公的融資で法人が業績向上させるために知りたい5つのポイント
「公的融資は民間融資とどう違うの?」
「具体的な業績がなく信用力もないけれど公的融資は受けられるのだろうか……」
公的融資は、数多くある融資制度の1つです。
創業したばかりのスタートアップ企業や、これから起業予定の方にはおすすめの融資制度です。
しかし、公的融資にはメリットもありますが、利用の際にいくつか注意点もあります。
今回は、公的融資の概要を説明したうえで、
- 公的融資を利用するメリット
- 公的融資を利用する場合の注意点
について、しっかりとわかりやすく解説します。
あわせて、今般のコロナ禍の影響で業績が下がった経営者をサポートする公的融資についても、紹介します。
この記事が、公的融資を利用したいと考えている経営者のみなさまの参考になれば幸いです。
1、公的融資とは
(1)公的融資の概要
公的融資とは、公的機関が行う融資のことをいいます。
「公的機関」は、日本政策金融公庫や地方自治体などです。
公的融資には、「個人向け」と「法人向け」のものがあります。
法人向けの公的融資は、例えば以下のようなものがあります。
- 中小企業や個人事業主、起業予定の方を支援する目的とした「創業融資」
- 設備資金や運転資金などの借入を目的とした「事業融資」
本項では、公的融資の概要をしっかり把握できるように、下記の事項について確認しましょう。
- 公的融資と民間融資の違い
- 公的融資と補助金・助成金の違い
①公的融資と民間融資の違い
「融資」と聞くと、「銀行からお金を借りる」というイメージを抱く方は多いのではないでしょうか。
公的融資に対するものとして、「民間融資」というものがあります。
民間融資は、銀行や信用組合などの金融機関が行う融資のことです。
公的融資と民間融資の大まかな違いは、以下の表のとおりです。
公的融資 | 民間融資 | |
融資元 | 公的機関 (日本政策金融公庫や地方自治体など) |
民間の金融機関 (銀行や信用機関など) |
融資上限額 | 4,800万円(※1) | 1億円以内(※2) |
金利 | 民間融資と比較して低い(※3) | 融資の種類による(※4) |
審査 | 民間融資と比較して審査に通りやすい | 融資の種類によっては審査が通りにくいものも多い(プロパー融資など) |
(※1)日本政策金融公庫の「一般貸付」の場合。
(※2)三井住友銀行の「中小企業向け融資ビジネスセレクトローン」の場合。
(※3)日本政策金融公庫の中小企業事業における融資の金利は、貸付期間5年以内の場合の基準利率は1.11%(令和3年4月1日時点)。
(※4)三井住友銀行の「中小企業向け融資ビジネスセレクトローン」の金利は、借入期間最長7年で、2.125%~(令和元年10月1日時点)。
公的融資は、民間融資よりも融資額が低い傾向があります。
金利については、公的融資の方が低い傾向です。
審査は、公的融資の方が、創業したてや信用がない企業の場合でも、通過しやすいという特徴があります。
公的融資は、上記のような企業であっても、金利の負担も少なく長期の借入れが可能です。
一方、創業したてや信用のない企業は、民間企業の融資を受けることは厳しい傾向にあります。
民間融資の融資元は銀行や信用金庫などの金融機関です。
三菱UFJ銀行や三井住友銀行などのメガバンクの場合、全国各地に支店があります。
融資を受ける前の不安や返済に関する悩みなどについて、すぐに相談できるという点がメリットといえるでしょう。
②公的融資と補助金・助成金の違い
公的融資に限ったことではありませんが、「融資」には返済義務があります。
補助金や助成金を受けるためには一定の条件を満たす必要があります。
公的融資を受けるためにも、審査を通過しなければなりません。
しかし、公的融資の「中小企業や個人事業主、起業予定の方を支援する」という性質上、基本的には審査を通過しやすく融資を受けることが可能です。
(2)法人向けの公的融資
法人向けの公的融資は、大きく次の制度に分類されます。
- 日本政策金融公庫
- 信用保証協会
- 商工会議所
- 自治体の融資
本項では、法人向けの公的融資について、具体的に紹介します。
①日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、主に中小企業や個人事業主などへの事業者向け資金の貸付を専門的に行う、政府が100%出資している機関です。
「株式会社日本政策金融公庫法」に基づき、2008年10月1日に設立され、財務省が所管しています。
日本政策金融公庫が特に力を入れているのは、「新創業融資」です。
新創業融資は、スタートアップ企業の事業資金をサポートするための融資です。
新創業融資以外にも、中小企業や個人事業主を対象にした事業資金の融資についても、積極的に行っています。
