青色申告は法人も可能!税金で損しないための4つのポイント
![青色 申告 法人](https://www.vbest-tax.jp/myblog/wp-content/uploads/2021/04/shutterstock_1516342130.jpg)
青色申告は法人でもできる確定申告の方法なのだろうか……。
税金で損しないためにも、法人でも青色申告を利用したいとお考えの経営者の方も多いのではないでしょうか。
法人が青色申告を行うためには、適切な手続きや書類が必要です。
今回は、青色申告が法人でもできるのかについて説明したうえで、
- 法人が青色申告を行うメリット・デメリット
- 法人が青色申告をする流れ
などについて、解説します。
あわせて、法人が青色申告を行う場合に税理士へ相談するメリットについても紹介します。
この記事が、青色申告を検討している法人の経営者の方々に参考になれば幸いです。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。
1、青色申告は法人でもできる?
(1)そもそも個人事業主の青色申告とは
税金の申告方法には、次の2つの方法があります。
- 青色申告
- 白色申告
①個人事業主の青色申告の概要
青色申告は、一定の帳簿に取引の記録などを記帳して、それに基づいて確定申告を行う方法です。税金面で、さまざまなメリットを受けられます。
青色申告によって確定申告を行うためには、「正規の簿記の原則に従って作成された帳簿」の添付が義務付けられています。
簿記の形式は、「簡易簿記」または「複式簿記」です。
簡易簿記の場合は最大10万円、複式簿記の場合は最大65万円の控除を受けられます。
なお、青色申告を行う場合には、指定の期限までに税務署へ下記書面を提出して、青色申告承認申請をしなければなりません。
承認申請の期限については、「(2)②法人と個人事業主の青色申告の違い」にて解説します。
- 開業届
- 青色申告承認申請書
上記書面をすべて提出をしない場合、青色申告をすることができず、自動的に白色申告をしなければならなくなりますので注意が必要です。
なお、青色申告の承認申請は、一度承認されれば「青色申告者」となります。
将来的に継続して青色申告者となるため、毎年青色申告承認申請をする必要はありません。
②白色申告との違い
青色申告と白色申告の具体的な違いは、次の表のとおりです。
青色申告 (10万円控除) |
青色申告 (65万円控除) |
白色申告 | |
事前申請 | 必要 | 不要 | |
記帳方法 | 簡易簿記 | 複式簿記 | 簡易な記載 (※1) |
帳簿 | ・現金出納帳 ・売掛帳 ・買掛帳 ・固定資産台帳 ・経費帳 |
【主要簿】 ・総勘定帳 ・仕訳帳 【補助簿】 ・現金出納帳 ・売掛帳 ・買掛帳 ・固定資産台帳 |
簡易な記載の帳簿 |
確定申告書類 |
・確定申告書B |
・確定申告書B |
確定申告書B |
(※1)売上と経費の申告に必要な記帳として「収支内訳書」のみあればよい。
(※2)貸借対照表の作成義務はない。
(2)法人も青色申告が可能!
①法人の青色申告普及率は90%超え
「『青色申告』は個人事業主がするもの」というイメージを持たれている方も多いでしょう。
しかし、法人でも青色申告は可能です。
法人税に関する青色申告普及率は、90%を超えていると国税庁が発表しています(青色申告制度の意義と今後の在り方―国税庁)。
以上の青色申告の普及率から、青色申告は法人にとっても一般的といえるでしょう。
なお、青色申告をするための承認申請は、法人設立時に必ず提出する必要はありません。しかし、この書類を提出しておくことで、法人の青色申告に関するメリットを享受することができます。
②法人と個人事業主の青色申告の違い
では、法人と個人事業主では青色申告がどのように異なるのでしょうか。
違いについて確認しましょう。
法人 | 個人事業主 | |
承認申請書の種類 | 青色申告書の承認申請書 | 所得税の青色申告承認書 |
承認申請書届出の期限 | 青色申告を行おうとする事業年度開始日の前日まで (※1) |
青色申告の承認を受けようとする年の3月15日 (※2) |
期限後申告による取消し | あり(2回連続期限後申告) | なし |
欠損金(赤字)の繰越期間 | 10年(※3) | 3年 |
(※1)初年度の届け出期限は、「設立日以後3ヶ月を経過した日」または「設立第1期事業終了の日」のいずれか早い日の前日まで([手続名]青色申告書の承認の申請―国税庁)。
(※2)初年度の届け出期限は、業務を開始した日から2ヶ月以内。
(※3)平成31年3月31日前に発生した欠損金の繰越期間は9年など(No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除―国税庁)。
以上からわかるように、法人と個人事業主では、青色申告の承認申請の届け出期限が異なります。
また、法人の場合は、青色申告の期限後申告による取消しがあったり、赤字の繰越期間が個人事業主より長かったりという特徴があります。
