト削減 など
以上のことから、電子帳簿保存法は、総務省が推進している「ペーパーレス化」に繋がります。
電子帳簿保存法の制定当初は、多くの要件がありました。
総務省が推進している「ペーパーレス化」の促進のために、数回にわたり制度改正が行われてきました。
次の章では、そのような電子帳簿保存法の歴史と、2020年の改正によって電子帳簿保存法がどのように変わったのかについて解説します。
2、2020年の電子帳簿保存法改正で何が変わった?
2020年に電子帳簿保存法が改正し、具体的に何が変わったのか気になる方もいらっしゃると思います。
本章では、以下の3点について詳しく解説します。
- 電子帳簿保存法についての過去にどのような歴史を歩んできたのか
- 2020年の電子帳簿保存法の改正では何が変わったのか
- これからの電子帳簿保存法はどう変わっていくのか
(1)電子帳簿保存法の歴史
電子帳簿保存法の創設の歴史は、1998年まで遡ります。
電子帳簿保存法は、時代に合わせて何度か改正が行われています。
本項では、2005年・2015年・2016年に行われた、それぞれの改正について解説します。
①2005年改正
まず、2005年の改正では、e-文書法施行の影響を受けて「スキャナ保存制度」の追加が行われました(「e-文書法」は「5、(3)e文書法との違い」にて後述します)。
スキャナ保存制度とは、次のような制度です。
日々の取引で発生する契約書や領収証といった紙の書類を、事前に所轄税務署長の承認があれば電子データに変換して保存できる |
保存が義務付けられている帳簿書類ですが、スキャナで読み取ったデータを一定の要件に従って保存していれば、紙の書類の保存は必要なくなりました。
②2015年改正
2015年の改正では、「スキャナ保存制度」の要件が緩和されました。
従来は、スキャナ保存の対象となる国税関係書類が限られており、3万円以上の契約書や領収書は、スキャナ保存が認められていませんでした。
2015年改正以降、対象書類の範囲が拡充され、3万円以上の契約書や領収書のスキャナ保存も可能になっています。
③2016年改正
2016年の改正では、さらに「スキャナ保存制度」の見直しが図られました。
スマートフォンやデジカメで撮影した領収証であっても、データとして保存することが可能になったため、さらに企業は電子帳簿保存を取り入れやすくなりました。
(2)電子帳簿保存法の2020年改正で何が変わった?
今回改正された電子帳簿保存法は、2020年10月から施行されています。
一番最近の改正ということで、何が変わったのか気になっている方もいらっしゃるのはないでしょうか。
今回の改正で大きく変化した項目は、次の2つです。
- 要件を満たすとタイムスタンプ不要
- キャッシュレス決済は領収書が不要
①要件を満たすとタイムスタンプ不要へ
従来は、スマートフォン等で書類を撮影やスキャンした場合には、3日以内に「タイムスタンプ」を付与する必要がありました。
今回の改正によって、以下のものについては、「タイムスタンプ」が不要になりました。
- クレジットカードの利用明細などユーザーがデータの改変ができないもの
- 書類受領者の書類保存時(書類発行者が書類を保存する場合はタイムスタンプが必要)
ところで、「タイムスタンプって一体何?」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
タイムスタンプについての詳しい説明は、後ほど「5、電子帳簿保存の注意点」で解説します。
②キャッシュレス決済は領収書が不要
キャッシュレス決済を利用した場合には、紙の領収書が不要になりました。
「キャッシュレス決済サービスの利用明細」が、領収書としての役割を果たします。
今回の改正で、バックオフィスの業務効率化と生産性の向上が期待できるでしょう。
(3)これからの電子帳簿保存法改正
既述のとおり、電子帳簿保存法は、ペーパレス化を促進するために制度改正を進めています(参照:「令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについて」内「改正の概要(PDF)」)。
次回の改正内容の施行は、2022年1月1日を予定しており、今のうちから改正内容を把握しておくことで、早く準備に取り掛かることができるでしょう。
具体的には、次のような改正が行われる予定です。
- 税務署長の事前承認制度の廃止
- タイムスタンプの付与期間延長
①税務署長の事前承認制度の廃止
従来は、電子保存を開始する3ヶ月前までに所轄税務署長の承認が必要でした。