②信用保証協会
信用保証協会とは、信用保証協会法に基づいて設立された公的機関です。
信用保証協会では、中小企業などが、融資を受けやすくなるようにサポートします。
信用保証協会について、詳しくは「信用保証協会とは?わかりやすく解説!高額融資のため知りたいこと5つ」をご参考ください。
③商工会議所
商工会議所は、営利を目的としない「非営利団体」で、市区町村の一定地区内の商工業者によって組織されています。
商工業の改善や発展を目的としており、経営者や個人事業者などが会員となれる自由会員制の団体です。
商工会議所でも、会員へ融資を提供しています。
金利についても、比較的低金利の融資となっています。
融資の他にも、商工会議所では、次のようなサポートを受けることが可能です。
- 経営サポート
- 資金調達サポート
④自治体の融資(制度融資)
都道府県や市区町村が行う融資(制度融資)も、公的融資の1つです。
制度融資について、詳しくは「制度融資とは?有利な融資を進めるために知りたい6つのポイント」をご参考ください。
2、公的融資を利用するメリット
公的融資を利用するメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 比較的審査が通りやすい
- 金利が低い傾向にある
- 民間融資で提供していない融資がある
- 保証人・担保が不要
民間融資と比較した公的融資のメリットについて、上記の項目をそれぞれみていきましょう。
(1)比較的審査が通りやすい
公的融資は、民間融資同様「融資審査」を通過しなければ、融資を受けることはできません。
民間融資の場合には、融資審査の判断基準は特に「返済能力があるか」を重視されます。
一方、公的融資の審査判断基準は、「一定の要件を満たすかどうか」を重視し、返済能力についてはそこまで重視しません。
創業したての企業や、実績が少なく信用力のない企業などでも、公的融資は民間融資と比較すると審査が通りやすいという点がメリットです。
(2)金利が低い傾向にある
「1、(2)法人向けの公的融資」で紹介したような、公的融資を提供する国の機関や地方公共団体は、民間の金融機関などと異なり、「収益の最大化」を目的としていません。
以上のことから、公的融資は民間融資と比較すると、金利が低い傾向にあります。
また、創業したばかりの企業や信用力のない企業に対する融資において、高金利としてしまうと、企業は金利の返済に追われ倒産してしまいます。
公的融資を提供する国の機関や地方公共団体は、上記のような企業をサポートする目的で融資を行っているという点からも、金利を低く設定しているのです。
他にも、公的融資は、金利が低いという特徴から、5年や10年といった長期借入が可能です。
低金利であるということは、融資先にとっても利益から支払う金利の額が少なくなるため、公的融資は長期運転資金としても活用できるでしょう。
(3)民間融資で提供していない融資がある
民間融資では、これから起業する方や創業したての企業に対しては、一般的に融資をしてくれません。
(2)でも述べたとおり、上記のような企業は、信用力がないため融資審査で判断するための情報が非常に少なく、返済能力があるかを正確に判断できないためです。
一方、公的融資では、積極的に上記のような企業に対して、創業融資などの融資を行っています。
これから起業したい方や創業して間もない企業は、民間融資ではなく、まずは公的融資を検討しましょう。
(4)保証人・担保が不要
民間融資の審査結果に差支えがある場合には、融資を希望する金融機関などは以下のようなものを要求することがあります。
- 保証人
- 担保
保証人については、経営者以外の第三者を選定することになります。
担保については、以下のようなものがあります。
- 定期預金担保
- 不動産担保
- 有価証券担保
- 売掛債権担保
一方、公的融資の場合は、原則として「担保なし」「保証人なし」で融資を受けることが可能です。
3、公的融資を利用する注意点
前章では、公的融資のメリットについて解説しました。
公的融資は、創業したばかりの企業などにとっては非常にやさしい融資制度ということをご理解いただけたのではないでしょうか。
しかし、公的融資はメリットばかりではありません。公的融資を利用する注意点も存在します。
具体的には、次のような点が公的融資を利用する注意点となります。
- 審査に時間がかかる傾向にある
- 融資額に上限がある
- 公的融資の種類が非常に多く選択しづらい
上記の注意点について、前章と同様に、民間融資と比較しながら具体的にみていきましょう。
(1)審査に時間がかかる傾向にある
公的融資を受けるためには、申込みから借入れまで、1~3ヶ月程度かかる傾向があります。
