資金調達ラウンドとは?起業時に利用したい資金調達についても解説
起業のための資金調達について調べていると、「資金調達ラウンド」という耳慣れない言葉に出会うかもしれません。
資金調達ラウンドを把握することは、財務計画を立てる上でも重要になってきます。
今回の記事では、
- 資金調達ラウンドとは
- 資金調達ラウンドの5つのフェーズ
- 資金調達における3つのタイプ
- 企業の初期段階に利用したい7つの資金調達方法
- ラウンドに適した資金調達をするポイント
について解説いたします。
資金調達ラウンドについての理解が深まり、自社への適切な活用へとつなげて頂ければ幸いです。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。
1、資金調達ラウンドとは?
資金調達ラウンドとは、企業の成長度合いに対応した、資金調達の段階を5つのフェーズで表した指標です。
元々は、投資家が企業の
- 信用力
- 収益力
を把握するための指標として生まれました。「投資ラウンド」とも呼ばれます。
企業側としては、自社の資金調達ラウンドを理解することで、成長段階に適した資金調達計画を立てる際に利用できます。
2、資金調達ラウンドの5つのフェーズ
資金調達ラウンドは、資金規模が小さい順に、以下5つのフェーズで表されます。
- シード期
- アーリー期(スタートアップ)
- シリーズA(エクスパンション)
- シリーズB(グロース)
- シリーズC(レイター)
この章では、各フェーズについて
- 事業段階
- 資金規模
- 資金の使い道
- 資金の調達方法
以上の点から解説します。
(1)シード期
シードとは、起業前の段階を指します。
起業するための準備段階であるため、資金規模は500~1000万程度です。
主な資金の使い道としては、
- 参入市場の調査費
- 人件費
- 会社設立費
などになります。
一般的には、以下の項目を個人投資家にアピールすることで、資金調達を行います。
- 魅力的な事業計画書
- 具体的な資本政策
(2)アーリー期(スタートアップ)
アーリー(スタートアップ)とは、起業直後の段階を指します。
実際に事業を開始しているため、資金規模は2000万~5000万程度です。
主な資金の使い道としては、
- 人材の確保
- 市場の獲得
などになります。
スタートアップ企業を支援する、返済不要な
- 助成金
- 補助金
を利用しつつ、計画的な資金繰りを考える必要があります。
(3)シリーズA(エクスパンション)
シリーズA(エクスパンション)とは、事業が本格的にスタートし、軌道に乗り始めた段階を指します。
顧客が増え始める段階であり、資金規模は、数千万~2億程度です。
主な資金の使い道としては、
- 人材採用
- 新規顧客の販促活動
- 設備投資
などです。
事業が軌道に乗り始め、売上を安定させるために、多くの経費が掛かります。
投資家からの資金調達もしやすくなりますが、株式保有比率には注意が必要です。
(4)シリーズB(グロース)
シリーズB(グロース)とは、事業が軌道に乗り、安定した収益を上げられる段階を指します。
上場の前段階でもあり、資金規模は数億程度です。
主な資金の使い道としては、
- 優秀な人材の確保
- 事業の拡大
などです。
投資家からの積極的な投資を受けやすい一方で、扱う資金が非常に大きく、資金繰りが難しい時期でもあります。
(5)シリーズC(レイター)
シリーズC(レイター)とは、事業の黒字化が安定し、イグジットを意識する段階を指します。
全国や海外への展開も視野に入るため、資金規模は10億程度です。
主な資金の使い道としては、
- 優秀な人材の確保
- 全国規模での事業展開
などです。IPOやM&Aといったイグジットに向けた、十分な利益が求められます。
シリーズC(レイター)段階では、銀行などからの資金調達が比較的容易です。
また、イグジットにおける審査では、主に以下のような項目が見られます。
- 企業の収益性・将来性
- 経営状態の健全性
- 管理体制の有効性
- 企業内容の開示の適切性
上記の項目をクリアできるような企業状態の構築が必要です。
3、資金調達における3つのタイプ
資金調達のタイプは、大きく以下3つのタイプに分けらます。
- アセットファイナンス(asset)
- エクイティファイナンス(equity)
- デットファイナンス(debt)
自社のラウンドに適した資金を調達するには、各タイプについて理解しておくことが重要です。
(1)アセットファイナンス(asset)
アセットファイナンスとは、自社の資産を売却することで、資金を調達する方法です。
得られる資金は、資産の価値に影響するので、経営状態に関わらず資金を調達できます。
