株式投資型クラウドファンディングとは?メリット・注意点を徹底解説
近年、一般にも認知が広がっているクラウドファンディングですが、「株式投資型クラウドファンディング」についてはご存知でしょうか。
株式投資型クラウドファンディングは、海外では一般的な資金調達手段となっているものの、日本ではまだ馴染みがないかもしれません。
実は、株式投資型クラウドファンディングでは1~3ヶ月で数千万単位の資金を集められるため、シードやアーリー段階にあるベンチャー企業に適した資金方法なのです。
今回の記事では、株式投資型クラウドファンディングを検討している企業や投資家に向けて、
- 株式投資型クラウドファンディングの国内利用状況
- 企業側のメリット・注意点
- 投資家側のメリット・注意点
- 株式投資型クラウドファンディングの手続方法
について、解説いたします。
本記事にて、株式投資型クラウドファンディングについての理解が深まり、適切な資金調達としての活用へとつなげていただければ幸いです。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
お気軽にべリーベスト税理士事務所までお問い合わせください。
1、株式投資型クラウドファンディングとは?
株式投資型クラウドファンディング(株式投資型CF)とは、ベンチャー企業の非上場株式や新株予約権を発行することで、個人投資家から資金調達するクラウンドファンディングです。
主に、成長初期段階(シード・アーリー)にあるベンチャー企業の資金調達手段として利用されます。
ちなみに、クラウンドファンディングとは、インターネットを通じて多くの人から、少額の資金を集める仕組みです。
個人投資家は、その企業の株式を保有することになります。
そのため、企業がイグジット(IPO、M&Aなど)をした際には、大きなリターンを得ることができるのです。
日本では、あまり馴染みのない株式投資型クラウドファンディングですが、米英では一般的な資金調達方法として定着しています。
(出典:金融庁 事務局説明資料)
(1)株式投資型クラウドファンディングの利用状況|平均資金調達額は3,178万
2020年時点での株式投資型クラウドファンディングの平均資金調達額は、3,178万円となっています(下表参照)。
1件あたりの平均投資家数は198人です。
成約件数は69件で、多いとは言えませんが、年々に増加してきています。
スタートアップ時期にあるベンチャー企業にとっては、有効な資金調達手段の1つとなりそうです。
(出典:金融庁の事務局説明資料)
(2)クラウドファンディングの種類
一般的な認知度も高まっているクラウドファンディングには、株式投資型以外にも以下の種類があります。
- 寄付型
- 購入型
- 融資型(貸付型・ソーシャルレンディング)
- ファンド型
クラウドファンディングのやり方について、詳しくは「クラウドファンディングのやり方まとめ~成功するコツを4つ添えて~」で解説していますので、あわせてご参考ください。
本項では、各クラウドファンディングについて紹介していきます。
①寄付型
寄付型とは、社会貢献(災害支援など)に対する活動資金を集めるクラウドファンディングです。
原則、支援者にリターンはありませんが、お礼の手紙や写真などが届く場合があります。
寄付型クラウドファンディングにおける、税金についての考え方は少し複雑です。
購入型クラウドファンディングと違い、資金を提供する相手や資金提供を受ける相手が法人なのか個人なのかを考える必要があります。
資金提供者の場合、資金を提供しているだけなので、所得税は非課税です。
一定の法人に資金を提供した場合は、寄付金控除を受けられます。寄付金控除を受ける場合には、確定申告が必要です。
一方、寄付型クラウドファンディングの資金調達者の場合、無償で資金を受け取っているため、収入とみなされます。
資金調達者側には税金が課されますが、調達先が「個人」か「法人」かによって、課される税金が異なるため、注意が必要です。
個人からの調達は、「贈与」とみなされ、「贈与税」が課されます。贈与税には、年間110万円の基礎控除があります。
寄付型クラウドファンディングの調達額が110万円を超える場合は、贈与税の申告と納税が必要となるため、注意しましょう。
法人からの調達は、「一時所得」とみなされ、「所得税」が課されます。一時所得には、50万円の特別控除があります。
寄付型クラウドファンディングの出資額が50万円を超える場合には、確定申告と納税が必要です。
②購入型
購入型とは、特定のモノやサービスに対する資金を募る、クラウドファンディングです。
支援者は、支援額に応じたリターン(モノや商品、サービスなど)を受け取ることができます。
金銭的なリターンを受けることはできません。
③融資型(貸付型・ソーシャルレンディング)
融資型とは、融資を受けたい会社と、融資をしたい個人をマッチする、金融型のクラウドファンディングです。
まず、Web上で融資したい個人を募集し、小口資金を集めます。
その後、大口化した上で特定の企業に融資するという仕組みです。
支援者は、毎月決まった利率で利息を受け取ることができます。
④ファンド型
ファンド型とは、事業(プロジェクト)に対して出資を募る、金融型のクラウドファンディングです。
融資型では、一定の利率によってリターンが決まりますが、ファンド型では事業の成果によってリターンが変動します。
事業が目標に達していない場合には、元本割れするリスクもあります。
金銭的リターン以外にも、その事業によって提供されているモノやサービスを受け取ることが多いです。
2、企業側の株式投資型クラウドファンディングの3つのメリットとは?