民間融資であれば、長くても1ヶ月程度の期間で融資を受けられることが多いでしょう。
民間融資と比較すると、公的融資は実際に資金を受け取れるまでに時間がかかるという点に注意しなければなりません。
制度融資のように、複数の機関が連携する公的融資は、実際に融資を受けられるまでにより時間がかかる傾向があります。
なぜ時間がかかるのかというと、金融機関と保証協会それぞれで審査が必要だからです。
(2)融資額に上限がある
公的融資には、「これから起業する人や創業したばかりの起業をサポートする」という役割があります。
公的融資では、各融資制度ごとに上限額が決められています。
前述した公的融資の性質上、融資上限額が民間融資と比較すると少額である傾向が多いです。
例えば、創業したばかりの企業が、公的融資の融資枠を使い切ってしまうという状況も少なくありません。
公的融資の融資枠を使い切ってしまうと、新たに資金調達したいと考えても、公的融資を利用できなくなってしまうので注意が必要です。
(3)公的融資の種類が非常に多く選択しづらい
日本政策金融公庫や商工会議所などは、組織ごとに提供する融資制度が決められています。
融資制度の数が多く、自分の企業がどの融資制度を利用すべきなのか、わかりにくいというのが現状です。
制度融資も、自治体ごとに提供する融資制度を決めているため、自治体ごとに提供する融資制度が異なります。
日本政策金融公庫や商工会議所などと同様に、自社で利用できる融資制度がわかりにくいため、選択しづらいという点に注意が必要です。
4、公的融資は新型コロナウイルス感染拡大による業績不振も支援
2020年の新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、経済的に大打撃を受けており、現在でも財政状況が振るわないという企業も少なくありません。
コロナ禍において、業績が悪化した企業に対して資金をサポートしてくれる公的融資もあります。
本章では、新型コロナウイルス感染拡大による業績不振を支援してくれる公的融資を紹介します。
(1)新型コロナウイルス感染症特別貸付(日本政策金融公庫)
日本政策金融公庫では、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」として、業績が悪化した中小企業を支援するための融資を無担保で提供しています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う社会的要因等によって必要な設備資金および長期運転資金を目的として、融資を受けることが可能です。
融資限度額は、別枠で直接貸付6億円となります。
金利は、日本政策金融公庫の基準利率が原則です。
その他詳細の条件などは、日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」をご確認ください。
(2)新型コロナウイルス感染症対応融資(伴走全国)(東京都)
東京都の新型コロナウイルス関連の公的融資として、「新型コロナウイルス感染症対応融資(伴走全国)」があります。
新型コロナウイルスの影響によって、業績が悪化した東京都内の中小企業や組合が、金融機関との対話を通じて策定する「経営行動計画書」に基づき、金融機関による継続的な伴走支援を受けながら、経営改善などを図る場合に利用できる融資です。
融資限度額は4,000万円で、信用保証料は0.85%です(経営者保証免除対応適用は1.05%)。
保証料は、国による補助があり、事業者負担は一律0.20%(経営者保証免除対応適用の場合を含む)となります。
なお、2021年6月21日から12月末までは、事業者による保証料負担なしで融資を受けられます。
その他詳細の条件などは、東京都の「新型コロナウイルス感染症対応融資(伴走全国)」をご確認ください。
なお、東京都だけでなく、他の都道府県や市区町村でも、新型コロナウイルス関連の融資を提供しているかと思いますので、それぞれの自治体に確認してみるとよいでしょう。
5、公的融資をはじめ融資について不安があったら税理士へ相談しよう
ここまでで、公的融資について解説しました。
公的融資をはじめ、融資制度にはさまざまな種類のものがあります。
「この事業計画書で融資の審査が通るかな……」
「できるだけ高額な融資を受けたいけどどうすればいいのだろう……」
まだ融資を受けるのに慣れていないスタートアップ企業の経営者などにとって、以上のような融資に対する不安は尽きないでしょう。
融資についての不安や悩みは、税理士へ相談することをおすすめします。
本章では、融資について税理士へ相談するメリットを紹介します。
(1)事業計画書の書き方をアドバイスしてくれる
創業したばかりの企業の経営者やこれから起業を検討している方は、事業計画書の書き方についてよく知らないという方も少なくないでしょう。