今回の改正によって、その事前承認制度が廃止になりました。
承認は不要ですが、電子保存を開始したい日までに、税務署へ「届出書」を提出しなければなりません。
電子化運用体制が整っても、勝手に始めることはできないので注意が必要です。
②タイムスタンプの付与期間延長
2020年の改正によって、タイムスタンプが不要になる要件が追加されましたが、書類によってはタイムスタンプが必要な場合ももちろんあります。
従来、3日以内とされていたタイムスタンプの付与期間ですが、次回の改正によって2ヶ月経過した後の概ね7営業日以内に入力と緩和されました。
3、電子帳簿保存法の適用書類
電子帳簿保存法には、適用可能な書類と適用不可な書類があります。
本章では、電子保存が認められている書類・認められていない書類に加えて、スキャナ保存が認められている書類・認められていない書類を紹介します。
(1)電子保存が認められている書類
電子帳簿保存法の対象となる書類は、以下の通りです。
- 国税関係帳簿
- 国税関係書類
それぞれの具体的な書類について紹介します。
①国税関係帳簿
- 総勘定定元帳
- 仕訳帳
- 現金出納帳 など
②国税関係書類
- 賃借対照表
- 損益計算書
- 見積書
- 発注書
- 請求書
- 契約書
- 領収証 など
(2)電子保存が認められていない書類
電子帳簿保存法の対象とならない書類は、対象書類と比べて少ないですが存在します。
対象にならない書類には、以下のようなものがあります。
- 手書きで作成した主要簿(総勘定定元帳や仕訳帳等)
- 手書きで作成した補助簿(請求書の写し)
- 取引先から受け取った請求書
(3)スキャナ保存の対応書類
スキャナ保存にも、認められている書類と認められていない書類があります。
スキャナ保存の認められている書類は、以下の通りです。
- 契約書
- 領収書
- 請求書
- 見積書
- 契約書
- 納品書
- レシート など
取引先から受領した、以上の証憑書類が対象になります。
(4)スキャナ保存が認められていない書類
対して、スキャナ保存が認められていない書類は、次のようなものが挙げられます。
- 仕訳帳などの帳簿
- 賃借対照表
- 損益計算書などの決算関係書類
スキャナ保存が認められていない書類は、書面もしくは電子データでの保存のみ可能となっています。
4、電子帳簿保存を利用するメリット・デメリット
電子帳簿保存には、メリット・デメリットがあります。
導入を予定されている方は、電子帳簿保存のメリットとデメリットの両方をしっかり理解しておくことが重要です。
(1)メリット
電子帳簿保存のメリットは、以下の通りです。
- ペーパーレス化の促進(テレワーク促進)
- 書類保管スペースの開放
- 書類紛失の防止
- 業務効率化
①ペーパーレス化の促進
電子帳簿保存のメリットとして、ペーパーレス化の促進がいちばんに挙げられます。
ペーパーレス化を進めることによって、現在ニーズが高まっている「テレワークの促進」にも繋がります。
②書類保管スペースの開放
帳簿書類は、7年間分の保存が義務付けられているため、書面で保管している場合は多くの書類がオフィスのスペースを圧迫します。
書類を電子化することで、オフィスから書類がなくなり、スペースの有効活用が可能です。
③書類紛失の防止
書面で保管している場合には、戻し間違い・返却忘れ・間違えて破棄・盗難など書類の紛失リスクが高まります。
書類を電子化することで、書類の紛失を防止することが可能になり、セキュリティ強化に繋がります。
④業務効率化
郵送から電子取引になることで、書類を即座に受け取ることができます。
過去の書類の検索性についても、向上を期待できるでしょう。
以上のことから、税務調査対策の負荷が軽減するといったメリットもあります。
結果として、生産性が向上し、業務効率が大幅に上がります。
(2)デメリット
電子帳簿保存のデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 導入費用・ランニングコスト
- データの管理
- パソコン故障・システム障害の危険性
①導入コスト
電子帳簿保存を取り入れることで、郵送に伴う費用やインク代等のコスト削減に繋がります。
しかし、書類を電子化するためには、少なからず導入コストが発生するでしょう。
例えば、外部サービスを利用する場合は利用料がかかってしまいます。
電子化に必要な電子機器の購入などによっても、決して小さくないコストが発生するでしょう。
なお、全ての取引を電子取引にできるわけではありません。