企業が資金調達の手段として、株式投資型クラウドファンディングを利用する主なメリットは以下の3つです。
- 短期間で資金調達できる
- ファン株主を増やせる
- 経営権を取られる心配がない
それぞれについて解説していきます。
(1)短期間で資金調達できる
株式投資型クラウドファンディングでの資金調達期間は、通常1~3ヶ月です。
掲載している事業内容が魅力的であれば、さらに早く資金を集められます。
なかには掲載から数分で、目標金額を達成した企業もあります。
資金調達規模は数千万なので、スピード感をもって、スタートアップさせたい時に適した資金調達手段です。
(2)ファン株主を増やせる
株式投資型クラウドファンディングでは、サービスのコアユーザーとなるファン株主を獲得できます。
ファン株主はSNSを通じた事業内容の拡散など、積極的に支援してくれる可能性が高いです。
こうした拡散がPRとなり、
- 新たな出資者の獲得
- 事業内容の認知拡大
といったマーケティング効果を期待できます。
(3)経営権を取られる心配がない
株式投資型クラウドファンディングでは、多くの人から少額の資金を調達するため、経営権を取られる心配がありません。
株式投資型クラウドファンディングで、個人投資家が1企業に投資できる資金は、50万円までです。
経営に直接的な影響を与えられる、「持ち株比率33.4%」を超えることはないため、経営権を株主に取られる心配はないといえるでしょう。
3、企業側の株式投資型クラウドファンディングの3つの注意点
企業が資金調達の手段として、株式投資型クラウドファンディングを利用する際に、注意すべき点は以下3つです。
- 調達できる上限額は1億円
- 手数料がかかる
- 応援者が多くなるほど事務負担も増える
それぞれについて解説していきます。
(1)調達できる上限額は1億円
株式投資型クラウドファンディングでは、1年間に調達できる資金額は、1億円未満と法令で決められています。
この上限額は、クラウドファンディング以外の少人数私募で集めた資達額と合算されます。
例えば、1年以内にベンチャーキャピタル等で7000万円の資金を調達した場合、クラウドファンディングで調達できる資金は、3000万円未満です。
ベンチャーキャピタルについては、「ベンチャーキャピタル(VC)とは?VCから資金調達をする際の3つの注意点」で解説しているので、あわせてご参考ください。
(2)手数料がかかる
株式投資型クラウドファンディングを行うには、仲介業者に手数料を払う必要があります。
手数料は、発行する株式数などにより異なります。
一般的な相場は、株式発行額(資金調達額)の20%(税込22%)に当たる金額です。
(3)応援者が多くなるほど事務負担も増える
株式投資型クラウドファンディングを行うと、短期間に数百人規模で、株主数が増えます。
応援者である株主が増えるほど、配当や書類送付といった事務仕事の負担も大きくなるため、注意が必要です。
4、投資家側の株式投資型クラウドファンディングのメリット
ここまで、「企業側」の株式投資型クラウドファンディングを利用する、メリット・注意点について解説しました。
本章では、「投資家側から見た」株式投資型クラウドファンディングのメリット、について解説します。
投資家が、株式投資型クラウドファンディングを利用する、主なメリットは以下の5つです。
- 少額から投資できる
- 大きなリターンを期待できる
- 株主優待を受けられる場合がある
- エンジェル税制対象企業へ投資すれば節税できる
- 初期段階から企業を応援・参加できる
それぞれについて解説していきます。
(1)少額でベンチャー企業への投資ができる
株式投資型クラウドファンディングでは、10万円程度から投資できます。
インターネット上から手続きができ、一般的なベンチャー企業投資よりも取り組みやすいといです。
(2)大きなリターンを期待できる
株式投資型クラウドファンディングでは、企業がイグジット(IPOやM&Aなど)した際に、大きな利益を得ることができます。
得られるリターンは、投資額の数倍〜数百倍となるケースが多いようです。
(3)株主優待を受けられる場合がある
株式投資型クラウドファンディングのなかには、「株主優待」を設けている企業もあります。
株主優待の内容は、企業によって異なりますが、一般的には、商品やサービスの割引などです。
自分の興味・関心に合ったサービスを提供している企業を探してみても良いかもしれません。
(4)エンジェル税制を利用し、節税できる
株式投資型クラウドファンディングでは、エンジェル税制対象企業に投資することで、節税効果を得られます。