事業計画書は、融資の審査通過のために非常に重要な資料ですので、気を抜かずにしっかり完成させたいところです。
税理士は、事業計画書の書き方についてのアドバイスが可能です。
融資の審査通過のためだけでなく、事業を確実に成功させるための事業計画書の書き方について、しっかりサポートしてくれるでしょう。
事業計画書の書き方については、「事業計画書の書き方とは?資金調達や事業を成功させるための5つのコツ」でも解説しているので、あわせてご確認ください。
(2)経営の知識があるので業績アップへサポートしてくれる
税理士のなかには、「経営」の原理原則に詳しい税理士も多く存在します。
経営について詳しい税理士は、融資を受ける際の強力な味方です。
ビジネスに詳しい税理士なら、業績向上のためのアドバイスやサポートが期待できるでしょう。
また、自社の業界の知識に精通している税理士なら、現在の財政状況から今後どのように経営を進めればよいかなど、より具体的なアドバイスも期待できます。
(3)融資以外の資金調達について提案してくれる
資金調達方法は、融資以外にも多くの種類があります。
税理士は、企業の現在の財政状況や業績から、融資以外にも適切な資金調達方法を判断し、提案してくれるでしょう。
当メディア「TAX&ACCOUNTING MALL」でも、融資以外の資金調達に関する次のようなコンテンツを公開しています。
ぜひあわせてご確認ください。
まとめ
今回は、「公的融資」について解説しました。
公的融資は民間融資と異なり、創業したての企業やこれから起業を検討している方をサポートする目的で融資を提供しています。
民間融資よりも、公的融資は融資審査を通過しやすかったり金利が低かったりという特徴があります。
新型コロナウイルスの影響で、業績が悪化してしまったという中小企業向けの公的融資もあるため、利用したい場合には各機関へ確認してみましょう。
しかし、公的融資を受ける場合の注意点も存在するため、公的融資を受けたいと考えた場合は、事前にしっかり注意点についても把握しておきましょう。
公的融資を受けたいけれど、不安や悩みがあるという場合には、資金調達のプロである税理士へ相談することもおすすめします。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。
「公的融資は民間融資とどう違うの?」
「具体的な業績がなく信用力もないけれど公的融資は受けられるのだろうか……」
公的融資は、数多くある融資制度の1つです。
創業したばかりのスタートアップ企業や、これから起業予定の方にはおすすめの融資制度です。
しかし、公的融資にはメリットもありますが、利用の際にいくつか注意点もあります。
今回は、公的融資の概要を説明したうえで、
- 公的融資を利用するメリット
- 公的融資を利用する場合の注意点
について、しっかりとわかりやすく解説します。
あわせて、今般のコロナ禍の影響で業績が下がった経営者をサポートする公的融資についても、紹介します。
この記事が、公的融資を利用したいと考えている経営者のみなさまの参考になれば幸いです。
1、公的融資とは
(1)公的融資の概要
公的融資とは、公的機関が行う融資のことをいいます。
「公的機関」は、日本政策金融公庫や地方自治体などです。
公的融資には、「個人向け」と「法人向け」のものがあります。
法人向けの公的融資は、例えば以下のようなものがあります。
- 中小企業や個人事業主、起業予定の方を支援する目的とした「創業融資」
- 設備資金や運転資金などの借入を目的とした「事業融資」
本項では、公的融資の概要をしっかり把握できるように、下記の事項について確認しましょう。
- 公的融資と民間融資の違い
- 公的融資と補助金・助成金の違い
①公的融資と民間融資の違い
「融資」と聞くと、「銀行からお金を借りる」というイメージを抱く方は多いのではないでしょうか。
公的融資に対するものとして、「民間融資」というものがあります。
民間融資は、銀行や信用組合などの金融機関が行う融資のことです。
公的融資と民間融資の大まかな違いは、以下の表のとおりです。
公的融資 | 民間融資 | |
融資元 | 公的機関 (日本政策金融公庫や地方自治体など) |
民間の金融機関 (銀行や信用機関など) |
融資上限額 | 4,800万円(※1) | 1億円以内(※2) |
金利 | 民間融資と比較して低い(※3) | 融資の種類による(※4) |
審査 | 民間融資と比較して審査に通りやすい | 融資の種類によっては審査が通りにくいものも多い(プロパー融資など) |
(※1)日本政策金融公庫の「一般貸付」の場合。
(※2)三井住友銀行の「中小企業向け融資ビジネスセレクトローン」の場合。