次項では、法人による青色申告のメリットとデメリットについて、より詳細に確認しましょう。
2、法人による青色申告のメリット・デメリット
(1)法人による青色申告のメリット
法人が青色申告をするメリットは、次のようなものが挙げられます。
- 欠損金の繰越控除
- 欠損金の繰り戻し還付
- 少額減価償却資産の取得価額の損金算入
- 中小企業投資促進税制(特別償却・税額控除)
①欠損金の繰越控除
法人の青色申告におけるメリットの1つは「欠損金の繰越控除」です。
具体的には、欠損金(赤字)が出た場合、赤字を翌年度以降に繰り越して、所得から控除できるという制度です。
例えば、以下のケースにおける青色申告の欠損金の繰越控除についてみていきましょう。
令和元年度:赤字30万円 令和2年度:黒字20万円 |
令和2年度は黒字分の20万円が課税所得となります。
黒字分の20万円に税率を掛けた金額が法人税となり、納付しなければなりません。
しかし、欠損金の繰越控除が適用されれば、令和2年度における青色申告では法人税を支払う必要はありません。
令和元年度は赤字が30万円となっており、令和2年度の黒字20万円を上回っているためです。
なお、法人の青色申告において、欠損金の繰越控除が適用される上限は10年です。
適用条件は次のとおりとなります。
- 欠損金が生じた事業年度に青色申告書で確定申告をしている
- 欠損金が生じた事業年度以降の事業年度も確定申告をしている
- 欠損金が生じた事業年度の帳簿書類を現在まで保存している
青色申告の承認を受ける以前の事業年度の赤字について、青色申告の承認を受けた後の事業年度以降に繰り越すことはできないため、注意が必要です。
また、中小法人等以外の法人については欠損金に控除限度額が定められているため、あわせて注意が必要です。
欠損金の繰越控除について、詳しくは国税庁の「No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」をご確認ください。
②欠損金の繰り戻し還付
欠損金が出た場合、①で説明した欠損金の繰越控除では、将来の事業年度に適用できます。
一方、過去の事業年度に適用することも可能です。それが「繰り戻し還付」です。
繰り戻し還付は、資本金1億円以下など一定の要件を満たした中小企業のみ適用される制度です。
前期が黒字で法人税を支払ったものの、当期が赤字の場合には、前期で支払った法人税について繰り戻し還付を請求できます。
例えば、以下の業績の場合における繰り戻し還付についてみていきましょう。
|
前期に納付した法人税額と当期の赤字額を掛け合わせ、前期の黒字額を割ることで還付請求できる法人税額を求められます。
上記のケースにおいては、繰り戻し還付されえる法人税額は次のようになります。
- 40万円×100万円÷200万円=20万円
なお、繰り戻し還付で適用できる欠損金の上限は、前期の黒字分となります。
上記のケースで令和2年度が赤字300万円の場合、上限の200万円を超えてしまいます。
したがって、超過した100万円についてのみ、「欠損金の繰越控除」で将来へ繰り越せます。
繰り戻し還付では、還付請求によって現金を手に入れることができます。
会社設立したての時期や業績不振が続くと、資金計画通りに進まないことが多いでしょう。
そのため、繰り戻し還付は融資以外で現金を得られる手段といえます。
ある事業年度の赤字について、繰越控除と繰り戻し還付の両方に適用することはできませんので、注意しましょう(No.5763 欠損金の繰戻しによる還付―国税庁)。
③少額減価償却資産の取得価額の損金算入
中小企業者に限りますが、30万円未満の適用年度で事業の用に供する少額減価償却資産について、一括で費用に計上できる制度があります。
一方、白色申告では、損金算入の対象となる減価償却資産は10万円未満です。
青色申告では、減価償却資産の金額が30万円未満まで上限が引き上げられるため、メリットといえるでしょう。
対象となる資産は、次のとおりです。
- 器具および備品
- 機械・装置などの有形減価償却資産
- ソフトウェアや特許権、商標権などの無形減価償却資産
- 所有権移転外リース取引に係る賃借人が取得したとされる資産
- 中古資産
なお、1年間で費用処理できる取得価額の合計は、300万円までとなります。
300万円を超える金額については、費用処理することができません。
詳細については、国税庁の「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」をご確認ください。
④中小企業投資促進税制(特別償却・税額控除)
特定の期間中に、中小企業が新品の資産を取得して指定事業に供した場合、特別償却または税額控除を認めるという制度があります。
これを「中小企業投資促進税制」といいます。
特別償却の上限は、基準取得価額の30%です。
税額控除の上限は、基準取得価額の7%となっています。
対象となる資産は、次のとおりです。
- 機械および装置