エンジェル税制とは、ベンチャー企業への投資を促進するために設けられた、税制優遇措置です。
特定の企業へ投資することで、所得税の控除などが受けられます。
(5)早い段階で企業の成長に投資できる
株式投資型クラウドファンディングで資金調達を行う企業の大半は、シードやアーリーといった成長の初期段階にあります。
定期的に投資先企業の情報を受け取り、事業の進捗状況を把握できます。
上場や合併をするまでの長い期間、企業の成長を見守り、支えることができ、その社会的な意義は大きいでしょう。
5、投資家側の株式投資型クラウドファンディングの注意点
投資家が株式投資型クラウドファンディングを利用する上での注意点は、以下の5つです。
- 倒産のリスクがある
- 大きなリターンを得るには長期間かかる
- 投資できる上限額は50万
- 換金性が乏しい
それぞれについて解説していきます。
(1)倒産のリスクがある
クラウドファンディングではありますが、実際に「株式」を購入します。
株式は債券と異なり、返済の義務はありません。
万が一、投資先の企業が倒産すれば、今まで投資した資金は返らずゼロになります。
ただし、投資額以上のお金を取られることはありません。
(2)大きなリターンを得るには長い時間がかかる
株式投資型クラウドファンディングで大きなリターンを得るには、企業がイグジット(IPOやM&Aなど)する必要があります。
成長段階のベンチャー企業がイグジットに至るまでには、約5~10年、またはそれ以上の期間が必要です。
また、全ての企業がエグジットするとは限りません。
日本で株式投資型クラウドファンディングが創設されたのは、2015年です。
2021年時点で、実際にエグジットし、大きなリターンを返した企業は、まだ数えるほどしかありません。
株式投資型クラウドファンディングで大きなリターンを得るためには、時間がかかるのと、大きなリターンを得られない可能性もあるという点に注意しましょう。
(3)投資できる上限額は50万
株式投資型クラウドファンディングで、個人が1企業に投資できる金額は、50万円までです。
この上限は、投資した時点から1年間続きます。
投資してから1年が経過すれば、また新たに50万円まで投資が可能となります。
(4)換金性が乏しい
株式投資型クラウドファンディングの対象企業は、初期段階のベンチャー企業であるため、株式価値は高くありません。
株式を現金化したい場合、投資先企業に承認を得る必要があります。
買い取り先も、個人で見つけるしかありません。
以上のことから、株式投資型クラウドファンディングで得られる株式は、換金性が低く、保有が前提です。
6、株式投資型クラウドファンディングの手続き方法は?
株式投資型クラウドファンディングの手続きは、仲介会社を通して行います。
本章では、株式投資型クラウドファンディングを利用するために必要な
- 企業が資金調達をする場合の手続き
- 個人が投資をする場合の手続き
- おすすめ株式投資型クラウドファンディング仲介会社
について、紹介していきます。
(1)企業が資金調達をする場合の手続き
企業が、株式投資型クラウドファンディングで資金調達する流れは、基本的に以下のとおりです。
- ①申し込み
- ②審査
- ③募集準備
- ④募集開始
- ⑤調達完了
まず、株式投資型CFを仲介している会社のWebサイトなどから、申し込みをします。
必要書類などを送付後、事業内容や財務面などが審査されます。審査期間は3週間ほどです。
審査通過後、目標資金調達額や募集条件を設定します。
準備が整ったら、インターネット上で募集を開始という流れです。
(2)個人が投資をする場合の手続き
個人が株式投資型クラウドファンディングで、投資をするには、基本的に以下の流れになります。
- ①会員登録
- ②投資先を選ぶ
- ③投資の申し込み
- ④入金
- ⑤案件成否の確認
まずは仲介会社のサイトから、アカウント情報を入力します。
後日、必要書面を送り、審査に通れば正式に会員として登録されます。
会員登録後は、募集案件から投資先を選び、申込みましょう。
申込みが承認されれば、入金します。
入金時点では、まだ実際に投資ができるかは決まりません。
募集締め切り後、クラウドファンディングを設定している企業が設定した目標額を超えていれば、案件成立となり投資が完了します。
目標額を超えなければ案件は不成立となり、投資はキャンセルされ、返金されます。返金についての手数料は、基本的にかかりません。
入金時にかかる振込手数料は、投資家側が支払う必要があります。
(3)おすすめ株式投資型クラウドファンディング仲介会社