(※3)日本政策金融公庫の中小企業事業における融資の金利は、貸付期間5年以内の場合の基準利率は1.11%(令和3年4月1日時点)。
(※4)三井住友銀行の「中小企業向け融資ビジネスセレクトローン」の金利は、借入期間最長7年で、2.125%~(令和元年10月1日時点)。
公的融資は、民間融資よりも融資額が低い傾向があります。
金利については、公的融資の方が低い傾向です。
審査は、公的融資の方が、創業したてや信用がない企業の場合でも、通過しやすいという特徴があります。
公的融資は、上記のような企業であっても、金利の負担も少なく長期の借入れが可能です。
一方、創業したてや信用のない企業は、民間企業の融資を受けることは厳しい傾向にあります。
民間融資の融資元は銀行や信用金庫などの金融機関です。
三菱UFJ銀行や三井住友銀行などのメガバンクの場合、全国各地に支店があります。
融資を受ける前の不安や返済に関する悩みなどについて、すぐに相談できるという点がメリットといえるでしょう。
②公的融資と補助金・助成金の違い
公的融資に限ったことではありませんが、「融資」には返済義務があります。
補助金や助成金を受けるためには一定の条件を満たす必要があります。
公的融資を受けるためにも、審査を通過しなければなりません。
しかし、公的融資の「中小企業や個人事業主、起業予定の方を支援する」という性質上、基本的には審査を通過しやすく融資を受けることが可能です。
(2)法人向けの公的融資
法人向けの公的融資は、大きく次の制度に分類されます。
- 日本政策金融公庫
- 信用保証協会
- 商工会議所
- 自治体の融資
本項では、法人向けの公的融資について、具体的に紹介します。
①日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、主に中小企業や個人事業主などへの事業者向け資金の貸付を専門的に行う、政府が100%出資している機関です。
「株式会社日本政策金融公庫法」に基づき、2008年10月1日に設立され、財務省が所管しています。
日本政策金融公庫が特に力を入れているのは、「新創業融資」です。
新創業融資は、スタートアップ企業の事業資金をサポートするための融資です。
新創業融資以外にも、中小企業や個人事業主を対象にした事業資金の融資についても、積極的に行っています。
②信用保証協会
信用保証協会とは、信用保証協会法に基づいて設立された公的機関です。
信用保証協会では、中小企業などが、融資を受けやすくなるようにサポートします。
信用保証協会について、詳しくは「信用保証協会とは?わかりやすく解説!高額融資のため知りたいこと5つ」をご参考ください。
③商工会議所
商工会議所は、営利を目的としない「非営利団体」で、市区町村の一定地区内の商工業者によって組織されています。
商工業の改善や発展を目的としており、経営者や個人事業者などが会員となれる自由会員制の団体です。
商工会議所でも、会員へ融資を提供しています。
金利についても、比較的低金利の融資となっています。
融資の他にも、商工会議所では、次のようなサポートを受けることが可能です。
- 経営サポート
- 資金調達サポート
④自治体の融資(制度融資)
都道府県や市区町村が行う融資(制度融資)も、公的融資の1つです。
制度融資について、詳しくは「制度融資とは?有利な融資を進めるために知りたい6つのポイント」をご参考ください。
2、公的融資を利用するメリット
公的融資を利用するメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 比較的審査が通りやすい
- 金利が低い傾向にある
- 民間融資で提供していない融資がある
- 保証人・担保が不要
民間融資と比較した公的融資のメリットについて、上記の項目をそれぞれみていきましょう。
(1)比較的審査が通りやすい
公的融資は、民間融資同様「融資審査」を通過しなければ、融資を受けることはできません。
民間融資の場合には、融資審査の判断基準は特に「返済能力があるか」を重視されます。
一方、公的融資の審査判断基準は、「一定の要件を満たすかどうか」を重視し、返済能力についてはそこまで重視しません。
創業したての企業や、実績が少なく信用力のない企業などでも、公的融資は民間融資と比較すると審査が通りやすいという点がメリットです。
(2)金利が低い傾向にある
「1、(2)法人向けの公的融資」で紹介したような、公的融資を提供する国の機関や地方公共団体は、民間の金融機関などと異なり、「収益の最大化」を目的としていません。
以上のことから、公的融資は民間融資と比較すると、金利が低い傾向にあります。
また、創業したばかりの企業や信用力のない企業に対する融資において、高金利としてしまうと、企業は金利の返済に追われ倒産してしまいます。