取引先相手が紙ベース書類の取引で郵送を希望する場合には、郵送代や紙・インク代が必要になります。
②データ管理は必須
電子化された帳票にも、管理や整理が必要です。
管理・整理をしなければ、電子帳簿保存特有の検索性の向上というメリットを活かしきれません。
検索性を向上させるためには、カテゴリーごとにファイルを作って分類する必要があります。
電子帳簿保存には、徹底したデータ管理が必須であるため、これまで紙ベースの作業に慣れていたという企業にとっては、慣れない作業となってしまうかもしれません。
③パソコンの故障・システム障害の危険性
電子データはコンピュータ上で保管されているため、パソコン自体の故障やシステム障害によって、データが失われるリスクがあります。
失ったデータを復元するのは難しいため、予めクラウド上にバックアップを取ることがおすすめです。
5、電子帳簿保存の注意点
電子帳簿保存を導入するにあたって、注意点がいくつかあります。
注意点を理解しておくことで、安心して電子帳簿保存を利用することができます。
本章で紹介する注意点は、以下の通りです。
- タイムスタンプの義務
- 適正事務処理要件
- 入力期間の制限
- e-文書法との違い
- 認証を受けたサービス
(1)タイムスタンプの義務
2章の「2020年の電子帳簿保存法改正で何が変わった?」で、タイムスタンプについて触れました。
タイムスタンプとは、電子データの改ざん防止を目的として、ある時刻に確実に存在していたことを証明するために日付や時刻等の情報を示す「時刻証明書」です。
電子帳簿保存法に基づいて、2021年現在、国税関係書類にはタイムスタンプの付与を3日以内にすることが義務付けられています。
先ほど2章でも紹介した通り、2020年度の改正によって、「一部の書類についてはタイムスタンプが不要」という変更が加えられました。
電子データを利用するならば、タイムスタンプの義務があることを把握しておきましょう。
(2)適正事務処理要件
スキャナ保存をするためには、スキャナ保存前の紙書類の改ざん防止として、適正事務処理要件が定められています。
適正事務処理要件は以下の通りに定められています。
- 取引の承認・記録、資産の管理に関して、相互けん制が機能する体制
- 事務処理手続きの定期的な検査を行う仕組み
- 検査等を通じて問題把握された場合に、再発防止や手続きの見直しを行う
適正事務処理要件は、申請・承認時に税務署から強くチェックが行われるため、社内規定を整備したうえで、規定を遵守して事務処理を行うことが必要です。
ただし、適正事務処理要件は、来年の2022年1月1日に廃止になる予定です。
相互けん制が廃止になることで、事務処理を複数名で対応する必要はありません。
(3)e-文書法との違い
電子帳簿保存法と似ている法律として、e-文書法があります。
電子保存という点で、e-文書法と電子帳簿保存法は何が違うの?と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
既述のとおり、電子帳簿保存法は、国税書類を紙ではなく電子データとして保存できるように定めた法律です。
e-文書法は、以下の2つの法律の総称となります。
e-文書法は、会社法や証券取引法などで保管が義務付けられていて、国税には関連しない書類の電子化を認める法律です。
2つの法律として大きな違いとしては、「適用書類の範囲」になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
電子帳簿保存は、国税関係の決算関係書類や各種帳簿書類を電子データに保存するということです。
従来の紙ベースでの業務をなくすために電子帳簿保存を導入し、ペーパーレス化を促進させることで、テレワークを始めとした現代のデジタル化の流れについていけるでしょう。
電子帳簿保存についての疑問や不安、経理業務効率化のお悩みなどがあれば、一度税理士に相談することがおすすめです。
税務のプロである税理士に相談することで、
- 経理業務効率化のアドバイス
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電子帳簿保存について不安のある経営者や経理担当の方がいらっしゃったら、税理士に相談してみましょう。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
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