- 製品の品質管理の向上などに資する測定工具及び検査工具
- ソフトウェア
- 一定の普通自動車
- 内航海運業の用に供される船舶
詳しくは、国税庁の「No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」をご確認ください。
(2)法人による青色申告のデメリット
前項で、法人による青色申告のメリットについて解説しました。
では、法人による青色申告のデメリットはあるのでしょうか。
具体的なデメリットについては「無い」といえます。
強いていうなら、「白色申告よりも手間がかかる」ということです。
「1、(1)②白色申告との違い」で説明したように、白色申告と比べると、青色申告ではさまざまな帳簿や書類などを用意しなければなりません。
また、青色申告を行う際には、期限までに事前に承認申請が必要であり、期限より1日でも申請が遅れてしまうとその事業年度は青色申告ができない点もあてはまります。
3、法人の青色申告の流れ
(1)青色申告の承認申請手続を行う
青色確定申告をする前に、納税地を所管している税務署へ、青色申告の承認申請書を提出します。
承認申請書の提出期限は、「1、(2)②法人と個人事業主の青色申告の違い」で説明したとおりです。法人と個人事業主で異なるため注意しましょう。
承認申請書は、国税庁のホームページ([手続名]青色申告書の承認の申請)よりダウンロードできます。
(2)青色申告で必要な記帳をする
日々の経営における支出や収入など、事業に関する金銭のやりとりを記帳しましょう。
近年では、会計ソフトなどを利用して簡単に帳簿書類や決算書を作成できます。
会計ソフトをはじめとした効率化のためのツールについて、詳しくは「バックオフィス業務効率化のメリットや方法を解説【DX?】」で紹介していますので、ご参考ください。
また、会計帳簿の作成方法は、べリーベスト税理士事務所の公式YouTubeチャンネルにて動画で解説しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。
(3)法人税申告書を作成する
1年分の帳簿の内容を基準として、「法人税申告書」を作成しましょう。
青色申告決算書の様式は、国税庁のホームページ([手続名]法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等))よりダウンロードできます。
上記から必要資料のダウンロードが可能ですが、非常に複雑なため税務署にご相談いただくか、税理士にご依頼するのが良いかと思います。
(4)青色申告に必要な書類を税務署へ提出する
納税地を管轄している税務署へ、法人税申告書を提出し、確定申告を行います。
原則として、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から10年間、帳簿書類を保存する必要があるため、失くさないように注意しましょう。
4、法人の青色申告で不安があったら税理士に相談しよう!
法人の青色申告においては、事前に承認申請したりさまざまな書類を用意したりと、事前の準備をしなければなりません。
さらに、申告書や添付書類の作成に税務や経理に関する多くの専門知識が必要になります。
法人の青色申告に際して、不安や悩みがある場合には、税理士への相談も検討しましょう。
税理士へ相談するメリットとしては、次のようなものがあります。
(1)確定申告を正確にできる
税理士は税務のプロです。
税理士へ確定申告の相談や依頼をすれば、税理士が正確な確定申告をしてくれます。
確定申告における提出書類の抜け漏れなどを防げるでしょう。
(2)節税対策しやすい
損金として計上できるものとできないものについて、税理士は明確に判断してくれます。
経営者に有利な税制についても、税理士が積極的に提案してくれるでしょう。
(3)税務調査に立ち会ってくれる
顧問税理士であれば、税務調査に立ち会うことが認められています。
税務調査が入った場合のアドバイスをしてくれたり、税務署との交渉を代理で行ってくれたりするメリットがあります。
まとめ
今回は、法人における青色申告について解説しました。
法人においても、青色申告の普及率は非常に高いものとなっています。
青色申告には、欠損金の控除や繰越など法人にとってさまざまなメリットがあるため、積極的に利用することをおすすめします。
しかし、青色申告を行うには、正確な知識を持ったうえで書面を作成したり期限までに間に合うように必要書類を提出しなければなりません。
抜け漏れなく正確に確定申告を行う場合には、税務のプロである税理士への相談も検討しましょう。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
初回のご相談は無料ですので
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。
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