公的融資を提供する国の機関や地方公共団体は、上記のような企業をサポートする目的で融資を行っているという点からも、金利を低く設定しているのです。
他にも、公的融資は、金利が低いという特徴から、5年や10年といった長期借入が可能です。
低金利であるということは、融資先にとっても利益から支払う金利の額が少なくなるため、公的融資は長期運転資金としても活用できるでしょう。
(3)民間融資で提供していない融資がある
民間融資では、これから起業する方や創業したての企業に対しては、一般的に融資をしてくれません。
(2)でも述べたとおり、上記のような企業は、信用力がないため融資審査で判断するための情報が非常に少なく、返済能力があるかを正確に判断できないためです。
一方、公的融資では、積極的に上記のような企業に対して、創業融資などの融資を行っています。
これから起業したい方や創業して間もない企業は、民間融資ではなく、まずは公的融資を検討しましょう。
(4)保証人・担保が不要
民間融資の審査結果に差支えがある場合には、融資を希望する金融機関などは以下のようなものを要求することがあります。
- 保証人
- 担保
保証人については、経営者以外の第三者を選定することになります。
担保については、以下のようなものがあります。
- 定期預金担保
- 不動産担保
- 有価証券担保
- 売掛債権担保
一方、公的融資の場合は、原則として「担保なし」「保証人なし」で融資を受けることが可能です。
3、公的融資を利用する注意点
前章では、公的融資のメリットについて解説しました。
公的融資は、創業したばかりの企業などにとっては非常にやさしい融資制度ということをご理解いただけたのではないでしょうか。
しかし、公的融資はメリットばかりではありません。公的融資を利用する注意点も存在します。
具体的には、次のような点が公的融資を利用する注意点となります。
- 審査に時間がかかる傾向にある
- 融資額に上限がある
- 公的融資の種類が非常に多く選択しづらい
上記の注意点について、前章と同様に、民間融資と比較しながら具体的にみていきましょう。
(1)審査に時間がかかる傾向にある
公的融資を受けるためには、申込みから借入れまで、1~3ヶ月程度かかる傾向があります。
民間融資であれば、長くても1ヶ月程度の期間で融資を受けられることが多いでしょう。
民間融資と比較すると、公的融資は実際に資金を受け取れるまでに時間がかかるという点に注意しなければなりません。
制度融資のように、複数の機関が連携する公的融資は、実際に融資を受けられるまでにより時間がかかる傾向があります。
なぜ時間がかかるのかというと、金融機関と保証協会それぞれで審査が必要だからです。
(2)融資額に上限がある
公的融資には、「これから起業する人や創業したばかりの起業をサポートする」という役割があります。
公的融資では、各融資制度ごとに上限額が決められています。
前述した公的融資の性質上、融資上限額が民間融資と比較すると少額である傾向が多いです。
例えば、創業したばかりの企業が、公的融資の融資枠を使い切ってしまうという状況も少なくありません。
公的融資の融資枠を使い切ってしまうと、新たに資金調達したいと考えても、公的融資を利用できなくなってしまうので注意が必要です。
(3)公的融資の種類が非常に多く選択しづらい
日本政策金融公庫や商工会議所などは、組織ごとに提供する融資制度が決められています。
融資制度の数が多く、自分の企業がどの融資制度を利用すべきなのか、わかりにくいというのが現状です。
制度融資も、自治体ごとに提供する融資制度を決めているため、自治体ごとに提供する融資制度が異なります。
日本政策金融公庫や商工会議所などと同様に、自社で利用できる融資制度がわかりにくいため、選択しづらいという点に注意が必要です。
4、公的融資は新型コロナウイルス感染拡大による業績不振も支援
2020年の新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、経済的に大打撃を受けており、現在でも財政状況が振るわないという企業も少なくありません。
コロナ禍において、業績が悪化した企業に対して資金をサポートしてくれる公的融資もあります。
本章では、新型コロナウイルス感染拡大による業績不振を支援してくれる公的融資を紹介します。
(1)新型コロナウイルス感染症特別貸付(日本政策金融公庫)
日本政策金融公庫では、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」として、業績が悪化した中小企業を支援するための融資を無担保で提供しています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う社会的要因等によって必要な設備資金および長期運転資金を目的として、融資を受けることが可能です。