本項では、株式投資型クラウンドファンディングを運営している以下4社について、特徴や実績を紹介してきます。
- FUNDINNO(ファンディーノ)
- CAMPFIRE Angels
- Unicorn(ユニコーン)
- イークラウド
①FUNDINNO(ファンディーノ)
「FUNDINNO(ファンディーノ)」は、2017年から運営を開始した、国内最大手の株式投資型クラウドファンディング仲介会社です。
2021年5月時点で、
- 成約案件:166件
- 成約額:約54億円
- ユーザー数:約6万
- 最速目標達成時間:1分54秒
- 国内で唯一のイグジット成功
という圧倒的な実績を持ちます。
また、資金調達後の
- IR 情報の発信
- 株主の管理
などのサポート業務も行っています。
②Unicorn(ユニコーン)
「Unicorn(ユニコーン)」は、2019年に登場した株式投資型クラウドファンディング仲介会社です。
AIを利用した最先端のテクノロジーの開発を行う、スタートアップ企業が多く掲載されています。
2021年5月時点で、成約させた募集は17件です。
募集案件数も増えており、今後の成長が期待できる株式投資型クラウドファンディングサイトです。
③CAMPFIRE Angels
「CAMPFIRE Angels」は、2020年に運営を開始した株式投資型クラウドファンディング仲介会社です。
クラウドファンディングでの知名度が高い、CAMPFIREグループが運営しています。
2021年5月時点で、成約させた募集は5件です。
資金調達面では、
- 事業計画書の見直し
- 適正なバリュエーションの算定
などについて専門家がサポートしてくれるため、安心して資金調達を進めることができます。
④イークラウド
出典:イークラウド
「イークラウド」は、2020年から運営を開始した、株式投資型クラウドファンディング仲介会社です。
イークラウドでは、投資家登録がスマートフォン1つで完了します。即日投資も可能なようです。
多くの金融サービスは、登録手続きにに時間を取られるので、オンラインで完結するは非常に便利ですね。
また、業界最大手の大和証券グループと連携しており、信頼性も高いといえるでしょう。
7、株式投資型クラウドファンディングをはじめ資金調達で不安があったら税理士に相談しよう!
株式投資型クラウドファンディングでの資金調達は初めてで、どういったことから始めれば良いか分からない……という方もいらっしゃるでしょう。
資金調達には多額の資産を、効率良く管理する必要があるので、悩んだら税理士に相談するのがおすすめです。
本章では、株式投資型クラウドファンディングをはじめ、資金調達に関する悩みや不安がある場合に、税理士へ相談するメリットについて解説します。
(1)株式投資型クラウドファンディングの利用時の審査をサポート
株式投資型クラウドファンディングで資金調達を利用するには、仲介会社の審査を通る必要があります。
税理士に相談することで、
- 必要書類(事業計画書など)の作成
- 面談対策
などをサポートしてもらい、審査が通る可能性を高められます。
事業に必要な資金額の算定もできるので、効率的なスタートアップが可能です。
(2)調達資金の的確なアドバイスがもらえる
税理士に相談することで、株式投資型クラウドファンディング以外の、自社に適した資金調達方法についても知ることができます。
資金調達に関する法律や法令は複雑で、手続きを誤ってしまうと、無駄なコストがかかるかもしれません。
自社にとって一番無駄なく、最適な資金管理を検討されているなら、経理や税金のプロである税理士に相談することをおすすめします。
まとめ
今回は「株式投資型クラウドファンディング」について解説しました。
株式投資型クラウドファンディングは、ベンチャー企業を支える資金調達の仕組みです。
約3ヶ月で、数千万単位の資金調達が可能なので、スタートアップを考えている企業に適した資金調達であるといえます。
株式投資型クラウドファンディングの審査を通るための事前準備が必要なので、利用を検討している際は、気軽に税理士に相談してみましょう。
また、クラウドファンディング以外にも、資金調達にはさまざまな方法があります。
以下の記事では、特に「融資」について詳しく解説しているので、ぜひあわせてご参考ください。
税理士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
初回のご相談は無料ですので
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