具体的な資産としては、
- 不動産
- 債権
- 知的財産権
などが一般的に利用されます。
保有している資産を手放すことで、財務負担を減らすことも可能です。
一方、価値ある資産ほど自社にとっても重要な場合が多いので、売却時は実務への影響を考慮する必要があります。
(2)エクイティファイナンス(equity)
エクイティファイナンスとは、自社の株式を購入してもらうことで、資金を調達する方法です。
エクイティファイナンスで得た資金に、返済義務はありません。
集めた資金は、自己資本として扱えるので、財務面での評価UPが期待できます。
一方、購入された株式数に応じて、会社の経営に関われる権利を渡すことが必要となってきています。
株式を発行しすぎると、思うような経営ができなくなる可能性があるので、株式の発行数には注意が必要です。
(3)デットファイナンス(debt)
デットファイナンスとは、お金を借りることで、資金を調達する方法です。
返済義務はありますが、経営権を奪われる心配はありません。
具体的なデットファイナンスの種類としては、
- 金融機関からの融資
- 投資家からの借入
- 社債の発行
などが挙げられます。
契約通りに返済することで、信用実績を積むことも可能です。
一方、借りた金額が大きいほど、利息による返済負担も増えるため、資金繰りを圧迫する可能性があります。
デットファイナンスの1つである「銀行融資」については、「銀行融資を高額・低金利・早く受けるための7つのポイント」で詳しく解説しておりますので、併せてご参考にしてください。
4、ラウンド初期(シード・アーリー期)に利用したい資金調達7選
この章では、特に資金繰りが大変な段階である、ラウンド初期(シード・アーリー)に利用できる資金調達の方法について紹介します。
具体的には、以下7つを活用する方法が挙げられます。
- ファクタリング
- クラウンドファンディング
- エンジェル投資家(個人投資家)
- VC(ベンチャー・キャピタル)
- ICO(イニシャル・コイン・オファリング)
- 日本政策金融公庫
- 補助金、助成金
各特徴を理解することで、資金調達の選択肢を増やし、効果的な資金繰りに繋げることが可能です。
(1)ファクタリング
ファクタリングとは、売買債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、資金を調達する方法です。
売掛金の期限前に現金化できるため、短期で資金が必要な場合にも利用されています。
ファクタリング会社への手数料は差し引かれますが、売掛金の
- 入金遅れ
- 貸し倒れ
といったリスクを回避できます。
しかし、悪徳なファクタリング会社もあるようなので、会社選びには注意が必要です。
(2)クラウンドファンディング
クラウンドファンディングとは、インターネット上で不特定多数の人から「応援」という形で資金を調達する手段です。
多くの人から魅力的と判断されれば、数時間でまとまった資金を調達できます。
返済義務はなく、経営権について気にする必要もありません。
ただし、認知度が低いサービスだと、応援を得るのが難しい場合があります。
クラウドファンディングについて、詳しくは「クラウドファンディングのやり方まとめ~成功するコツを4つ添えて~」で解説していますので、ご参考ください。
(3)エンジェル投資家(個人投資家)
エンジェル投資家とは、創業してまもない企業に投資する個人投資家です。
自社の株式や転換社債と引き換えに、エンジェル投資家から資金を調達します。
エンジェル投資家は、経営に関するアドバイスやサポートをしてくれる場合が多いです。
最近では、企業とエンジェル投資家のマッチングを支援するサービスが多くあるので、エンジェル投資家からの資金調達を考えている場合は、利用してみましょう。
エンジェル投資家およびエンジェル税制について、詳しくは「エンジェル税制について知りたいこと4つ【投資が大きな節税に!?】」で解説しておりますので、ご参考ください。
(3)VC(ベンチャー・キャピタル)
VC(ベンチャー・キャピタル)とは、成長性が高いと見込まれるベンチャー企業に出資する投資会社です。
VC(ベンチャー・キャピタル)では、成長期の早期段階にある未上場企業に投資をすることで、上場時の大きなキャピタルゲインを狙っています。
「キャピタルゲイン」とは、投資額と株式公開後の売却額の差で得られる利益のことです。
VCは投資だけではなく、ハンズオンと呼ばれる積極的な経営支援によって、上場やM&Aへのサポートも行います。
ベンチャーキャピタルについて、詳しくは「ベンチャーキャピタル(VC)とは?VCから資金調達をする際の3つの注意点」にて解説しておりますので、ご参考ください。
①CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)
CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは、投資を本業としない、VCです。
CVCでは、自社事業と関連のあるベンチャー企業に投資することで、事業的な相乗効果を狙っています。
②シードアクセラレータ
シードアクセラレーターとは、シード期のベンチャー企業に特化して投資する、VCです。
ビジネスモデルよりも、
- 創業者の資質
- サービスの優位性
などを重視して、投資及び支援が行われます。
(5)ICO(イニシャル・コイン・オファリング)
ICO(イニシャル・コイン・オファリング)とは、暗号通貨(仮想通貨)を発行し、投資家に購入してもらうことで、資金を調達する方法です。
ICOを利用することで、国内にとどまらず、全世界の投資家から、資金を集められます。
株式発行とは異なり、
- 議決権
- 配当
を投資家に与える必要がないのが特徴です。
(6)日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、個人事業主や中小企業を中心に融資を行う政府系金融機関です。
無担保・無保証かつ低金利な融資が受けられます。
起業家向けの
- 創業融資
- 新事業活動促進資金
などの制度があります。
ただし、融資を受けるには、必要書類の提出や面接が必要です。
一般的な融資と比べて審査項目も多いため、実際に資金を受け取るまでに時間がかかる場合があります。
(7)補助金、助成金
補助金・助成金とは、国などの公共団体から支給される資金のことです。
特定の制度に対して申請を行い、受理されることで利用できます。
企業活動を促進するために設けられており、返済の義務はありません。
ただし、すべての企業が利用できる訳ではありません。
補助金や助成金を利用するには、特定の要件を満たす必要があります。
複雑な要件もあるので、申請する際には、正確な制度についての理解が必要です。
例えば、テレワーク導入によって補助金や助成金を受け取れる場合があります。
詳しくは、「テレワークの補助金・助成金2選!内容と申請の流れも簡単に解説!」で解説しておりますので、あわせてご参考ください。
5、ラウンドに適した資金調達をするなら税理士を活用!
資金調達ラウンドを含め、資金調達に関する相談は、税理士に相談することをおすすめします。
税理士へ相談することによるメリットは、以下のとおりです。
- 資金調達ラウンドに合った金融機関を選定・紹介してくれる
- 資金調達先との面談・交渉をサポートしてくれる
- 必要書類を作成してくれる
(1)資金調達ラウンドに合った金融機関の選定・紹介
効果的な資金調達を行うには、自社のラウンドに適した方法を選択することが重要です。
信用力の低い組織から資金を調達してしまうと、上場時の審査に問題となることがあります。
税理士は、様々な投資家や金融機関とのつながりがあるため、各会社に適した安全な資金調達先を紹介することができます。
(2)資金調達先との面談・交渉のサポート
どの資金調達方法においても、調達先である
- 投資家
- 仲介会社
- 金融機関
との面談や交渉は、必須です。
面談や交渉を進める中で、不利な条件で契約を求められる場合もあります。
資金調達にあまり慣れていない場合には、こうした契約内容に気がつくことは難しいです。
税理士に相談をすることで、契約において注意すべき点などのアドバイスが受けられます。また、面談や交渉の場に同席することで、直接的なサポートも可能です。
(3)必要書類(事業計画書、決算書、資金繰り表)の作成
資金調達を行うには、
- 事業計画書
- 決算書
- 資金繰り表
など、さまざまな書類が必要です。
金融機関での審査に通るためには、上記の書類を過不足なく適切に準備することが求められます。
税理士は、上記の書類に対する実務経験と専門知識が豊富です。
書類面での業務を税理士へ任せることで、自社の事業に専念でき、結果として会社の収益をより伸ばすことにも繋がります。
まとめ
今回は「資金調達ラウンド」について解説しました。
資金調達ラウンドとは、企業の成長度合いを5段階で表した指標です。
各ラウンドによって、資金規模や効果的な資金調達方法が異なります。
自社の資金調達ラウンドに適した資金繰りを検討している方は、税理士へ気軽に相談してみましょう。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
初回のご相談は無料ですので
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。