融資限度額は、別枠で直接貸付6億円となります。
金利は、日本政策金融公庫の基準利率が原則です。
その他詳細の条件などは、日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」をご確認ください。
(2)新型コロナウイルス感染症対応融資(伴走全国)(東京都)
東京都の新型コロナウイルス関連の公的融資として、「新型コロナウイルス感染症対応融資(伴走全国)」があります。
新型コロナウイルスの影響によって、業績が悪化した東京都内の中小企業や組合が、金融機関との対話を通じて策定する「経営行動計画書」に基づき、金融機関による継続的な伴走支援を受けながら、経営改善などを図る場合に利用できる融資です。
融資限度額は4,000万円で、信用保証料は0.85%です(経営者保証免除対応適用は1.05%)。
保証料は、国による補助があり、事業者負担は一律0.20%(経営者保証免除対応適用の場合を含む)となります。
なお、2021年6月21日から12月末までは、事業者による保証料負担なしで融資を受けられます。
その他詳細の条件などは、東京都の「新型コロナウイルス感染症対応融資(伴走全国)」をご確認ください。
なお、東京都だけでなく、他の都道府県や市区町村でも、新型コロナウイルス関連の融資を提供しているかと思いますので、それぞれの自治体に確認してみるとよいでしょう。
5、公的融資をはじめ融資について不安があったら税理士へ相談しよう
ここまでで、公的融資について解説しました。
公的融資をはじめ、融資制度にはさまざまな種類のものがあります。
「この事業計画書で融資の審査が通るかな……」
「できるだけ高額な融資を受けたいけどどうすればいいのだろう……」
まだ融資を受けるのに慣れていないスタートアップ企業の経営者などにとって、以上のような融資に対する不安は尽きないでしょう。
融資についての不安や悩みは、税理士へ相談することをおすすめします。
本章では、融資について税理士へ相談するメリットを紹介します。
(1)事業計画書の書き方をアドバイスしてくれる
創業したばかりの企業の経営者やこれから起業を検討している方は、事業計画書の書き方についてよく知らないという方も少なくないでしょう。
事業計画書は、融資の審査通過のために非常に重要な資料ですので、気を抜かずにしっかり完成させたいところです。
税理士は、事業計画書の書き方についてのアドバイスが可能です。
融資の審査通過のためだけでなく、事業を確実に成功させるための事業計画書の書き方について、しっかりサポートしてくれるでしょう。
事業計画書の書き方については、「事業計画書の書き方とは?資金調達や事業を成功させるための5つのコツ」でも解説しているので、あわせてご確認ください。
(2)経営の知識があるので業績アップへサポートしてくれる
税理士のなかには、「経営」の原理原則に詳しい税理士も多く存在します。
経営について詳しい税理士は、融資を受ける際の強力な味方です。
ビジネスに詳しい税理士なら、業績向上のためのアドバイスやサポートが期待できるでしょう。
また、自社の業界の知識に精通している税理士なら、現在の財政状況から今後どのように経営を進めればよいかなど、より具体的なアドバイスも期待できます。
(3)融資以外の資金調達について提案してくれる
資金調達方法は、融資以外にも多くの種類があります。
税理士は、企業の現在の財政状況や業績から、融資以外にも適切な資金調達方法を判断し、提案してくれるでしょう。
当メディア「TAX&ACCOUNTING MALL」でも、融資以外の資金調達に関する次のようなコンテンツを公開しています。
ぜひあわせてご確認ください。
まとめ
今回は、「公的融資」について解説しました。
公的融資は民間融資と異なり、創業したての企業やこれから起業を検討している方をサポートする目的で融資を提供しています。
民間融資よりも、公的融資は融資審査を通過しやすかったり金利が低かったりという特徴があります。
新型コロナウイルスの影響で、業績が悪化してしまったという中小企業向けの公的融資もあるため、利用したい場合には各機関へ確認してみましょう。
しかし、公的融資を受ける場合の注意点も存在するため、公的融資を受けたいと考えた場合は、事前にしっかり注意点についても把握しておきましょう。
公的融資を受けたいけれど、不安や悩みがあるという場合には、資金調達のプロである税理士へ相談することもおすすめします。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
初回のご相談は無料ですので
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。